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改正民法で変わる債権法【その2】消滅時効改正の影響とは

2019年05月10日

 民法の財産法等についての改正法が成立したことにより、2020年4月に新しい内容の法律が施行されます。今回は、企業の債権回収実務にも影響がある消滅時効の改正について具体的にご説明します。

■時効とは

 民法上、一定期間行使されなかった債権は時効にかかって消滅し、その後債権者は債権回収ができなくなります。時効が存在する理由は、現在存続している権利関係を保護しようという理由と、「権利の上に眠れる者は保護に値しない」というローマ法に基づく考え方による、といわれています。時効が完成、援用されていないことが債権回収できる前提条件になりますので、消滅時効についての改正は、企業など債権管理にも影響します。

■民法改正で消滅時効はどう変わる?

(1)一律で主観的起算点から5年間に
 改正前の民法では「権利を行使することができるときから10年」(客観的起算点)という計算方法で事項を計算していましたが、改正民法により新しく、「債権者が権利を行使できることを知ったときから5年」(主観的起算点)という別の起算方法も追加されました。

 主観的起算点を導入した背景には、現行の10年という期間は世界的にも長いといわれている点や、ほかの短期消滅時効(170条以下)の存在もあり、有用性に疑問があったとされています(そのため、改正民法では短期消滅時効も廃止されました)。

(2)不法行為の消滅時効の変更
 これまで不法行為に基づく損害賠償請求権は単一の規定でしたが、改正により「一般的な不法行為」と「人の生命や身体についての不法行為」とで、消滅時効の期間を分けて規定されるようになりました。

 具体的には、一般的な不法行為の消滅時効が主観的起算点から3年間であるのに対して、より重大な不法行為である生命・身体についての侵害については主観的起算点から5年間と長めの期間が設定されました。また、除斥期間として定められていた期間が消滅時効に改定されました。

(3)時効の中断と停止の再整理
 改正前の民法において、時効の中断と停止という概念は、再び時効のカウントがスタートしたときに、これまでのカウントがリセットされるかどうかが異なる制度として並存していました。

 改正民法ではこれをもう少しシンプルな形に再整理しています。時効がストップする場合はすべて「完成猶予」という概念に統一された上で、そのうちの一部が「更新」という、これまでのカウントがリセットされ 再スタートするという形になりました。

 したがって、これまで「時効の中断」といわれていたものは「完成猶予と更新」、「停止」といわれていたものは「完成猶予」となります。

■企業の債権回収への影響

 起算方法が主観的起算点に変わったので、債権者が権利行使をできることを知らなかったと主張すれば、永遠に債権が消滅しないようにも思えます。しかし、企業間取引では通常ではこのようなことはありません。企業間取引では契約書を締結し、契約条件として対価をいつまでに支払うという支払期日が定められるので、債権者が支払期日を過ぎていることを知らなかったという主張はまず通らないからです。

 そのように考えると、企業の債権回収の観点からは、ざっくりと一般債権の消滅時効は10年から5年に短縮されたと考えてもよいでしょう。

 ただし、企業間取引については、これまでも商事取引の短期消滅時効として5年間が定められていましたので、起算点は客観的起算点から主観的起算点に変わったものの、事実上それほど大きな影響がないと思われます。

■最後に

 今回の改正は、これまでの判例や多くの支持を集めている解釈に法律を合わせる側面があるため、実務上大きな影響がないものがほとんどです。

 しかし、たとえば、賃金請求権は短期消滅時効が廃止となったことにより、現在労働基準法で認められている2年の消滅時効についても伸長すべきではないかとの議論がなされています。そうなった場合、事業者への大きな影響が想定されますので、関連法の動向も含めて今後の動きを注視していく必要があります。

白石 哲也
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