リクルートが、新オフィスへの一部移転プロジェクトを始動したのは2019年末のことだ。移転場所として選んだのは、九段下にある1960年竣工の古いビル。5棟で構成されたビルをどのようなコンセプトでリノベーションしたのか、同社のこだわりや新技術を聞いた。
取材・文◎武田 洋子
ケーブルも電源も不要高い可動性を重視する
西田 華乃さん
株式会社リクルートが選んだビルは、東京メトロ九段下駅から徒歩1分。古風な外観が、街によく溶け込んでいる。約1,500人の従業員のほか、他拠点で働く従業員のサテライトオフィスとしても活用されているこのビルのリノベーションに当たり同社が柱としたのは、「NEWスタンダード」の確立だった。オフィスのファシリティには、形骸化した「常識」が少なくない。目指すのは、従来の常識を疑い、ゼロベースから新たなスタンダードを構築すること。この柱の下、実現すべき4つのテーマとして「チーム・アクティビティ・ベースド・ワーキング(以下TABW)」「ウェルビーイング」「非接触」「地域社会・地球環境との共生」を掲げた。
ABWはよく聞くが、TABWは耳慣れない言葉だ。総務・働き方変革ワークプレイス統括部の西田華乃さんは、こう説明する。
「オフィスを『人が集まる場所』と定義したとき、個人の最適な仕事に合わせて場所を選べるABWと同様に、TABWでは2〜200人規模の集団が、目的に応じて柔軟に場所を選べる環境を必要とします。このオフィスにも、小人数の手軽なブレスト、ランチのようなオフの交流、大きなイベントなど、多様なシーンを想定した空間を用意しました」
かつて大学の施設だったこともある古いビルは、東棟・西棟・南棟・北棟・中央棟の5つからなる変則的な構造だ。場所が分かれているとオフィスとしては不便に思えるが、同社ではそれを回遊の好機と捉えた。それぞれの棟に機能を分散させ、あえて人々が移動せざるを得ない状況にしたのだ。移動は人々の邂逅や雑談、気分転換のきっかけになる。
北・西・南棟に点在したワークエリアで特徴的なのは、空間の仕切りだ。集中エリア以外は、基本的にオープンなスペースをカーテンや障子のようなパーティションで緩やかに仕切るようになっている。レイアウトの柔軟性が高いのだ。この「可動性」は、新オフィスにおいて重視した要素だった。
「机の天板を軽い素材にして動かしやすくするなど、什器も工夫しています。最も影響が大きかったのは、電源やケーブルからの解放でした」
固定電話はなく、デジタル機器は無線LANでつながっている。壁に最低限の電源タップはあるが、基本的には各スペースにしつらえてあるモバイルバッテリーを使う。電源の位置という制限をなくすことで、人と什器と空間の可動性は一気に高まった。ただ、どれほど考え抜かれていても、ファシリティだけで偶発的なコミュニケーションの不足を補うことはできない、と西田さんは思っている。今後はイベントなども仕掛けていく予定だ。
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