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『月刊総務』は、全国の総務担当者を対象に「障がい者雇用についての調査」を実施し、82人から回答を得た。
- 調査結果 概要
- 8割以上の企業が、障がい者雇用に課題を感じている
- 障がい者雇用をしている企業は約8割。一方で約半数の企業は障がい者法定雇用率を「満たせていない」
- 最も多い受け入れ先部門は、総務・人事・経理などの「管理部門」。最も雇用が多い障がい者は「中度・軽度の身体障害者」。
- 約7割の企業が、障がい者雇用を積極的に行いたい
- 約8割の企業が、障がい者への仕事の割り振りに難しさを感じているが、7割以上の企業が障がい者の適性・能力に合った仕事を割り振れていると回答
- 約7割の企業が、障がい者従業員に本業に関わる業務を任せている。任せている仕事の内容は「事務」「データ入力」「軽作業」など
- 8割が「障がい者従業員は本業に貢献できている」
- 障がい者従業員受け入れ後は、約7割の企業が「受け入れ部署がフォロー」。7割以上の企業が「フォローは十分にできている」と回答
- 約半数の企業が障がい者雇用に関する助成金を「知っているが申請したことはない」と回答
8割以上の企業が、障がい者雇用に課題を感じている
障がい者雇用に課題を感じているか尋ねたところ、「とても感じている」が61.0%、「やや感じている」が19.5%と、合わせて8割以上の企業が雇用に課題を感じていることがわかった(n=82)。
また、どのような課題を感じているか尋ねたところ、「業務の切り出し」が68.2%、「適性・能力が発揮できる仕事への配置」が63.6%、「従業員の障害への理解」が57.6%と続いた(n=66/課題を感じている企業)。
障がい者雇用をしている企業は約8割。一方で約半数の企業は障がい者法定雇用率を「満たせていない」
現在、所属している会社では障がい者雇用をしているか尋ねたところ、「はい」が79.3%、「いいえ」が20.7%と、約8割の企業が障がい者雇用をしていることがわかった(n=82)。
一方、所属している会社が障がい者法定雇用率を満たしているか尋ねたところ、「はい」が40.2%、「いいえ」が51.2%と、約半数の企業が障がい者法定雇用率を満たせていないことがわかった(n=82)。
<法定雇用率を満たせていない理由>
- 雇用に対して消極的である
- 適した業務が少なく、納付金を支払しているため
- 障がい者に適した業務を用意できないから
- 給与面での区別が難しく業務が簡単になりすぎて他の社員との不満がたまりやすい。
- 受入態勢が整っておらず、積極的な障がい者雇用が難しいため
最も多い受け入れ先部門は、総務・人事・経理などの「管理部門」。最も雇用が多い障がい者は「中度・軽度の身体障害者」。
また、雇用した障がい者の受け入れ部門を尋ねたところ、「管理部門(総務・人事・経理)」が72.3%、「製造部門」が26.2%、「営業部門」が16.9%と続いた(n=65/障がい者雇用をしている企業)。
<その他の受け入れ部門(一部抜粋)>
- 倉庫・運送部門
- 研究開発部門
- 理化学試験部門(試験用器材の洗浄・備品組立等)
- 清掃現場
また、どのような障がい者を雇用しているか尋ねたところ、「身体障害者(中度・軽度)」が63.1%、「精神障害者」が47.7%、「知的障害者(中度・軽度)」が43.1%と続いた(n=65/障がい者雇用をしている企業)。
約7割の企業が、障がい者雇用を積極的に行いたい
障害者雇用を積極的に行っていきたいか尋ねたところ、「とても行いたい」が26.8%、「やや行いたい」が42.7%と、合わせて約7割の企業が積極的に行っていきたいと思っていることがわかった(n=82)。
<障がい者雇用を積極的に行いたい理由(一部抜粋)>
- 時代の流れ、人材の確保
- 法定雇用率を満たすことは重要であるため
- 法定雇用率もさることながら、社員のマインドの改善につながるのではと
- D&Iの一環として重要(男女機会均等ばかりでなく障がい者とともに働く環境づくりも重要)
- 共に働きやすい場を作ることは企業の社会的責任と考えるから
<障がい者雇用を積極的に行いたくない理由(一部抜粋)>
- 費用対効果が悪いから
- 少人数の会社であり、障がい者の雇用までは手が届かない。
- 業務の切り出しと他の従業員への負担が大きいため
- 環境的、業務的に受け入れ態勢が整っていない。障害の内容にもよるが、安全かつ適正にお願いできる業務がほとんどない。
約8割の企業が、障がい者への仕事の割り振りに難しさを感じているが、7割以上の企業が障がい者の適性・能力に合った仕事を割り振れていると回答
障がい者への仕事の割り振りに難しさを感じるか尋ねたところ、「非常に難しさを感じる」が33.8%、「やや難しさを感じる」が44.6%と、合わせて約8割の企業が仕事の割り振りに難しさを感じていることがわかった(n=65/障がい者雇用をしている企業)。
一方で、障がい者の適性・能力に合った仕事を割り振れていると思うか尋ねたところ、「非常にそう思う」が18.5%、「ややそう思う」が56.9%と、合わせて7割以上の企業が適性・能力に合った仕事を割り振れていると思っていることがわかった(n=65/障がい者雇用をしている企業)。
約7割の企業が、障がい者従業員に本業に関わる業務を任せている。任せている仕事の内容は「事務」「データ入力」「軽作業」など
障がい者従業員に、本業に関わる業務を任せているか尋ねたところ、「はい」が69.2%、「いいえ」が30.8%と、約7割の企業が本業に関わる業務を任せていることがわかった(n=65/障がい者雇用をしている企業)。
また、任せている仕事の内容を尋ねたところ、「事務」が63.1%、「データ入力」が41.5%、「軽作業(運搬・梱包など)」が40.0%と続いた(n=65/障がい者雇用をしている企業)。
8割が「障がい者従業員は本業に貢献できている」
障がい者従業員は本業に貢献できていると思うか尋ねたところ、「とても思う」が38.5%、「やや思う」が41.5%と、合わせて8割の企業が本業に貢献できていると思っていることがわかった(n=65/障がい者雇用をしている企業)。
<障がい者従業員により活躍してもらうために必要だと思うこと(一部抜粋)>
- 一人一人の特性把握と、周囲の理解。
- 定着しやすい環境作り
- 個々の障がい特性への理解と、適性のある仕事配置
- 障がい者の方がスキルアップできる研修制度を整えること
- まずは、大方針となる経営判断。あとはオペレーション設計。
障がい者従業員受け入れ後は、約7割の企業が「受け入れ部署がフォロー」。7割以上の企業が「フォローは十分にできている」と回答
障がい者従業員受け入れ後のフォローはどのように行っているか尋ねたところ、「受け入れ部署がフォロー」が69.2%と、約7割の企業は受け入れ部署がフォローしていることがわかった(n=65/障がい者雇用をしている企業)。
また、受け入れ後のフォローを十分にできていると思うか尋ねたところ、「とてもできている」「ややできている」が合わせて75.4%と、7割以上の企業がフォローを十分にできていると思っていることがわかった(n=65/障がい者雇用をしている企業)。
約半数の企業が障がい者雇用に関する助成金を「知っているが申請したことはない」と回答
障がい者雇用に関する助成金があることを知っているか尋ねたところ、「知っているが申請したことはない」が48.8%、「知っているが申請したことはない」が37.8%、「知らない」が13.4%という結果となった(n=65/障がい者雇用をしている企業)。
総評
今回の調査では、障がい者雇用に対する課題が浮き彫りになった一方で、「適性・能力に合った仕事を割り振れている」「本業に貢献できている」などのポジティブな回答も多く集まった。
課題としては業務の切り出しの難しさが挙がったが、これはまず、現場で各種業務が属人化していないかの確認が必要となる。業務の見える化を進め、業務フローやタスクの標準化をしっかり行うことで、障がい者雇用においても任せる業務の割り振りが進みやすくなるだろう。
2021年に障害者差別解消法が改正され、2024年4月より事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化される。ますます障がいへの理解が必須になるので、総務として社内理解も高めていく必要がある。
【調査概要】
障がい者雇用についての調査
調査機関:自社調査
調査対象:『月刊総務』読者、「月刊総務オンライン」メルマガ登録者ほか
調査方法: Webアンケート
調査期間:2023年7月13日〜2023年7月24日
■調査結果の引用時のお願い
※本調査内容を転載・ご利用いただく場合は、出典元の表記をお願いします。
例:「『月刊総務』の調査によると」「『月刊総務』調べ」など
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