『月刊総務』調査

9割の総務が男性育休を「推進したい」一方で、自社が「男性育休がとても取りやすい」は2割以下

月刊総務 編集部
最終更新日:
2023年04月21日
avbGFD4eccK3rnhS7MbVuMyvxfFqt53DRTe18ZVV

『月刊総務』は全国の総務担当者を対象に「男性育休についての調査」を実施し、107名から回答を得た。

  1. 調査結果 概要

育休を取得した男性従業員がいる企業は約6割。取得タイミングは「出生後2週間以内」が最多

育休を取得した男性従業員がいるか尋ねたところ、「いる」が64.5%、「いない」が35.5%という結果になった(n=107)。

グラフ1

取得したタイミングは、「出生後2週間以内」が53.6%で最多となった(n=69)。

分割して取得した場合は、最初の取得タイミングを回答

グラフ2

<取得した期間>(n=69)
1週間未満:14.5%
1週間~1か月未満:33.3%
1か月~2か月未満:30.4%
2か月~3か月未満:7.2%
3か月~6か月未満:5.8%
6か月~1年未満:8.7%
1年以上:0%

企業側の本音として、9割の総務が男性育休を推進したい

企業側の本音として、男性の育休取得についてどう思うか尋ねたところ、「積極的に推進したい」と回答したのは約4割だった。また、「積極的ではないが推進したい」を含めると、「推進したい」が9割を超えた。(n=107)。

グラフ3

<積極的に推進したい理由>

  • 育休を経験して、考え方の幅が広がり、戻ってからもプラスに働いているため。
  • 当然の権利だから。
  • 育休発生に伴う、業務の効率化ならびに権限移譲が進む。
  • 推進しなければ良い人材が集まらなくなってしまうと思う。

<積極的ではないが推進したい理由>

  • 人員の補填など、整備が必要な項目が多々あるため。積極的に取得できる環境を整えたい。
  • 法改正もあり、対応しないとコンプライアンス違反になるため。
  • 直近で取得希望者があり、その対応をすることになったので、支援体制を確立したい。
  • 選択肢としてあるということを理解をしてもらう程度で問題なく、積極的になる必要性はないと考えている。

<推進したくない理由>

  • 忙しい状況が続いているので、男性が育休を取ると周りの人間のモチベーションが下がると思う。
  • マイナスにはならないが、長い目で見て同期と比較して昇給昇格査定・成績にどうしても反映されてしまう。
  • 父親が育休を取る(“休暇”と勘違いされる)より、定時で退社して帰宅後育児を分担してほしいという女性社員の意見が多い。男性も定時または時短が取れるようにしたほうがいいのでは。

約6割が、男性育休が少子化対策につながると回答

男性が育休を取得しやすくなることが、少子化対策につながると思うか尋ねたところ、「とても思う」と「やや思う」が合わせて62.6%で、約6割が男性育休が少子化対策につながると考えていることがわかった(n=107)。

グラフ4

約6割の総務しか育児・介護休業法の変更ポイントを理解できていない

2022年4月から段階的に施行されている育児・介護休業法で変更になるポイントを理解しているか尋ねたところ、「理解している」は63.3%だった(n=107)。

理解している:63.3%
知っているが詳細はわからない:35.5%
法改正を知らない:0.9%

男性育休の取得は、8割以上が「取得日の3か月前までに申請してほしい」と回答

男性育休の意向確認について、どのタイミングで申請してほしいか尋ねたところ、「配偶者が妊娠したらなるべく早く」、「育休取得予定日の半年前まで」、「育休取得予定日の3か月前まで」が合わせて81.4%で最多となった(n=107)。

配偶者が妊娠したらなるべく早く:26.2%
育休取得予定日の半年前まで:29.0%
育休取得予定日の3か月前まで:26.2%
育休取得予定日の1か月前まで:8.4%
育休取得予定日の2週間前まで:0.9%
いつでもかまわない:9.3%

グラフ仮

自社を男性育休がとても取りやすい文化だと思っている総務は2割以下

男性従業員も育休が取りやすい文化だと思うか尋ねたところ、「とても思う」は2割以下にとどまった(n=107)

グラフ5

<男性育休の取得を推進するために取り組んでいること>

  • 男性育休中にも、数日、稼働日を設けられる。取得者本人も、業務を引き継ぐ担当も、心理的ハードルが下がったとのこと。
  • 3か月以上の育休取得から復帰した場合の手当支給。
  • 配偶者の妊娠報告があった時点で、案内を出す。他メンバーへの理解を深めておく。
  • 取得者の感想レポートの掲示。
  • 1か月は取得が必須の制度となっている。

約2割が育休中に一部業務を実施している従業員がいると回答

育休中に一部業務を実施している従業員がいるか尋ねたところ、18.7%が「いる」と回答した(n=107)。
※取得した従業員の男女の区別はない回答

グラフ6

<内容や頻度>

  • 顧客対応で対応せざるを得ない部分のみ対応した。
  • 重要な会議や、部下からの相談などはリモートで受けたりしてくれている。
  • 会議のWEB視聴やメールチェックだけしているパターンが多い。

2割以上が育休制度の通知・取得促進を「何もしていない」

育休制度の通知・取得促進をどのような方法で行っているか尋ねたところ、「社内報等での発信」が36.4%で最多となった(n=107)。

社内報等での発信:36.4%
相談窓口の設置:28.0%
経営陣からの発信:26.2%
研修・勉強会の実施:20.6%
定期的なアンケートの実施:2.8%
その他:14.0%
何もしていない:22.4%

育休を取得した従業員の業務の調整は「現場のメンバーによる分担」が最多

育休を取得した従業員の業務はどのように調整してるか尋ねたところ、「現場のメンバーによる分担」が90.7%で最多となった(n=107)。

取得した従業員の男女の区別はない回答

グラフ8

法律で決まっている以外の育休推進制度があるのは約1割

法律で決まっている以外の育休推進制度はあるか尋ねたところ、約9割が「ない」と回答した(n=107)。

取得した従業員の男女の区別はない回答

ある:11.2%
ない:88.8%

<あると回答した方の内容>

  • 12歳まで育休利用可
  • 育児経験者によるメンター制度(男女とも)
  • 復帰後の時短勤務期間の延長
  • 中学生までの子供1名につき年間1日の特別休暇(有給)付与

8割以上が男性育休取得の課題は「現場従業員の負担増」と回答

男性育休取得に関する課題や問題点について尋ねたところ、「現場従業員の負担増」が83.2%で最多となった(n=107)。

グラフ9

<男性育休に関して寄せられている声>

  • 連続しての取得ではなく、必要に応じて単発で取得できるようになってほしいと言われた。
  • 給与に相当する社会保障が今はないため、男性の収入が下がってしまうことから、しっかりした育休は実質的には取得できないと思う。
  • 時間で取得が出来る年次有給休暇を取れるようにしてほしいという声は出ています。
  • 残されたメンバーの仕事のしわ寄せがきつい。
  • 国の方針(育休取得率の開示)が、中途半端(1日でも、2か月でも取得とカウントされるので)意味がないと感じている。

育休後スムーズに復職するための支援策で4割以上が「在宅勤務の導入」

育休取得後の従業員がスムーズに復職するための支援策について尋ねたところ、「業務の引継ぎやサポートの徹底」が45.8%で最も多く、「在宅勤務の導入」が43.9%、「仕事内容の見直し」が39.3%と続いた(n=107)。

グラフ10

総評

今回の調査では、企業や総務として男性育休を推進したいという思いはあれど、実態として制度の整備や取得しやすい文化の醸成に苦心していることがわかった。

現場の従業員の声として、「連続しての取得ではなく、必要に応じて単発で取得したい」「時間で取得が出来る年次有給休暇がほしい」「定時退社や時短勤務ができる方がいい」などの要望があった。働き方も多様化する中で、総務としては育休やそれに関連する領域での選択肢を用意する必要性の高まりが感じられる。

また、課題としては「現場の負担」に関する声が圧倒的に多く、育休を推進していく上で現場の従業員のサポートや代替要因の確保などは工夫する余地がある。これを業務改善や属人化排除の機会と捉えて、組織のレジリエンスを高めていただきたい。


【調査概要】
男性育休についての調査
調査機関:自社調査
調査対象:『月刊総務』読者、「月刊総務オンライン」メルマガ登録者ほか
調査方法: Webアンケート
調査期間:2023年3月23日〜2023年4月1日
有効回答数:107件

■調査結果の引用時のお願い
本調査内容を転載・ご利用いただく場合は、出典元の表記をお願いします。
例:「『月刊総務』の調査によると」「『月刊総務』調べ」など

※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。

著者プロフィール

g-soumu-editors-portrait-webp


月刊総務 編集部

パンデミック、働き方の変化、情報技術への対応など、今、総務部門には戦略的な視点が求められています。「月刊総務オンライン」は、そんな総務部門の方々に向けて、実務情報や組織運営に役立つ情報の提供を中心にさまざまなサービスを展開するプラットフォームです。


『月刊総務』調査」の記事

2024年04月05日
介護・治療と仕事の両立支援は進んでいない実態が明らかに。介護状況の実態把握にも課題あり
2024年03月07日
約9割のミドルマネジメント層がプレイングマネジャー。負担を軽減する工夫を何もしていない企業も
2024年02月07日
健康経営が会社の業績向上につながると8割以上が回答。メリットは「社員の働きやすい環境の整備」
2024年01月10日
テレワーク導入企業の半数以上がオフィス回帰の傾向。BCP策定は自然災害への対策が最優先
2023年12月22日
4割以上の総務が転職意向あり。「総務のスキルを生かしてキャリアアップしたい」など前向きな声も
2023年11月02日
半数の企業が人的資本経営に取り組んでおり、取り組む理由は「優秀な人材を確保するため」が最多
2023年10月04日
会社全体のデジタル化が進んだと8割以上が回答。一方、8割の総務は収集データを活用できていない
2023年09月01日
8割以上の企業が障がい者雇用に課題あり。受け入れ先は、総務・人事・経理などの管理部門が最多
2023年08月04日
リスキリングについて8割が「知っている」と回答。実施企業は増えるも、一人当たり予算は減少傾向
2023年07月03日
週休3日制のメリットはワーク・ライフ・バランスの向上がトップ。導入ネックは部署間の不公平など
2023年05月30日
7割以上がインターンシップの採用直結に賛成。大手に優秀な学生を早期に確保されるとの懸念も
2023年04月21日
9割の総務が男性育休を「推進したい」一方で、自社が「男性育休がとても取りやすい」は2割以下
2023年03月15日
「オフィスの方がテレワークより生産性高く働ける」が上昇。2割の企業が「オフィス予算を増やす」
2023年02月13日
約8割の総務が「経営判断に影響力を発揮」。仕事内容ややりがいの満足度も高い傾向
2023年01月16日
SDGsに取り組んでいる企業のうち半数以上が2030年に達成すべきゴールを「定めていない」
2022年12月15日
9割以上が「企業のSNS活用は必要」とするも、半数以上が自社のSNS活用は「全く進んでいない」
2022年11月10日
Z世代のマネジメントは「難しい」の回答が半数以上。「ハラスメント扱いされる」といった悩みも
2022年10月11日
中途入社者の「オンボーディング」。充実度により定着率22ポイント、パフォーマンス30ポイントの差
2022年09月09日
「総務が成果を出せている」役職あり・なしで21ポイントの差。4割弱の総務が「アジャイル」実践
2022年08月09日
人権リスクの対象は8割が「ハラスメント」。リスクに対し対策している企業は6割にとどまる
2022年07月05日
「リスキリング」に取り組んでいる企業は3割未満。その大多数が学ぶ内容、進捗管理を個人任せに
2022年06月09日
事業承継に関わったことのある総務は2割以下。国の公的支援策を7割近くが「知らない」
2022年05月19日
ウェルビーイングに取り組んでいる企業は約半数。測定のアセスメント実施は約2割にとどまる
2022年04月07日
半数以上が会社のDX推進の取り組みは不足と評価。課題は「従業員のリテラシー不足」が最多。
2022年03月01日
約8割が総務の仕事を社内にアピールできず。総務は「なんでも屋」「雑用係」のイメージ
2022年01月27日
コロナ禍のBCPは見直す必要があるも未対応。テレワークは出社とのハイブリッドで継続が半数
2021年12月23日
女性特有の健康課題を問題視するもセクハラを心配する声。フェムテックの活用に6割強が興味あり
2021年11月29日
オンライン商談用の個別ブース不足が課題に。今後のオフィスの役割は「社内コミュニケーション」
2021年11月01日
約9割の総務が総務の仕事が好きと回答。一方、総務の仕事は適正に評価されていないとの声が多数
2021年10月22日
心身の不調を訴える従業員が昨年より増加傾向。テレワークによるコミュニケーション不足などが要因
2021年09月30日
約7割の企業が副業先での社員の労働時間を「把握していない」。総務は自身の副業に意欲的な傾向に
2021年07月29日
約7割の総務が男性育休を推進したいと回答する一方、3割以上が何の施策もしていない
2021年06月30日
約2割の企業は水害対策未実施。9割以上がテレワーク中の水害を想定した対策ができていない
2021年06月03日
8割以上がワーケーションの導入を未検討。ネガティブイメージは仕事と休暇の線引きが曖昧になる
2021年04月19日
テレワーク手当の実施率は約3割。福利厚生の課題は平等性、制度の利用率、経営層の理解など
2021年04月09日
9割が2020年度に会社のデジタル化が進んだと回答。2021年度に求めるものもデジタルツールの導入が最多
2021年03月04日
社員の健康管理が難しくなったが約7割。オンライン活用による新たな健康経営の取り組みが目立つ
2021年01月26日
緊急事態宣言対象地域の9割以上がテレワークを実施。2割の総務はテレワーク期間中も毎日出社
2020年12月22日
73.4%が対面研修のオンライン化に着手したが、うち59.0%がオンライン研修を対面に戻したいと回答
2020年11月12日
テレワークで会社の方向性を伝えにくくなったが8割。社員のエンゲージメント低下を実感
2020年09月30日
テレワークの方が従業員のメンタルケアが難しいが7割超。テレワーク推進でストレスが増えたと実感
2020年08月26日
これからの働き方はオフィスとテレワークの融合が7割超。オフィスの見直しは占有面積の縮小
2020年07月31日
新型コロナでやっておけばよかったBCP対策は、テレワーク制度の整備、情報の電子化など
2020年06月30日
緊急事態宣言中に完全リモートワークができた総務は1.6%。出社理由は郵便物の対応など

関連記事

  • 「働きがいのある会社」トップ企業のハイブリッドワークの形 戦略総務を実現できるデバイスとは? PR
  • コスト削減だけじゃない! 働き方が変わり、コミュニケーションも生まれる「照明」のすごい効果 PR
  • 災害への備えは平時から。企業の防災担当者を強力にサポートする東京都のサービスとは PR

特別企画、サービス