いきなりパワポを開いて作り始めるのはもうやめよう! 伝わるプレゼン資料にするための基本ルール

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企画提案や説明の機会が増える中で、総務をはじめとしたバックオフィス担当者にも「伝える力」が求められる時代になってきました。とはいえ、日頃プレゼンテーション(プレゼン)に慣れていないと、どこから手をつけてよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか? 本企画では、「戦略総務のための伝わりやすいプレゼン資料の作り方」と題して、総務担当者向けに資料作成前の準備や構成、見せ方などプレゼン資料作成のポイントを3回に分けて解説。初回となる今回は、「伝わる資料」を作るための準備と基本ルールについて紹介します。資料作りに慣れていない方でも、ステップを踏んで丁寧に作っていけば、説得力あるプレゼンを実現することが可能ですので、ぜひ最後まで読んでみてください。
プレゼン資料を作成する前に準備することは?
プレゼンの目的の明確化
資料作りを始める前に、まずあなたがこのプレゼンで「どんな目的を達成したいのか」を明確にする必要があります。
目的が決まったら、その目的を達成するために、「何を伝えたいのか」「誰に伝えるのか」「何をしてほしいのか」を明確にする必要があります。これがぶれると、資料全体の構成に迷いが出てしまいます。
- 誰に伝えるのか?(対象)
- 何を伝えるのか?(メッセージ)
- 伝えたあと、どうしてほしいのか?(アクション)
この3点を紙に書き出すだけでも、資料の方向性がグッと定まります。たとえば「役員会で新システム導入の承認を得たい」という目的で具体的に言語化してみると以下のようになります。
- 対象:役員(業務現場からは離れているが、経営インパクトに関心がある)
- メッセージ:今の業務フローは属人的で、月間60時間のムダが発生している
- アクション:新システム導入の決裁をお願いしたい
通常、プレゼンとなると詳細な機能説明をする必要があると考えます。ですが、それは相手によりますし、プレゼンの目的によります。たとえば、役員を相手にするのであれば、詳細な機能説明よりも「新システムを導入することによって得られる成果」や「費用対効果」を伝える方が効果的です。
このように目的は変わらなくても相手によって、メッセージが変わることがあるので、まずはプレゼンの目的を設定して、その次に「対象」「メッセージ」「アクション」を考えるようにしましょう。
さらにいえば、目的が曖昧なまま資料を作り始めてしまうと、「きれいだけど伝わらない資料」「たくさん情報があるのに、何がいいたいのかわからない資料」になりがちです。目的の明確化は、プレゼン資料の「羅針盤」なのです。
目的を明確にすることで「伝えるべきこと/伝えなくてもよいこと」の整理も可能になります。これは、情報過多になりがちなプレゼン資料において非常に重要な視点です。
いきなりPowerPointを立ち上げない
プレゼン資料作りで多くの人が陥る落とし穴は、「いきなりPowerPoint(パワポ)を開いてしまう」ことです。確かに、テンプレートやグラフィックが整ったパワポは便利です。しかし、構成が固まっていない状態でスライド作成に入ると、視覚表現にばかり気を取られて、本来の「伝える中身」が後回しになってしまいます。
そこで私が強くおすすめしたいのが、「紙に大まかな構成を手書きする」というステップを取り入れることです。
紙に書くことで、以下のようなメリットがあります。
- 思考が整理されやすい(箇条書きやマインドマップで自由に書ける)
- 全体像を俯瞰しやすい(構成の流れや関係性が見える)
- 編集に制限がある分、本質に集中できる(デザインに惑わされない)
紙1枚に、「話の流れ(構成)」と「各スライドで伝えたいこと」をざっくりと書き出すだけで、頭の中が一気に整理されます(図表1)。
たとえば、A4用紙を横にして8分割し、そこに8枚分のスライド構成をスケッチするという方法もおすすめです。ここで描くのは、きれいなレイアウトではなく「話の中核」です。文字だけでもよいですし、図のイメージがあるなら簡単なアイコンでもかまいません。
実際、私自身もどんな案件でもまずは紙に向き合うことを習慣にしています。この「紙に書く時間」が、プレゼンの説得力を大きく左右するといっても過言ではありません。デジタルな時代だからこそ、あえてアナログに立ち返る。このひと手間が、資料作りの質とスピードを引き上げてくれます。
プレゼン資料作成の基本的なルール
スライド1枚には「1メッセージ」
ありがちなミスが、1枚のスライドに情報を詰め込みすぎてしまうこと。スライドは「視覚的に伝える」ための道具なので、1スライドに1つのメッセージを載せるのが原則です。
「伝えたいことが多すぎて、どうしても入れてしまう……」という気持ちはわかりますが、それがかえって相手の理解を妨げてしまいます。情報は「見せる順番」を工夫することで、整理して伝えることができます。
話の流れに沿って「前提→結論→理由」の順でスライドを組み立てるだけでも、理解のスピードは格段に上がります。また、必要に応じてアニメーションで情報を小出しにすることも有効です。
印刷する場合など、物理的な制限がない限り、できるだけ1スライドには1メッセージとするようにしましょう。
ただし、比較などを行う場合には1スライドにまとめた方が伝わりやすくなります。たとえば、導入前と導入後などのBefore/Afterで変化が起こった部分などは並べた方が比較しやすいので、あくまでも聞き手の立場に立って、そのスライドでどのように伝えるのがいちばんわかりやすいのかという視点でスライドを構成するようにしてください。
フォントサイズや種類の選び方
プレゼン資料は「スクリーン越しに見せる」ことを前提に作ります。小さい文字やぎゅうぎゅう詰めのレイアウトでは、相手に負担をかけてしまいます。
最低でも本文は16pt以上、メインメッセージは26pt以上を目安にしましょう。また、情報を詰め込まず、スライド内に「余白」をしっかり取ることで、視認性が大きく向上します。 余白とは「空白」ではなく「間」です。適切な間を作ることで、視線の動きがスムーズになり、理解のスピードが上がります。
また、フォントの種類はWindowsであれば、「日本語:游ゴシック」「英語:Arial」を使用するようにしましょう。これまでWindows環境では「メイリオ」が定番フォントとして広く使われてきました。遠目でも視認性が高く、可読性に優れていることから、多くのユーザーに支持されてきた背景があります。しかし近年では、オンラインでのプレゼンテーションが主流になりつつあることや、PowerPointの初期設定フォントが「游ゴシック」に変わったことも影響し、企業のIR資料などでも游ゴシックを採用するケースが増えてきています。
色の使い方にも一貫性を
スライドに使う色は「2色」に絞ることをおすすめします。2色だけと聞くと、少なく感じるかもしれませんが、実際には十分です。
色数を制限することで、スライド全体に統一感が生まれ、洗練された印象を与えるデザインになります。視覚的にもすっきりしていて、見る人にとってもわかりやすくなります(図表2)。
ここでいう「2色」とは、あなたが自由に選ぶ2つのカラーを指します。黒・グレー・白などのベースカラーはこの2色には含まれないので、正確には「選んだ2色+黒・グレー・白」で構成することになります。
この2色の選び方はとてもシンプルで、まずは「メインカラー」と「アクセントカラー(サブカラー)」を決めましょう。
- メインカラー:スライド全体を通してよく使う基調色。背景やタイトルなどに使われることが多い。
- アクセントカラー:強調したい部分にポイント的に使う色。たとえば、グラフの一部や重要なキーワードなどに活用。
使う比率の目安としては、メインカラーを約70%、アクセントカラーを約30%にするとバランスが取れた印象になります(図表3)。
「カラーを2色に限定すると、デザインが単調になってしまうのでは?」と感じる方もいるかもしれませんが、むしろその制約があるからこそ、配色のセンスが際立ちます。黒やグレーをうまく組み合わせれば、色数が少なくても表現力のあるスライドに仕上がります。
プレゼン資料作りに特別な才能は必要ありません。大切なのは「目的を明確にし」「視覚的にわかりやすく作る」ことです。特に総務などバックオフィス業務では、「相手に納得してもらう」「社内で円滑に物事を進める」ために、伝える力が不可欠です。本稿を参考に、ぜひ次回のプレゼンで「伝わる資料」を目指してみてください。
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