大企業が首都圏のオフィスを手放したり、地方に引っ越したりするニュースが世間をにぎわせている。これは全体的なトレンドで、首都圏オフィスの空室率は上がり続けているのだろうか? 現在のオフィス市況と、今後数年にわたりどんな動きが予測されるのか、世界100か国以上で事業展開する、世界最大の事業用不動産サービス会社CBREグループの日本法人シービーアールイー株式会社の代表取締役社長、坂口英治さんに聞いた。
取材・文◎武田 洋子
返室の動きはあるが新入居も多いミックス市況
固定費を削減すべくオフィスの床面積縮小を検討している企業は、意外に少ないのかもしれない。『月刊総務』が行ったアンケート調査では、回答者の7割以上が「オフィスの見直しをした」または「見直しを検討している」と答えたが(図表1)、見直しの内容は「レイアウト変更」が圧倒的で、「専有面積縮小」は次点に入っているものの、レイアウト変更の半分程度の割合だ(図表2)。実際に、家賃の高い首都圏のオフィス市場の動きはどうなのかという問いに、シービーアールイー株式会社(CBRE)の代表取締役社長、坂口英治さんは「一言で表すなら『ミックス』です」と答えた。
たとえば、日本のシリコンバレーとうたわれた渋谷では、2019年までオフィスビルの空室率は1%を切っていた。ところが2020年の緊急事態宣言時には、IT企業がこぞってオフィスを解約したことがニュースで取り上げられた。
「駅に近く、1フロアが大体200坪程度の大型ビルの空室率が、当時は3%まで上昇しました。その後は報道されることがないので、今も空室率が上昇し続けていると思っている方が多いのですが、実は違います。大型ビルは空いたあとがそれなりに埋まっており、空室率は3%で下げ止まっています。ただし、駅から遠い中小ビルは変わらず苦戦している状況です」
大型ビルのオフィスを手放す企業もあるが、その空きへの入居を希望する企業は相変わらず多いのだ。駅近で新しい大型ビルという、より良い物件を求める最大の理由として、坂口さんは人材獲得を挙げる。IT業界は常に優秀な人材を求めている。そのためには、やはり渋谷にオフィスがあるというステータスが、有利に働くと考えられているのだ。
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