コラム

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環境づくりから一歩踏み込むリアルなコミュニケーションの場づくり
第4回:経営×現場 経営と現場をつなぐ場づくりをどう実現するか

2016年10月28日

■「やってるつもり」になっていないか
ある会合で、大手企業の総務・人事の方にお目にかかり、「経営トップと現場との直接コミュニケーションならやっていますよ」というお話を伺いました。ちょうど1週間後に直接コミュニケーションの機会を予定しているとのことで、無理をお願いして、当日のようすを取材させてもらいました。

時期は6月。中期経営計画の初年度にあたる前期の決算が終わり、中計の進捗も良好。中間年度の方針をあらためて社内に浸透し、良好だった中計の進捗で緩みがないようにしたいとのこと。

学校の体育館ほどの大きさの会場で経営トップが登壇し、社員はまさに校長先生のお話を聞くように席に座っています。驚いたことに、座っている社員のみなさんをみると、前から順に偉い人、年齢の高い人に自然となっているようで、若い人は一番後ろ。社長が登壇すると、前にいる偉い方々が一生懸命拍手をして、それにつられて拍手をする方がだんだん後ろに流れてくる拍手のウェーブのような現象が起きていました。

社長が一通り経営方針を説明し、質疑応答の時間も設けられていましたが、さすがに質問はひとつも出ませんでした。後ろの方に座っている若手社員は、早く終わらないかなと時計をみる人も多くいました。

確かに経営トップと現場との直接コミュニケーションではあります。ただ、「コミュニケーション」というにはあまりにも一方的ですし、経営側が何か新しい情報を得ることが出来たのかといえば、そうではありません。
経営トップと現場との直接コミュニケーションを「やっているつもり」の状態になっている企業も、実は多いのではないでしょうか。


経営者の関心事が利益創出や人材育成に集約されるものである以上、経営者は現場に経営方針や理念をより理解してほしく、かつ現場の"悪い情報"(課題)を求めているものです。

前回ご紹介したように、大手企業でも、経営者が現場に出向いた直接的な情報交換を徹底実施している例も多くあります。

経営と現場をつなぐ場を創り出す企画は、ラインに乗りにくい仕事ですので、総務が中心に進めやすい仕事です。戦略総務としてのチャンスがあることを、あらためてご理解いただけたのではないでしょうか。

ところが、経営者によっては、あまり「表に出ること」が好きではない方もいますし、今まで経営と現場が直接つながる場の企画を実施していなかった場合、その必要性を説得しにくいものです。そもそも新しい企画を考えても、社内説得をどうしたら良いのか分からないという不安はつきものです。

そこで、今回は、企画内容を考える以前に、経営と現場をつなぐ場を作るための実施承認を得やすくする方法をご紹介します。

■経営者は数字に弱い
経営者にとって「数字」は非常に貴重なものです。傾向が見えたり、実態をつかんだり、原因を考えたり、どう良くしていくのか、どこを良くすべきなのかを認識しやすいからです。

ここで検討しているのは、経営-現場間の直接コミュニケーションの機会を作り、情報流通を増やそうとするものですから、
 ・現場が経営のことをどれぐらい理解しているのか
 ・会社のことをどれぐらい知っていて、どう評価しているのか
 ・悪い情報をどれぐらい共有できているか
 ・会社全体として課題に真摯に向き合っていると思うか
などを数字で把握できると良いでしょう。

あるいは、経営層に対して、現場のことをどれぐらい知っているのかをアンケートしても良いでしょう。従業員を対象にした組織診断や満足度調査を実施している場合は、そのデータを流用して活用できる場合も多くあります。


こうしたご案内をすると、「調査を新たに実施すること自体が難しいんですよ」「組織診断は人事がやっていてデータを共有してもらいにくいんです」という反応をする企業の方もいらっしゃいます。

経営-現場間での情報流通が十分ではないとお感じになっていて、これを戦略総務として実現したいお気持ちがあるなら、全量調査でなくても良いです。

まずは、社内の知り合いや仲の良い同期に頼んで、会社の経営理念をどの程度認識しているか、会社の事業計画をどの程度理解しているか、会社に対する評価はどうか、などを回答してもらい、数十サンプルも集めることができれば十分でしょう。

こうしたプレ調査でも数字になって確認しやすくなります。丁寧に進めるのであれば、プレ調査の結果を基に全量調査を改めてやりたいと説得しやすくなりますし、プレ調査の結果を元に経営-現場間をつなぐ直接対話の場をつくる必要を理解してくれることもあるでしょう。


■表に出たがらない経営者も情報は求めている
表に出ることを嫌う経営者もいます。経営者である以上、それでは良くないと思いますが、無理強いをして、本来の目的である「経営-現場間の直接コミュニケーションの機会を作り、情報流通を良くする」ことを実現できないよりは、別の手段でこれを実現できた方がよいです(戦略総務は、今回のテーマに限らず、常に目的―手段の整理が求められます)。
 
では、どうやって実現するか。簡単です。
経営者の代わりに総務が現場との直接対話を積み上げていけば良いのです。生みの親である総務、経営者が内心頼りにしたいと考えている総務にとって、大チャンスです。

「社長が直接対話する企業も多いですが、当社では総務でやります。その方が、試行錯誤しやすいですし、ある程度形ができてから、必要であれば社長にご協力いただきたい。現場から上がってきた情報は毎回ご報告します。」。
こうしたアプローチは、総務にしかできません。

総務が現場との直接コミュニケーションを実施し、そこで得られた情報を経営者にしっかりとお伝えすれば良い。もちろん、経営者に何を伝えたのかは、現場にもフィードバックする必要があります。

このアプローチは時として現場から、「あいつらは経営者の回し者だ」と言われることがあります。新しいことに挑戦し、会社のために、現場のためにやっている仕事を批判されると、傷つきますよね。
でも、後ろ指をさされてもいいじゃないですか。総務のことを何も知らないにも関わらず、「総務なんて誰にでもできる仕事だ」と断定されるよりも、経営者の回し者だと言われるぐらいの総務の方が刺激的ではありませんか?

経営者が考えていることを現場にしっかりと伝えて行動を促進することは経営者の役割ですし、現場の課題や利益につながるネタを拾い上げて形にしていくことも経営者の役割です。経営者の最大の関心事である利益創出と人材育成のいずれにもつながるもので、ここに投資する労力・コストは必要経費以外のなにものでもありません。

経営者が苦手な場合は総務が代行する。会社として存在している以上、経営-現場間での情報流通促進は避けては通れないもの。直接コミュニケーションほどこれらを簡単に実現できる方法はありません。

次回は、具体的にどのような企画内容が考えられるのかをご紹介します。

秋山 和久
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