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- 調査結果 概要
総務の約6割が、福利厚生と従業員ニーズのギャップを認識
総務が推奨する福利厚生と従業員ニーズにギャップを感じるかを尋ねたところ、「とても感じる」と「やや感じる」が合わせて61.6%と、6割以上がギャップを感じており、福利厚生が期待通りに機能していない実態が明らかになった(n=143)。

<ギャップを感じる内容/一部抜粋>
- 物価高に伴い、より生活に直結する福利厚生が求められているが提供できていない。
- 社員のニーズはどうしてもお金がかかるもの中心になる。
- 性別や年代によって需要が異なる。
- 導入した内容が20年前のものであり、現場のニーズとマッチしていない。
<ギャップが生じる要因/一部抜粋>
- ずいぶん前に制定したものを見直すことなく続けているから。
- 従業員は日々の生活レベル向上などに重きを置いてみているのに対し、会社はあくまで離職防止など実利を主たる理由としているため。
- 福利厚生の充実は従業員が主張しにくいから。
- 社員のニーズが多様化しているから。
- 従業員に対してヒアリングなどを実施していないため。
実施率は通勤手当が突出、従来型の福利厚生が中心
実施している福利厚生制度を尋ねたところ、「通勤手当」が93.0%で最も多く、「慶弔金」が76.9%、「退職金」が73.4%と続いた。法定や慣習に基づく制度が上位を占める一方で、選択型や新しい施策は限定的であり、福利厚生の中身には一定の固定化が見られる(n=143)。

<その他で実施しているユニークな福利厚生制度/一部抜粋>
- 健康ポイント制度。年間で「BMI改善」「肝機能向上」「非喫煙」など目標を決めて達成したらポイント付与(年ごとにポイントを現金に換算して支給)。
- 懇親会等とは別に、個人年12,000円の、社員同士のコミュニケーションを目的とした飲食代精算制度。
総務が利用を推奨する福利厚生と実際の利用率にギャップ
総務が使用を推奨したい福利厚生と、実際の利用率を比較すると、明確な乖離が見られた。「健康診断(法定以上)・人間ドック」は推奨度が36.4%と最も高く、利用率は47.6%と一定の浸透が見られますが、「資格・学び支援」は推奨度28.7%に対し、利用率は6.3%にとどまっている。同様に「ウェルネス休暇」も19.6%が推奨する一方で、利用率は9.1%と半数以下にとどまり、総務が重要と考える施策の活用が進まない現状が浮き彫りとなった(n=143)。

福利厚生導入の目的は「働きやすさ」と「定着・採用」
福利厚生を導入する目的を尋ねたところ、「働きやすさの向上」が69.9%で最多となり、「離職率の低下」が65.7%、「エンゲージメントの向上」が59.4%と続いた。福利厚生はコスト施策ではなく、人材定着や組織活性を支える基盤として位置づけられていることがうかがえる(n=143)。
- 働きやすさの向上:69.9%
- 離職率の低下:65.7%
- エンゲージメントの向上:59.4%
- 採用力の向上:55.2%
- 企業イメージの向上:45.5%
- 働きがいの向上:39.9%
- 生産性の向上:35.0%
- キャリア・スキルの向上:21.7%
- コスト削減(節税):7.7%
福利厚生の見直し頻度は低下、定期的な更新は後退傾向
福利厚生制度の見直し頻度を尋ねたところ、「見直しはしていない」が32.2%で、前回調査の29.0%から増加しており、見直しに着手できていない企業がさらに広がっている。一方、「毎年見直している」は17.5%にとどまり、前回の23.8%から6.3ポイント減少した。「2~3年に一度」も18.9%と前回の20.3%を下回り、定期的に制度を見直す企業が減少傾向にあることがうかがえる(n=143)。

見直しの契機は「社会情勢」と「働き方」の変化
福利厚生を見直すきっかけを尋ねたところ、「社会情勢の変化」が58.7%で最多となった。「働き方の変化」と「従業員からの要望」がともに46.9%と続き、定期運用というよりも、外部環境や要請への対応として見直しが行われている実態が見られる(n=143)。

福利厚生に対する従業員ニーズ、3割超が「把握できていない」
福利厚生制度の満足度やニーズの把握方法を尋ねたところ、「従業員アンケート」が39.2%、「利用率の分析」が35.7%となった。一方で、「把握できていない」も32.9%存在し、制度改善につながる情報収集が十分に行われていない企業も少なくない(n=143)。

利用促進は情報提供が中心、能動的な働きかけは限定的
福利厚生制度の利用促進のために実施している取り組みを尋ねたところ、「イントラネットや社内報での周知」が46.9%と最多だった。「チャットツールでの周知」が28.0%、「全社会議での周知」が25.9%と続く一方で、「実施していることはない」も17.5%存在し、周知・活用に十分手が回っていない企業も見られる(n=143)。

課題はコストと同時に「使われない制度」
福利厚生制度の導入・運用における課題を従業員規模別に見ると、3,000人以上の企業で「従業員ニーズとの不一致」をはじめとする多くの課題を変えていることがわかった。また、「自社の条件に適した福祉構成サービスがない」は49人未満の企業の回答が最も多い結果となった(n=143)。

総評
本調査から、福利厚生制度は多くの企業で一定水準まで整備されている一方、定期的な見直しやニーズ把握が十分に行われていない実態が明らかとなった。総務担当者の約6割が従業員ニーズとのギャップを感じているにもかかわらず、見直しを行っていない企業が3割を超えている点は、制度運用が停滞しやすい構造を示している。
背景には、福利厚生が「一度導入すれば安定的に機能する制度」と捉えられやすいことがある。しかし実際には、働き方の多様化やライフステージの変化により、従業員ニーズは継続的に変化している。制度が更新されないままでは、利用率の低下やニーズ不一致が生じ、結果としてコスト負担だけが残るリスクも高まる。
また、ニーズ把握においても、アンケートや利用率分析を行っている企業がある一方で、3割超が「把握できていない」と回答しており、制度改善のための基礎情報が不足している企業も少なくない。福利厚生は導入そのものよりも、「どのように使われ、どの層に届いているのか」を継続的に検証する仕組みが不可欠だ。
今後、総務には福利厚生を単なる管理対象として扱うのではなく、経営の意図と従業員の実感をつなぐ設計者としての役割が求められる。制度を並べるのではなく、どのように利用されているかを観察し、必要に応じて見直す。その循環をつくることが、福利厚生を「生きた施策」として機能させる鍵になるといえるだろう。
【調査概要】
調査機関:自社調査
調査対象:『月刊総務』読者、「月刊総務オンライン」メルマガ登録者ほか
調査方法: Webアンケート
調査期間:2025年12月4日〜2025年12月12日
■調査結果の引用時のお願い
※本調査内容を転載・ご利用いただく場合は、出典元の表記をお願いします。
例:「『月刊総務』の調査によると」「『月刊総務』調べ」など
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