『月刊総務』調査

従業員数50人未満企業の4社に1社がストレスチェック実施。効果を実感するも職場環境の改善に課題

月刊総務オンライン編集部
最終更新日:
2025年11月13日
2028年春に新しく義務化予定企業の8割以上が準備に未着手(2)

『月刊総務』は、全国の総務担当者222人を対象に、「ストレスチェックに関する調査」を実施した。

  1. 調査結果 概要

76.6%の企業がストレスチェックを実施。義務化されていない規模の企業も4社に1社が実施

ストレスチェックを実施しているか尋ねたところ、全体の76.6%が「実施している」と回答した。従業員数別にみると、現在義務化されていない従業員数50人未満の企業で実施しているのは24.4%だった(n=222)。

グラフ1

<ストレスチェックの実施方法(n=170/ストレスチェックを実施している企業)>

  • 外部に委託している(民間サービスなど):69.4%
  • 産業医の指導のもと社内で実施している:25.3%
  • 国や自治体の公的支援を利用している:1.2%
  • その他:4.1%

ストレスチェック実施理由は「法令遵守のため」「従業員のメンタルヘルスを守るため」

ストレスチェックを実施している理由を尋ねたところ、「法令遵守のため」が90.0%で最も多く、「従業員のメンタルヘルスを守るため」が83.5%と続いた(n=170/ストレスチェックを実施している企業)。

グラフ2

<50人以下で義務化されていない中でも実施している理由/一部抜粋>

  • ストレスが生産性を著しく低下させるため。
  • 体調不調による長期休職等を防ぐため。
  • いずれ義務化になると思っていたから。
  • 勤怠管理システムのオプションとして利用可能なため。

<義務化される前からストレスチェックを実施してよかったと思うこと/一部抜粋>

  • 従業員のストレス状況が見える化でき、配慮や対応が可能になったこと。
  • 担当した公認心理士へ相談することにより人間関係の問題が解決したり、部署ごとの問題が解消された。

ストレスチェックの結果から、職場環境を十分に改善できているのは2割未満

ストレスチェックの結果を活用して、職場環境改善の施策を実施しているか尋ねたところ、「十分に実施できている」のは16.5%にとどまった。「実施しているが足りていない」が43.5%、「実施できていない」が40.0%と、結果の活用に課題があることが明らかとなった(n=170/ストレスチェックを実施している企業)。

グラフ3

<実施している内容/一部抜粋>

  • 所属上長との1on1
  • 残業時間の見直し
  • 産業医面談の推奨
  • 結果を部署ごとで統計して公表
  • 管理職のメンタルヘルスマネジメント検定の取得

「メンタル不調者の早期発見・フォローアップへの活用」が健康経営へのステップに

ストレスチェックの結果を健康経営にどのように生かしているか尋ねたところ、「メンタル不調者の早期発見・フォローアップへの活用」が57.1%で最多となった(n=170/ストレスチェックを実施している企業)。

グラフ4

8割以上が、ストレスチェック実施の効果を実感

ストレスチェックを実施したことによる効果を感じたか尋ねたところ、8割以上が「効果を感じた」と回答した。まだ義務化されていない中で実施している従業員数50人未満の企業の方は、全員が「効果を感じた」と回答した(n=170/ストレスチェックを実施している企業)。

グラフ5

2028年春のストレスチェック義務化、4割以上がまだ把握せず

2028年春までにストレスチェック制度が全ての事業所に義務化されることを知っているか尋ねたところ、4割以上が知らなかったと回答した(n=45/従業員数50人未満の企業)。

グラフ6

2028年春に新しく義務化予定企業の8割以上が準備に未着手で、7割近くが全く情報を得られていない

従業員数50人未満で現在ストレスチェック未実施の企業に対し、義務化に向けての準備状況について尋ねたところ、8割以上が「まだ準備はしていない」と回答した(n=34/従業員数50人未満でストレスチェックを実施していない企業)。

グラフ7

義務化に向けて十分な情報を得られているか尋ねたところ、67.6%が「全く情報を得られていない」と回答した(n=34/従業員数50人未満でストレスチェックを実施していない企業)。

グラフ8

従業員数50人未満の企業の3割以上が、ストレスチェック以外のメンタルへするケア施策を実施

従業員数50人未満の企業に対し、ストレスチェック以外で、従業員のメンタルヘルスケアに関する施策を行っているか尋ねたところ、35.6%が実施していると回答した(n=45/従業員数50人未満の企業)。

グラフ9

<実施内容/一部抜粋>

  • オンラインカウンセラーによるカウンセリング
  • ハラスメントの相談窓口を外部に委託
  • クラウド型の相談室サービスを契約している
  • 専門家による従業員向けセミナーの開催

総評

今回の調査では、ストレスチェックが義務化対象外の企業にも広がりつつある一方で、その結果を職場環境の改善に十分生かせている企業は2割に満たないことが明らかとなった。多くの企業が「法令遵守」や「メンタル不調の早期発見」を目的に導入しているものの、結果を“組織の変化”へと結びつける仕組みづくりはまだ道半ばといえる。

ストレスチェックは、単なる診断ではなく「職場の健康度を測る経営指標」として活用できる制度だ。結果を受けて上司と部下の1on1を行う、残業状況を可視化する、産業医や外部専門家の知見を取り入れるなど、改善行動につなげることが求められる。また、2028年春には全事業所への義務化が予定されており、今後は制度対応だけでなく、組織文化として“ストレスをためない働き方”をどう設計するかが重要になる。

総務部門は、従業員の健康管理の実務を担うだけでなく、経営層と現場の間に立ち、データをもとに職場の課題を見える化し、対話を促進する役割を果たすことが求められる。ストレスチェックを「年1回の義務」ではなく、「継続的に職場をより良くするためのツール」として機能させることが、これからの健康経営時代における総務の真価といえるだろう。


【調査概要】
調査機関:自社調査
調査対象:『月刊総務』読者、「月刊総務オンライン」メルマガ登録者ほか
調査方法: Webアンケート
調査期間:2025年9月10日〜2025年9月17日

■調査結果の引用時のお願い
本調査内容を転載・ご利用いただく場合は、出典元の表記をお願いします。
例:「『月刊総務』の調査によると」「『月刊総務』調べ」など

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