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ポストコロナの働き方を見据え、オフィスのレイアウト変更を考えている企業は多いだろう。文房具やオフィス家具の製造・販売をはじめ、空間デザイン・コンサルテーションなども行うコクヨ株式会社は、自社オフィスを使った進化型オフィスの実証実験を行っている。その知見から得たこれからのオフィスのヒントについて、ファニチャー事業本部の杉山由希子さんにうかがった。
取材・文◎武田 洋子
リアルなオフィスを残す意味
コクヨ株式会社を訪れた日はちょうど、ファニチャー新製品およびオフィス空間や働き方を提案するイベントの最中だった。見学のビジネスパーソンに交じって、子供を連れた家族もいる。同社のオフィスの1階は、広く一般に開放されているのだ。他社や地域と交流できるオフィスを模索する同社の働き方は、常に先進的だった。杉山由希子さんによれば、席が固定されないフリーアドレスが導入されたのは30年も前になる。テレワークは部分的に10年前から、ABWは5年前から、すでに実践されていた。しかし、積極的に活用できていたのは一部の社員に限られていたそうだ。
「子育て中や介護中の社員、それから営業部門が中心でした。利用するには申請が必要で、当日は『すみません、今日は在宅です』と、肩身が狭い感じ。30年かけてもようやくそこまでだったのに、コロナ禍で一気に変化しました」
緊急事態宣言中の出社率は20%以下にとどまった。80%以上がリモートワークで仕事をしていたわけで、この比率はコロナ禍以前とちょうど逆転している。社内のリモートワーク人口増加に従い、申請は不要になった。
「離れているとメンバーが何をしているのかわからない」という課題を解決するべく、スマホで位置情報を共有して誰がどこでなんの仕事をしているのかリアルタイムで確認できるなど、新たなIT技術も次々に導入されている。杉山さん自身、育児と仕事を両立しやすくなったほか、ふと気付けばこの2年間、資料のプリントアウトもほとんどしていないという。資料は全てクラウドで共有し、モニター上でストレスなく閲覧できるからだ。会社は、交通費を65%削減したと発表した。
しかし、こうしたリモートワークのメリットを体感できるようになった一方で、ほかの多くの企業と同様に、オンラインならではの問題も顕在化していった。
「特に教育面と人間関係です。新入社員とは週に2回1on1ミーティングを設けているのですが、やはり隣に座っていないともどかしい。画面上だと気付かなかった体調不良に、リアルで会ったらすぐに気付けたこともありました」
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