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「環境づくりから一歩踏み込むリアルなコミュニケーションの場づくり」
第5回:経営×現場 場づくりの企画内容を考えるヒント

2016年11月18日

■ 企画を立てるときの順番

 前回は、そもそも新しい企画を考えても、社内説得をどうしたら良いのかわからないという不安に応えるため、「経営―現場間」をつなぐコミュニケーションの場づくりの内容に優先して、社内説得の方法をご案内しました。今回は企画内容をどうしていくのか、簡単にご紹介します。

 直接コミュニケーションの場づくりの企画は、「狙い」→「対象」→「スタイル」の順に考えるとスムーズです。「狙い」の前提として、前回ご紹介したように、何らかの数字が得られているようであれば、「狙い」は数字を基に検討すればすぐに設定できるでしょう。数字がない場合でも、経営課題の優先順位と照らし合わせていけば、狙いは必然的に明確になります。

● 狙い(あくまでも一例です)

□ 経営理念の浸透(M&A、経営体制変更直後や周年事業 等)
□ 経営方針・経営計画の現場理解の促進(中期経営計画策定後 等)
□ コスト意識の徹底(生産性革新、改善活動の底上げ 等)
□ 現場が保有している業界・顧客動向の把握(営業力強化、事業開発、経営計画策定前 等)
□ 制度変更の理解促進
□ まずは経営と現場との距離を縮める

● 対象
□ 管理職層
□ 新入社員
□ 若手・中堅クラス
□ シニア
□ 女性
□ 本社
□ 各部門
□ 各拠点 等
※全員参加、自由参加、事前公募、指名参加 等

● スタイル
□ 雑談
□ 対話
□ 議論

 スタイルの3つの違いを図表から簡単にご説明しておきます。

雰囲気 話の中身
雑談 自由なムード たわむれのおしゃべり
対話 自由なムード 真剣な話し合い
議論 緊迫したムード 真剣な話し合い
出典:中原淳・長岡健『ダイアローグ 対話する組織』(ダイヤモンド社)


■ コスト意識の徹底について企画した場合

 たとえば、コスト意識の徹底について、まずは管理職を対象に実施しようとした場合は、雑談や対話よりも「議論」が適しているでしょう。現場の管理職へのコスト意識の浸透は、強い姿勢で経営トップの本気度を示す必要があります。すでに起きている現象の原因を突き止めていく必要もあります。

 では、同じコスト意識の徹底でも、若手・中堅クラスを対象にした場合はどうでしょうか。経営トップが若手・中堅クラスを対象にコスト意識の徹底をするといっても、あまり強い姿勢だと威圧的に思われ、締め付けの印象が強くなります。よりポジティブに現場の改善活動が積極化されるように、対話形式で、「どうしたらもっと効率的に成果を出すことができるのか」というテーマで、自由なムードで真剣な話し合いをした方が良いです。スタイルを組み合わせた形もあり得ます。「対話」→「議論」→「対話」という構成にすることもあります。

 スタイルに応じた技法として、たとえば対話では、ワールドカフェ、フューチャーサーチ、伝達技法ではストーリーテリング、アナロジー、議論ではディベートなどがありますが、最初から技法を考え出すと、最適な技法の選択に迷いだしてしまうことがあります。

 また、経営―現場をつなぐ機会であるにもかかわらず、それぞれの技法に沿った運営をすることを優先する意識が強くなってしまい、その結果、参加者は「創られた場」のように感じてしまうこともあります。せっかくの機会が興醒めに至るという負のスパイラルはもったいないことです。経営者は現場の声を聞きたいですし、現場も経営者と話したい。参加者はすでに十分に動機付けがされていますので、あまり演出しない方がうまくいきます。


■ 失敗しない企画の進め方

 もちろん、ポイントはいくつかあります。雑談であれ、対話であれ、議論であれ、意見を何でも言ってもよい場である、トップにとって耳が痛いような発言こそ歓迎する等、参加者の安心感につながる場のルールをトップ・参加者・運営事務局全員で確認することは不可欠です。そして、進め方に関しては、スタイルを問わず、以下の流れで設計すると失敗は少なくなります。
(1) 経営者から先に苦労している事実やストーリーを共有する
(2) そのうえで経営者が現場社員の悩みやプロセスを尋ねる
(3) 社員の話をもとに、経営者の側がどうしたらうまくいきそうか仮説を提示しながら、話し合う
(4) 経営者が現場社員の話を承認したり足りない点を指摘したりしながら、チャレンジを推奨する

 経営者の代わりに総務部門が実施する場合も基本的には同じ枠組みで結構です。

 こうした企画の考え方をお伝えすると、平日と土日のどちらが良いのか、ランチミーティングが良いのか、夕方から懇親会をする方が良いのか、業務時間内に実施した方が良いのかを尋ねられることもよくあります。これは、「狙い」→「対象」→「スタイル」を絞ることができれば、自然と選択肢は絞られてくることでしょう。
 
 例示した、コスト意識の浸透×管理職×議論の場合は、業務時間内が良いでしょう。どれほど重要視しているのかを示すことができるからです。管理職がさっそく行動できるように、午前中のうちに機会を作り、午後には何かアクションを起こせるようにしておくと効果的です。
 
 では、コスト意識の浸透×若手中堅社員×対話の場合はどうでしょうか。業務時間外の自由参加または事前公募(残業代は払う)で、夕方に実施すると良いのではないでしょうか。日頃から問題意識のある社員を集める必要がありますので自由参加か事前公募が良いでしょう。業務時間内だと管理職が参加を認めないこともあります。

 このように、(課題→)「狙い」→「対象」→「スタイル」が決まれば、実施日時も決めやすくなります。

■ 一般論は気にしない

 参加人数をどれぐらいにするのか、というご質問も多くいただきます。これは、企業規模や企画内容によって本当に変わってきます。数百人規模でも実践できるようにした対話技法などもありますが、自社の経営と現場をつなぐ取り組みなのですから、自社固有の状況が多くあります。あまり一般論を気にしすぎずに、「狙い」→「対象」→「スタイル」をもとに、考え抜くことが一番大事です。

 本気で考え抜いたことは、多くの場合、間違っていませんから、自信をもって実践に移してください。自転車の乗り方を覚えていくのと一緒で、やってみないとわからないことはたくさんあります。一生懸命に自転車の乗り方を調べていても、いつまで経っても自転車を乗れるようにはなりません。やってみて失敗しながらでも乗り方を覚えていく方が早いですよね。

 普遍的な自転車の乗り方のポイントはありますが、これに相当するものは、簡単ではありますが今回、ご紹介しました。「狙い」→「対象」→「スタイル」の順に考え、進め方は経営者から先に苦労している事実・ストーリーなどを話題として提供したうえで現場の声を拾っていく。どうしたらうまくいくのかという発想に誘導して、チャレンジを推奨する。必然的に、経営者が常日頃から頭を悩ませている利益創出に向けた課題の掘り起こしや、人材育成、あるいは経営者の考えを現場社員に伝えることにつながるものとなります。

 「経営ー現場」間の直接コミュニケーションの場づくりは今回で終了です。次回からは、現場と現場をつなぐリアルの場の作り方をご紹介します。

秋山 和久
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