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2009年、宮﨑知子さんは夫の実家である神奈川県の老舗旅館、「陣屋」の女将となった。「夫婦ともに継ぐ気はなく、私も自動車メーカーのエンジニアと結婚したつもりだったのですが」。2人は2年半をかけ、倒産寸前まで追い込まれていた経営を立て直す。DXを成功させたリスキリングを取材した。
取材・文◎武田 洋子
基幹システムから自社開発 抜本的なDXに挑戦
宮崎さん夫妻が夫の実家の老舗旅館を継いだとき、経営が立ち行かなくなるまでの猶予はほとんどない状態だった。従業員にはセカンドキャリアとして働く60歳以上も多く、パソコンを使える人はほとんどいない状況。宿泊予約や会計など、全ての処理は手書きで行われていた。
「創業した大正時代の仕事のやり方のまま、ほぼ変わっていなかったんです。夫と2人で、カルチャーショックを受けました」
紙文化の弊害は、情報共有の欠如に表れていた。ひとたび1万坪の敷地内に散ってしまうと、居場所も仕事の進捗状況もわからない。「あの人を見なかった?」という会話が日に何度も交わされる。そもそもマニュアルがないので万事が経験と勘で動いており、仕事のやり方も人により違う。それでうまく機能しているのならいいが、赤字は膨らんでいた。何から手を付ければいいのか途方に暮れたが、もはや小手先ではどうにもならない。基幹システムを入れて抜本的に改革することを決意した。
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