初任給アップ時代の 賃金制度の再設計
初任給アップの裏で既存社員との賃金バランスが課題に……今こそ見直したい「賃金制度」
株式会社新経営サービス 人事戦略研究所 コンサルタント 宇井 賢
最終更新日:
2025年10月01日

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近年、初任給の引き上げを行う企業が増えています。採用競争力を高める上で有効な手段ですが、その影響は社内の賃金制度全体に波及し、場当たり的な手当の導入や部分的な調整だけでは、制度全体の整合性が失われ、社員の納得感や信頼感を損なうリスクが高まります。
本連載では、賃金制度を再設計するためのポイントについて解説していきます。今回は、初任給アップの波紋と賃金制度への影響についてです。
初任給の引き上げの現状
ここ数年、企業の初任給の引き上げが全国的に加速しています。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によれば、2024年における大学卒の初任給全国平均は24万8300円となり、前年比で1万1000円の増加を記録しました(図表1)。実際、民間調査でも、初任給が30万円を超える大企業や、短大卒・高卒の初任給を一斉に引き上げる動きが多数報告されています。
一方で、初任給の上昇はここ数年だけの一過性の現象ではありません。20年スパンで見ると、2004年時点での大学卒初任給が19万5000円であったのに対し、約20年で5万円以上上昇していることがわかります。特に2020年以降はその上昇ペースが一段と速まり、企業の間では“初任給の再設計”が急務となっています。
初任給の引き上げの背景
初任給の上昇の背景には、さまざまな経済的・社会的な要因が重なっています。
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