企業に求められる「人的資本」の情報開示の動向、その必要性の解説

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「人的資本の情報開示」──このキーワードが人事の世界で盛り上がりを見せています。2020年、米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対し、人的資本の情報開示を義務付けたことが大きな話題となりました。人的資本を重視する動きはすでに世界的な潮流であり、日本にも着実に影響を与え始めています。人的資本の情報開示が求められる背景や、ガイドラインとして注目される「ISO30414」の概要とその活用方法について、本稿で3回にわけて解説していきます。
人的資本の情報開示
人的資本とは
人的資本とは「Human Capital」の訳で、「モノ」や「カネ」のように、人の持つ能力などを資本として捉えた経済学の概念です。日本でも発行企業が増えている統合報告書にて参照されている国際統合報告評議会(IIRC)のフレームワークでは、人的資本を「人々の能力、経験およびイノベーションへの意欲」と定義しています。
企業はこれまで人的資源(Human Resource)の考え方から、人を資源として「管理する」ものと捉え、人材に投じる資金を「費用(コスト)」と考えてきたといわれます。
一方、人的資本は、人を経営に必要な資本とし、人の成長を通じた価値創造を実現するため「蓄積する」ものと捉え、人材に投じる資金は「投資」と考えます。
なお、人的資本への投資はダイレクトに業績貢献につながるものではないため、知識・スキルの向上のほか、モチベーションや健康の増進、幸福感の獲得、協調や良好な風土形成など、人だからこその影響を考慮しながら行う必要があります。
人的資本の重要性
GAFAMと呼ばれる米国の主要IT企業に代表されるように、21世紀はナレッジ型経済の時代ともいわれ、人の持つKSAO(知識、スキル、能力、その他の特性)が重視されます。
米国の代表的な株価指数であるS&P500構成企業の市場価値の変遷を見るとそれは明らかです(図表1)。

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