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第4回:最近の起業動向と『ゆる起業』

2013年07月30日

こんにちは。当社は50〜60代という、定年前後での起業をソフトとハードの両輪で支援している会社です。

ソフト面においては起業・経営の事務をサポートしているほか、さらには事業拡大の支援もしているため、毎月100名規模の起業家交流会『銀座アントレ交流会』を開催し、交流・マッチングを行っております。
また、法律面、法令や官公庁への対応などを含む情報発信、経営のサポートもしています。
一方、ハード面においては、銀座と東京でレンタルオフィス『銀座アントレサロン』『東京アントレサロン』を4店舗運営し、現在700社超の起業家のみなさんに事務所としてご利用いただいています。

このコラムでは50〜60代の方を中心とした起業の現状や、起業をする上でのポイント、注意点などをご案内していきたいと思います。

前回は「シニア起業家の特徴」と「シニアが起業する分野」についてお話しをいたしました。

今回は「最近の起業動向」とさらに「50代以上で起業する方におすすめしたい『ゆる起業』」についてお話しします。


■最近の起業動向

日本政策金融公庫が発表した、融資をした方に対してのアンケート調査によると、新規開業における55歳以上の割合は、1990年代に比べ2010年には倍以上に増えています。

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※日本政策金融公庫総合研究所「新規開業に関するアンケート」


2011年、2012年には55歳以上の方の起業の割合は低下していますが、90年代前半に比べると高い水準にあります。

弊社へ相談に来られる50〜60代の方の多くは、融資を受けずに、ご自身の資金の範囲内でビジネスをすることを望む方が多いため、実際にはこの調査結果より高い割合の方が起業していると弊社では考えています。

また、55歳以上で起業された方は、直前の勤務先での勤続年数が長く、21年以上勤めた方の割合が非常に高くなっています。

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※日本政策金融公庫総合研究所「新規開業に関するアンケート」 


他にも、以前にもお伝えした起業の動機はこのアンケート調査の結果でも、「仕事の経験・知識や資格を活かしたかった」、「社会の役に立つ仕事をしたかった」、「年齢や性別に関係なく仕事がしたかった」という理由が圧倒的に多いです。

一方で、収入に対しての考え方は、多くの収入を得るよりも、家計を維持できるだけの収入があれば十分と考える方が多くいます。

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※日本政策金融公庫総合研究所「新規開業に関するアンケート」

これらの資料が示す、「シニア起業」の特徴は、自分の好きな仕事で起業し、無理せず、適度な収入を得たいとお考えの方が多いということです。

このような無理をしない、どこか「ゆるり」とした気持ちを持った起業を、弊社では「ゆる起業」と名付けています。


■50代以上で起業する方におすすめしたい「ゆる起業」とは?

一言で「起業」といっても、さまざまな目的があるはずです。
例えば大企業を目指し、株式の上場によって創業者利益を得るというものもあります。
一方で、自分の好きな仕事を、自分にできる分だけこなし、適度な収入を得る、というやり方もあります。

この2つは同じ「起業」といっても性格は異なります。
上場を目指し、バリバリ働いて成長を目指す起業と、シニア世代が求める「ゆる起業」の違いを端的に記しました。

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◆楽しいと思える
20〜30代の、まだまだお金が必要で、事業を通して資産を築きたい、という方と比べると、50代以上──特に60代以上の方はお金よりやりがいを重視し、働く理由も「社会との接点がほしい」「人生を楽しみたい」という声が多くなっています。

ならば「いっぱいいっぱい」になって働くのでなく「楽しいと思える」ことを「楽しいと思える」だけやる。これが大切です。

言い換えると、利益に強くこだわるのでなく、ご自分がチャレンジしてみたい分野で「楽しいと思える」起業ができるのは、シニア層の特権といっていいかもしれません。


◆やりがい、生きがいを感じる
「ペコペコ」と頭を下げ、仕事をするのは嫌だ、という方が多数いらっしゃることです。
そういった方は、むしろ「ペコペコ」頭を下げるような起業は避けてください。

もちろんビジネスを立ち上げる限り、何らかの営業を行う必要はあります。「ペコペコ」しないといっても、横柄な態度をとっていいわけはありません。
しかし、シニア層は「やりがい、生きがいを感じる」ことを重視する方が多く、「周囲に自分が必要とされる」ことを望んでいます。

これは「ペコペコ」とは逆の、自然体でいることを意味します。

そこで、ご自分の経験を活かし、尊大な態度もとらないけれど過剰に頭を下げることはなく、周囲から尊敬され必要とされる仕事で起業することをお勧めしています。


◆得意分野
今までに得た経験を活かし「得意分野」で起業していただきたい、ということです。
20〜30代の、まだ業務経験が浅い方は、未知の仕事に挑戦し「ハラハラ」しながら実力を高めていくことも、時には必要でしょう。
しかし、50歳以上の世代は、すでに相当の実力をお持ちです。

もし何らかの失敗をしてしまった場合は、時間をかけて信用や損失を取り戻すほうが難しい。
「ハラハラ」より「得意分野」で起業するべきです。

ご家族も、50代ならまだしも、60代の起業家が新事業に挑戦すると言えば「ハラハラ」するでしょうし、顧客だって不安を持つかもしれません。しかし、シニア層は今までの経験を活かす仕事なら安定した結果が残せるはずです。顧客も、この安定感や安心感を望みます。


◆投資はできる限り抑え利益を追求しない
定年のない仕事人生を歩むために、やりがいを重視していただきたい、ということです。
利益を追求し、事業を拡大させることは、あなたが望んでいることでしょうか。
シニア起業家、とくに60代の方はあまり望まない傾向があります。

シニア起業は「ガツガツ」せず、自分の目が届く範囲内で事業をされる方が多く、人を雇う方もそれほど多くありません。

拡大するより、仕事を楽しむことを重視し、体力的に厳しくなってきたらある程度仕事を減らせる環境を望むことが多いです。そのため、経費負担がかかる雇用は避ける傾向にあります。

さらにシニアの起業では、投資は無理なく回収できる範囲内で行うほうがよいです。確実性がない事業に大金を注ぎ込み、もし失敗したら、せっかく好きなことに打ち込むはずだった時間を、借入金の返済などにあてることになってしまいます。


◆健康が一番
「バリバリ」はすでに充分、体験されてきた方が多いと思います。
人は年齢とともに価値観が変化します。仮に20〜30代であれば、ある時は眠る時間を削り、事業の拡大に邁進することも必要かもしれませんが、50〜60代で起業をする場合はどうでしょうか。「健康」と「収入」の両方が手に入れば、これに越したことはありません。

しかし、それが相反する場面も出てきます。「ここで体に鞭打って働けば新規取引先を獲得できる!」というとき、50代の起業家であれば、少し無理をする程度はいいかもしれませんが、60代の起業家は「無理はしないで」と、その仕事を断り、後進である若者に譲るという考え方も必要だと思います。

今まで資本の論理の中で、組織や社会に押しつけられてきた「拡大」「利益」「全力」ではなく、「自分の思いが届く範囲内で」「利益よりも楽しさややりがいを大事にし」「健康に気をつけ、無理はしない」方向に価値観を変えたほうが、シニア起業では一般的に、充実した人生を歩めるのではないかと思います。

そして、何かで経営判断に迷ったとき、私の起業は「ゆる起業」だと意識できたほうが、正しい判断が下せるはず、とも考えています。


次回は「起業の際のお金の話」について詳しくお話したいと思います。

片桐 実央
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