『月刊総務』調査

8割以上の企業が障がい者雇用に課題あり。受け入れ先は、総務・人事・経理などの管理部門が最多

月刊総務 編集部
最終更新日:
2023年09月01日
20230901_『月刊総務』調査結果(2)

『月刊総務』は、全国の総務担当者を対象に「障がい者雇用についての調査」を実施し、82人から回答を得た。

  1. 調査結果 概要

8割以上の企業が、障がい者雇用に課題を感じている

障がい者雇用に課題を感じているか尋ねたところ、「とても感じている」が61.0%、「やや感じている」が19.5%と、合わせて8割以上の企業が雇用に課題を感じていることがわかった(n=82)。

グラフ1

また、どのような課題を感じているか尋ねたところ、「業務の切り出し」が68.2%、「適性・能力が発揮できる仕事への配置」が63.6%、「従業員の障害への理解」が57.6%と続いた(n=66/課題を感じている企業)。

グラフ2

障がい者雇用をしている企業は約8割。一方で約半数の企業は障がい者法定雇用率を「満たせていない」

現在、所属している会社では障がい者雇用をしているか尋ねたところ、「はい」が79.3%、「いいえ」が20.7%と、約8割の企業が障がい者雇用をしていることがわかった(n=82)。

グラフ3

一方、所属している会社が障がい者法定雇用率を満たしているか尋ねたところ、「はい」が40.2%、「いいえ」が51.2%と、約半数の企業が障がい者法定雇用率を満たせていないことがわかった(n=82)。

グラフ4

<法定雇用率を満たせていない理由>

  • 雇用に対して消極的である
  • 適した業務が少なく、納付金を支払しているため
  • 障がい者に適した業務を用意できないから
  • 給与面での区別が難しく業務が簡単になりすぎて他の社員との不満がたまりやすい。
  • 受入態勢が整っておらず、積極的な障がい者雇用が難しいため

最も多い受け入れ先部門は、総務・人事・経理などの「管理部門」。最も雇用が多い障がい者は「中度・軽度の身体障害者」。

また、雇用した障がい者の受け入れ部門を尋ねたところ、「管理部門(総務・人事・経理)」が72.3%、「製造部門」が26.2%、「営業部門」が16.9%と続いた(n=65/障がい者雇用をしている企業)。

グラフ5

<その他の受け入れ部門(一部抜粋)>

  • 倉庫・運送部門
  • 研究開発部門
  • 理化学試験部門(試験用器材の洗浄・備品組立等)
  • 清掃現場

また、どのような障がい者を雇用しているか尋ねたところ、「身体障害者(中度・軽度)」が63.1%、「精神障害者」が47.7%、「知的障害者(中度・軽度)」が43.1%と続いた(n=65/障がい者雇用をしている企業)。

グラフ6

約7割の企業が、障がい者雇用を積極的に行いたい

障害者雇用を積極的に行っていきたいか尋ねたところ、「とても行いたい」が26.8%、「やや行いたい」が42.7%と、合わせて約7割の企業が積極的に行っていきたいと思っていることがわかった(n=82)。

グラフ7

<障がい者雇用を積極的に行いたい理由(一部抜粋)>

  • 時代の流れ、人材の確保
  • 法定雇用率を満たすことは重要であるため
  • 法定雇用率もさることながら、社員のマインドの改善につながるのではと
  • D&Iの一環として重要(男女機会均等ばかりでなく障がい者とともに働く環境づくりも重要)
  • 共に働きやすい場を作ることは企業の社会的責任と考えるから

<障がい者雇用を積極的に行いたくない理由(一部抜粋)>

  • 費用対効果が悪いから
  • 少人数の会社であり、障がい者の雇用までは手が届かない。
  • 業務の切り出しと他の従業員への負担が大きいため
  • 環境的、業務的に受け入れ態勢が整っていない。障害の内容にもよるが、安全かつ適正にお願いできる業務がほとんどない。

約8割の企業が、障がい者への仕事の割り振りに難しさを感じているが、7割以上の企業が障がい者の適性・能力に合った仕事を割り振れていると回答

障がい者への仕事の割り振りに難しさを感じるか尋ねたところ、「非常に難しさを感じる」が33.8%、「やや難しさを感じる」が44.6%と、合わせて約8割の企業が仕事の割り振りに難しさを感じていることがわかった(n=65/障がい者雇用をしている企業)。

グラフ8

一方で、障がい者の適性・能力に合った仕事を割り振れていると思うか尋ねたところ、「非常にそう思う」が18.5%、「ややそう思う」が56.9%と、合わせて7割以上の企業が適性・能力に合った仕事を割り振れていると思っていることがわかった(n=65/障がい者雇用をしている企業)。

グラフ9

約7割の企業が、障がい者従業員に本業に関わる業務を任せている。任せている仕事の内容は「事務」「データ入力」「軽作業」など

障がい者従業員に、本業に関わる業務を任せているか尋ねたところ、「はい」が69.2%、「いいえ」が30.8%と、約7割の企業が本業に関わる業務を任せていることがわかった(n=65/障がい者雇用をしている企業)。

グラフ10

また、任せている仕事の内容を尋ねたところ、「事務」が63.1%、「データ入力」が41.5%、「軽作業(運搬・梱包など)」が40.0%と続いた(n=65/障がい者雇用をしている企業)。

グラフ11

8割が「障がい者従業員は本業に貢献できている」

障がい者従業員は本業に貢献できていると思うか尋ねたところ、「とても思う」が38.5%、「やや思う」が41.5%と、合わせて8割の企業が本業に貢献できていると思っていることがわかった(n=65/障がい者雇用をしている企業)。

グラフ12

<障がい者従業員により活躍してもらうために必要だと思うこと(一部抜粋)>

  • 一人一人の特性把握と、周囲の理解。
  • 定着しやすい環境作り
  • 個々の障がい特性への理解と、適性のある仕事配置
  • 障がい者の方がスキルアップできる研修制度を整えること
  • まずは、大方針となる経営判断。あとはオペレーション設計。

障がい者従業員受け入れ後は、約7割の企業が「受け入れ部署がフォロー」。7割以上の企業が「フォローは十分にできている」と回答

障がい者従業員受け入れ後のフォローはどのように行っているか尋ねたところ、「受け入れ部署がフォロー」が69.2%と、約7割の企業は受け入れ部署がフォローしていることがわかった(n=65/障がい者雇用をしている企業)。

グラフ13

また、受け入れ後のフォローを十分にできていると思うか尋ねたところ、「とてもできている」「ややできている」が合わせて75.4%と、7割以上の企業がフォローを十分にできていると思っていることがわかった(n=65/障がい者雇用をしている企業)。

グラフ14

約半数の企業が障がい者雇用に関する助成金を「知っているが申請したことはない」と回答

障がい者雇用に関する助成金があることを知っているか尋ねたところ、「知っているが申請したことはない」が48.8%、「知っているが申請したことはない」が37.8%、「知らない」が13.4%という結果となった(n=65/障がい者雇用をしている企業)。

グラフ15

総評

今回の調査では、障がい者雇用に対する課題が浮き彫りになった一方で、「適性・能力に合った仕事を割り振れている」「本業に貢献できている」などのポジティブな回答も多く集まった。

課題としては業務の切り出しの難しさが挙がったが、これはまず、現場で各種業務が属人化していないかの確認が必要となる。業務の見える化を進め、業務フローやタスクの標準化をしっかり行うことで、障がい者雇用においても任せる業務の割り振りが進みやすくなるだろう。

2021年に障害者差別解消法が改正され、2024年4月より事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化される。ますます障がいへの理解が必須になるので、総務として社内理解も高めていく必要がある。


【調査概要】
障がい者雇用についての調査
調査機関:自社調査
調査対象:『月刊総務』読者、「月刊総務オンライン」メルマガ登録者ほか
調査方法: Webアンケート
調査期間:2023年7月13日〜2023年7月24日

■調査結果の引用時のお願い
本調査内容を転載・ご利用いただく場合は、出典元の表記をお願いします。
例:「『月刊総務』の調査によると」「『月刊総務』調べ」など

※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。

著者プロフィール

g-soumu-editors-portrait-webp


月刊総務 編集部

パンデミック、働き方の変化、情報技術への対応など、今、総務部門には戦略的な視点が求められています。「月刊総務オンライン」は、そんな総務部門の方々に向けて、実務情報や組織運営に役立つ情報の提供を中心にさまざまなサービスを展開するプラットフォームです。


『月刊総務』調査」の記事

2024年04月05日
介護・治療と仕事の両立支援は進んでいない実態が明らかに。介護状況の実態把握にも課題あり
2024年03月07日
約9割のミドルマネジメント層がプレイングマネジャー。負担を軽減する工夫を何もしていない企業も
2024年02月07日
健康経営が会社の業績向上につながると8割以上が回答。メリットは「社員の働きやすい環境の整備」
2024年01月10日
テレワーク導入企業の半数以上がオフィス回帰の傾向。BCP策定は自然災害への対策が最優先
2023年12月22日
4割以上の総務が転職意向あり。「総務のスキルを生かしてキャリアアップしたい」など前向きな声も
2023年11月02日
半数の企業が人的資本経営に取り組んでおり、取り組む理由は「優秀な人材を確保するため」が最多
2023年10月04日
会社全体のデジタル化が進んだと8割以上が回答。一方、8割の総務は収集データを活用できていない
2023年09月01日
8割以上の企業が障がい者雇用に課題あり。受け入れ先は、総務・人事・経理などの管理部門が最多
2023年08月04日
リスキリングについて8割が「知っている」と回答。実施企業は増えるも、一人当たり予算は減少傾向
2023年07月03日
週休3日制のメリットはワーク・ライフ・バランスの向上がトップ。導入ネックは部署間の不公平など
2023年05月30日
7割以上がインターンシップの採用直結に賛成。大手に優秀な学生を早期に確保されるとの懸念も
2023年04月21日
9割の総務が男性育休を「推進したい」一方で、自社が「男性育休がとても取りやすい」は2割以下
2023年03月15日
「オフィスの方がテレワークより生産性高く働ける」が上昇。2割の企業が「オフィス予算を増やす」
2023年02月13日
約8割の総務が「経営判断に影響力を発揮」。仕事内容ややりがいの満足度も高い傾向
2023年01月16日
SDGsに取り組んでいる企業のうち半数以上が2030年に達成すべきゴールを「定めていない」
2022年12月15日
9割以上が「企業のSNS活用は必要」とするも、半数以上が自社のSNS活用は「全く進んでいない」
2022年11月10日
Z世代のマネジメントは「難しい」の回答が半数以上。「ハラスメント扱いされる」といった悩みも
2022年10月11日
中途入社者の「オンボーディング」。充実度により定着率22ポイント、パフォーマンス30ポイントの差
2022年09月09日
「総務が成果を出せている」役職あり・なしで21ポイントの差。4割弱の総務が「アジャイル」実践
2022年08月09日
人権リスクの対象は8割が「ハラスメント」。リスクに対し対策している企業は6割にとどまる
2022年07月05日
「リスキリング」に取り組んでいる企業は3割未満。その大多数が学ぶ内容、進捗管理を個人任せに
2022年06月09日
事業承継に関わったことのある総務は2割以下。国の公的支援策を7割近くが「知らない」
2022年05月19日
ウェルビーイングに取り組んでいる企業は約半数。測定のアセスメント実施は約2割にとどまる
2022年04月07日
半数以上が会社のDX推進の取り組みは不足と評価。課題は「従業員のリテラシー不足」が最多。
2022年03月01日
約8割が総務の仕事を社内にアピールできず。総務は「なんでも屋」「雑用係」のイメージ
2022年01月27日
コロナ禍のBCPは見直す必要があるも未対応。テレワークは出社とのハイブリッドで継続が半数
2021年12月23日
女性特有の健康課題を問題視するもセクハラを心配する声。フェムテックの活用に6割強が興味あり
2021年11月29日
オンライン商談用の個別ブース不足が課題に。今後のオフィスの役割は「社内コミュニケーション」
2021年11月01日
約9割の総務が総務の仕事が好きと回答。一方、総務の仕事は適正に評価されていないとの声が多数
2021年10月22日
心身の不調を訴える従業員が昨年より増加傾向。テレワークによるコミュニケーション不足などが要因
2021年09月30日
約7割の企業が副業先での社員の労働時間を「把握していない」。総務は自身の副業に意欲的な傾向に
2021年07月29日
約7割の総務が男性育休を推進したいと回答する一方、3割以上が何の施策もしていない
2021年06月30日
約2割の企業は水害対策未実施。9割以上がテレワーク中の水害を想定した対策ができていない
2021年06月03日
8割以上がワーケーションの導入を未検討。ネガティブイメージは仕事と休暇の線引きが曖昧になる
2021年04月19日
テレワーク手当の実施率は約3割。福利厚生の課題は平等性、制度の利用率、経営層の理解など
2021年04月09日
9割が2020年度に会社のデジタル化が進んだと回答。2021年度に求めるものもデジタルツールの導入が最多
2021年03月04日
社員の健康管理が難しくなったが約7割。オンライン活用による新たな健康経営の取り組みが目立つ
2021年01月26日
緊急事態宣言対象地域の9割以上がテレワークを実施。2割の総務はテレワーク期間中も毎日出社
2020年12月22日
73.4%が対面研修のオンライン化に着手したが、うち59.0%がオンライン研修を対面に戻したいと回答
2020年11月12日
テレワークで会社の方向性を伝えにくくなったが8割。社員のエンゲージメント低下を実感
2020年09月30日
テレワークの方が従業員のメンタルケアが難しいが7割超。テレワーク推進でストレスが増えたと実感
2020年08月26日
これからの働き方はオフィスとテレワークの融合が7割超。オフィスの見直しは占有面積の縮小
2020年07月31日
新型コロナでやっておけばよかったBCP対策は、テレワーク制度の整備、情報の電子化など
2020年06月30日
緊急事態宣言中に完全リモートワークができた総務は1.6%。出社理由は郵便物の対応など

関連記事

  • 「働きがいのある会社」トップ企業のハイブリッドワークの形 戦略総務を実現できるデバイスとは? PR
  • コスト削減だけじゃない! 働き方が変わり、コミュニケーションも生まれる「照明」のすごい効果 PR
  • 災害への備えは平時から。企業の防災担当者を強力にサポートする東京都のサービスとは PR

特別企画、サービス