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地域活性化に活用できる知的財産〜地理的表示〜第9回

2017年05月15日

 こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。
 今回は、地理的表示(GI)と商標との関係について説明します。

■ 生産団体から受けた問い合わせ

 先日、宮城県のとある生産団体の方から問い合わせがありました。その内容は、「すでに商標を持っているけれども、地理的表示登録は可能なのでしょうか?」というものでした。

 地理的表示法(特定農林水産物等の名称の保護に関する法律)第13条第1項第4号ロの規定によると、すでに登録されている登録商標と同一または類似の名称についてGI登録は受けることはできません。
 しかし、商標権者である生産者団体自身がGI申請を行う場合や商標権者の承諾を得ている場合等は除かれます。
 GIの申請書には、「法第13条第1項第4号ロ該当の有無等」という項目が設けられており、登録商標が存在する場合には、商標権の内容(権利者名、登録商標、登録番号等)や、商標権者から承諾を得た年月日等を記載することになっています。

 ここで留意しなければならないのは、商標権者は、同一または類似の名称についてGI登録された場合、GIの正当な使用について商標権の効力を及ぼすことができなくなるということです。簡単にいうと、自分だけが独占的に使用することができなくなってしまいます。

 弊所が某地方でGIに関するセミナーを行ったとき、ある生産団体の方から、「自分の団体が所有している商標権に関する名称をGI登録してしまうと、団体構成員以外の者が(その名称を)使用するのを認めざるを得なくなるのでGI申請は気が進まない」という意見が出ました。
 特定の生産団体が、特定の名称を商標登録して長年独占排他的に使用しているようなケースでは、GI登録によって期待できるメリットがよほど大きくない限りは、GIの申請まで至りにくいという現状があります。

■ GIと商標の性質の相違

 では、なぜ上述のように、商標登録されている名称についてGI登録された場合、商標権者は(他者の)GIの正当使用について商標の効力を及ぼすことができなくなるのでしょうか?

 これには、GIと商標の性質の相違が大きく関係しています。
 GIは登録されると、権利ではなく、「地域共有の財産」となり、品質基準等の一定の要件を満たせば、地域内の生産者は誰でも名称を使用することができます。
 一方、商標は登録されると、名称(商標)を独占排他的に使用する権利を取得できます。これは商標権者の意思で、似たような商標を許可なく使用している第三者に対して、差止請求や損害賠償請求をすることができる非常に強力な権利です。
 したがって、「地域共有の財産」とするGIとは相容れない部分があります。

 以上のことから、"地域全体を生産者全員で盛り上げていこう"というような場合には、GI登録は有効だと思います。
 しかし、生産者(団体)同士の利害関係が絡み合意形成が困難な場合は、各団体が商標権によるブランド化をそれぞれ進め、地域を盛り上げていくのが適していると思われます。

 次回は地域団体商標に触れてみたいと思います。

鈴木 徳子
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