広がる熱中症対策のユニフォームや作業着の導入 ヤマト運輸は「ファン付きベスト」拡大を発表

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近年、記録的な猛暑となる年が増加傾向にある中、企業側が従業員の熱中症対策として、従業員のユニフォームや制服に工夫をこらすことで対応するケースが増えている。
ヤマト運輸(東京都)とイオンネクストデリバリー(千葉市美浜区)は5月27日、それぞれ「ファン付きベスト」の拡大、「ファン付き作業着」の導入を発表した。
ヤマト運輸、導入ファン付きベストは7万5000着 運転の妨げにならない工夫も
ヤマト運輸は、台車や自転車で集配業務を行うセールスドライバーを対象に、2021年から熱中症対策の効果検証のために約6500着のファン付きベストを貸与していた。2025年夏は貸与の対象をトラックで集配業務を行うセールスドライバーや作業職の社員に拡大する。
導入するファン付きベストは7万5000着で、北海道、秋田県、岩手県、宮城県の一部を除く地域で集配業務を行うセールスドライバーと作業職の社員が対象となる。
新たに導入するファン付きベストは、運転の妨げとならないよう、ファンの取り付け部分を背面から側面に7センチずらした仕様に改良した。

WBGT測定器を全国の事業所に設置、ウエアラブルデバイスの試験導入も
ヤマト運輸では、これまで環境省が発表する暑さ指数のWBGT値を活用し、各事業所でスポットクーラーや冷風機などの設置や、従業員に対して給水頻度の注意喚起などを行ってきたが、一部の事業所での導入だったWBGT測定器を全国の事業所に設置することを決めた。
導入台数は約3000台で、設置場所ごとの作業環境を正確に把握し、いち早く状況に応じた対策を取れる環境を構築する。
このほか、熱中症リスクを感知する「ウエアラブルデバイス」の実証を一部エリアで開始することも発表した。ウエアラブルデバイスは、手首に装着することで体の深部体温の変化が測定され、熱中症のリスクを音・光・バイブレーションで認識できる。
無自覚に陥りやすい初期症状を感知し、水分補給や休憩を促すことで、症状の放置や対応の遅れによる熱中症の重症化を防ぐ狙いがある。導入台数は2500台で、東京都の一部、長崎県のセールスドライバーと作業職の社員が対象。
今回の実証では、熱中症対策としての有効性を検証するとともに、感知した時間帯や回数、エリアなどのデータを集計することで、今後の熱中症対策に役立てたい考えだ。
イオンネクストデリバリーも「ファン付き作業着」導入

イオンのネット専用スーパーの配送を担うイオンネクストデリバリーは、5月28日から9か所の拠点で、「ファン付き作業着の導入」、「水分・塩分補給を支える環境整備」「WBGT測定器の設置」といった熱中症対策を実施する。
また、正しい熱中症対策知識の普及などのために、全拠点長が「熱中症対策アンバサダー」の資格を取得したほか、猛暑日に勤務するデリバリークルーに対し、「猛暑日手当」を支給する。
イオンネクストは「デリバリークルーの安全と健康を最優先に考え、配送現場における暑さ対策を一層強化し、誰もが安心して働ける環境づくりを推進していく」とコメントしている。
6月からは熱中症対策を義務付け 九州ではファン付き作業着の体感展示会も
熱中症については、2025年6月1日に施行される労働安全衛生規則の改正により、一定の作業環境下で事業者に対して熱中症対策が義務付けられることになっている。
こうした流れや各企業の動きを受け、日本能率協会(東京都港区)は、6月18、19日にマリンメッセ福岡B館(福岡市博多区)で「第6回九州猛暑対策展」を開催する。

展示会は猛暑対策関連ビジネスの活性化を目的とし、「ウエアラブルデバイス」や「ファン付ジャケット」を体感できる専門展示会となっている。
ヤマト運輸の発表の詳細は同社の公式プレスリリースで確認できる。
イオンネクストの発表の詳細は同社のプレスリリースで確認できる。
日本能率協会の発表の詳細は同協会のプレスリリースで確認できる。
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