「たかが紙切れ」の認識が刑事罰のリスクを招く 産業廃棄物処理委託契約書とマニフェストの注意点
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前回「紙ごみが一般廃棄物に該当しないケースも? 廃棄物処理法における産廃の保管基準と管理のポイント」では、産業廃棄物の発生から埋め立てなどの最終処分に至る段階として「1. 産業廃棄物の発生」「2. 産業廃棄物の保管」「3. 委託先処理業者の選定」「4. 委託先処理業者との書面契約」「5. 産業廃棄物の回収依頼」「6. 産業廃棄物管理票(マニフェスト)と一緒に産業廃棄物を引き渡し」「7. 順次返送されてくる産業廃棄物管理票の記載チェックと保存」「8. 委託契約終了後5年経つまでの間、委託契約書を保存し続ける」とまとめ、「3. 委託先処理業者の選定」まで解説しました。今回は、「4. 委託先処理業者との書面契約」から順に詳細を解説していきます。
委託先処理業者との書面契約
委託先処理業者との書面契約も非常に重要な実務です。前回解説した「3.委託先処理業者の選定」で触れたような不法投棄に巻き込まれた場合、排出事業者の責任が問われるかどうかの分かれ目は「委託契約書」にあるといっても過言ではありません。具体的には、「廃棄物処理法で定められた法定記載事項が全て委託契約書に明記されているか」ということです。
廃棄物処理法では、産業廃棄物処理委託契約書を書面で作成し、下記の法定記載事項を契約書上で明示することを、排出事業者に義務付けています。この義務に違反した場合、「3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金、または併科」という刑事罰の対象となりますので、「たかが契約書という紙切れで」という甘い認識は禁物です。
図表:産業廃棄物処理委託契約書の法定記載事項
全ての委託契約書に共通する法定記載事項 | ||
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収集運搬の委託契約書 | 中間処理の委託契約書 | 最終処分の委託契約書 |
運搬の最終目的地 (以下、積み替え保管をする場合のみの記載事項) 積み替え保管場所の所在地 積み替え保管場所で保管できる産業廃棄物の種類 積み替え保管のための保管上限 安定型産業廃棄物を委託する場合は、他の廃棄物と混合することの許否 |
中間処理場の所在地 中間処理の方法 中間処理施設の処理能力 中間処理残さを最終処分する場所の所在地 中間処理残さを最終処分する方法 中間処理残さの最終処分先の処理能力 委託する産業廃棄物が許可を受けて輸入された廃棄物である場合はその旨 |
最終処分場の所在地 最終処分の方法 最終処分施設の処理能力 委託する産業廃棄物が許可を受けて輸入された廃棄物である場合はその旨 |
上記の図表の上段は、「収集運搬委託」と「処分委託」の両方で記載が必要な事項、下段は、個別の委託契約で必要とされる記載事項です。
「1. 委託する産業廃棄物の種類と数量」と「3. 委託者が受託者に支払う料金」の2つが特に抜けやすい記載事項ですが、法定記載事項であるため、必ず契約書中に記載しておく必要があります。「定期的に料金を変動させたい」という場合は、委託料金襴を「空欄」にするのではなく、「別途覚書で決定する」などとし、必ず覚書によって、委託料金に関して当事者双方で合意をしたという証拠を残すようにしてください。
なお、「書面で作成」と書きましたが、「e-文書法」に基づき、契約書の電子データでの保存や電子契約も認められています。
こうして作成した委託契約書は、「契約終了後から5年間」保存しておかねばなりません。「最後の取引日から5年間」ではなく、「契約終了後から5年間」であることにご注意ください。
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