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地域活性化に活用できる知的財産〜地理的表示〜第19回最終回

2018年05月24日

 こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。

 2016年から執筆を担当した「地域活性化に活用できる知的財産権」も今回で最終回を迎えます。今回は地理的表示制度の今後の展望、地理的表示(GI)を含む認証規格という観点で書きたいと思います。

■海外との相互保護の進展により期待されるGI産品の輸出拡大

 2016年12月26日に改正地理的表示法(改正GI法)が施行され、次のような法改正が行われました。


「日本と同等の地理的表示保護制度を有する外国と個別の二国間等の国際協定によるGI相互保護を可能とする」(改正法第23条)


 これは日本で登録されたGIが、国際協定を締結した外国において個別に地理的表示申請(GI申請)を行わなくても保護されることを可能とするものです。政府は、昨年、ベトナムおよびタイと相互保護に向けた協力を開始することで合意しました。また、最近の報道によると、インドネシアについても協議を検討しているようです。さらに、EUについては、すでに相互保護の実施を待っている段階まで進んでおり、GIの外国との相互保護の準備は着々と進んでいます。

 外国との相互保護が進むと、外国で時間とコストをかけてGI申請をしなくても保護されるようになりますので、GI産品の輸出拡大には大きな弾みになるでしょう。政府は農産品・食品に関し「2019年に輸出額1兆円」という大きな目標を掲げていますので、GIの外国との相互保護には今後も注力していくと思われます。

■新JAS規格

 2017年6月に「農林物資の規格化等に関する法律(JAS法)」が改正され、2018年4月1日に施行されました。JAS規格の対象はこれまで、モノ(農林水産物・食品)の品質に限定されていましたが、今回の改正によって、「生産方法(プロセス)」、「取扱方法(サービスなど)」、「試験方法」なども対象となりました。今後は、食品の鮮度を維持する低温保管や輸送方式などもJAS規格の対象となります。現在(2018年5月)まで、機能性成分である「べにふうき茶に含まれるメチル化カテキン」の定量試験方法等が新JAS規格として認められています。

 従来の行政主導のJAS規格と異なり、新JAS法の下では生産者や事業者等が主体的になって規格を作り、自社のブランディングに役立てることが可能となります。政府は、JAS規格の国際化に力を入れており、JAS規格の認証を受けた産品等の輸出拡大が期待されています。

 ちなみに、一定の基準を満たした規格という意味では、JAS規格とGIは同じです。GIとして登録を受けるためには産品の伝統性など厳しい条件をクリアする必要がありますが、このような基準を満たさない場合でも、生産者等が独自の基準を定めてJAS規格を取得すれば、地域産品のブランディングが可能となります。

■国際認証の広がり

MSC.png

 2018年5月13日付の日経新聞に、食の「国際認証」に関する記事が掲載されました。その中で、「海のエコラベル」ともいわれる「MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)」が紹介されていました。これは、海洋の自然環境や水産資源を守って漁獲された水産物に与えられる認証マークです。

 上記日経新聞の記事によると、イオンは2020年までに認証を受けた水産物の売り場を6割増やす予定で、西友も昨年から環境に配慮した魚の取り扱いを開始し、レストランや食堂でも認証を受けた魚介類を積極的に取り扱い始めたそうです。

 前回の記事で、ドイツの食品売場で見かけた認証マークのご紹介をしましたが、日本もオリンピック開催に向け、認証マークへの意識がますます高まるものと思われます。ドイツの食品売り場では、EUのGIマークがパッケージに付されたチーズやハムがたくさん並んでいました。日本では、GI(マーク)の認知度がまだまだ低いですが、今後はGIマークの付された産品を店頭で見かける機会が増えていくと思います。

画像引用先:WWFジャパン

■終わりに

 地域産品の品質を保証するGI制度は、地域活性化に大きく貢献するとともに、今後外国との相互保護によりGI産品の輸出拡大も期待できます。また、認証マークが今以上にほかの商品(産品)との差別化のために使われるようになると、GIに対する認知度も深まっていくと思います。

 今までGI制度の説明にとどまらず、ブランディング等さまざまな角度から解説して参りましたが、これからも情報発信等の活動を通じて、GIの普及に努めていきたいと思います。

鈴木 徳子
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