認知度や売り上げ向上の手段ではなく、企業の社会的存在意義を明確にしたパーパス。ではパーパス・ドリブンな組織は、どうやってつくっていけばよいのか。不確かな時代の指標をパーパスに求めるさまざまな企業をコンサルティングしてきた、アイディール・リーダーズ株式会社の後藤照典さんに、その具体的なプロセスを教えていただいた。
取材・文◎武田 洋子
ブレない軸は企業の内に求める
後藤 照典さん
東京大学教育学部卒業、グロービス経営大学院修了(MBA)。グロービスマネジメントスクール講師。株式会社ベネッセコーポレーションにて商品企画、販売・マーケティング、組織風土変革プロジェクト、人事などに携わり、「日本企業にパラダイムシフトを起こす」という志からアイディール・リーダーズ株式会社に入社。エグゼクティブ・コーチング、ビジョン・パーパスのコンサルティング、1on1トレーニングなど実績多数。昨年末、『パーパス・ドリブンな組織のつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター)を上梓。
アイディール・リーダーズ株式会社のCOOである後藤照典さんは、これまで業界を問わず多くの組織の「パーパス・ドリブン」を支援してきた。企業の社会的存在意義であるパーパスを戦略立案や意思決定、社内外向けの施策の起点とするのが「パーパス・ドリブン(パーパスを起点とした)」組織だ。このような軸を持っていないと、事業部ごとに目指す方向性がバラバラになってしまう。たとえば、事業戦略部は売り上げを追求し、新規事業部は地域貢献を掲げ、人事部は顧客第一主義をうたうといった具合だ。個々人の優先順位も、上司の顔色ドリブンや顧客の反応ドリブンなど、ちぐはぐになる。一方パーパス・ドリブンは、「私たちは○○のために存在する」というパーパスを戦略から財務まで貫き通すことで、ブレない経営方針を維持できる(図表1)。
なぜ今、多くの企業がパーパス・ドリブンに注目しているのか。その背景を後藤さんは大きく2つ挙げる。
「1つはVUCA(未来予測が困難な状態)です。特にこの2年はみなさん、『VUCAとはこういうことか!』と痛感されたことでしょう。コロナ禍により、5年前くらいに策定していた中長期計画が多くの企業で瓦解し、根本からの見直しを迫られることになりました」
これまで企業は、中長期計画とは外部環境を予測して立てるのが普通だった。しかしそれではコロナ禍のような想定外の環境変化に対応できないことがわかったのだ。そこでよりどころとなる軸を、外部ではなく企業自らの内部に求めた結果がパーパスである。
「もう1つ、大きなきっかけになった出来事があります。2019年夏、アメリカのトップ企業が名を連ねる財界ロビー団体『ビジネス・ラウンドテーブル』が驚きの声明を発表しました。長らく企業経営の原則とされてきた株主資本主義から脱却し、ステークホルダー資本主義への転換を宣言したのです。提言の中にはパーパスの実現が盛り込まれており、企業は今後、より強く社会的存在意義を考えていかねばならないとされました」
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