本誌の調査では、朝礼を行っている企業は約7割。多くの企業で長く続けられてきた取り組みであり、日常業務の一部として定着している。一方で、せっかく集まり時間を使っているにもかかわらず、業務連絡やタスクの確認だけの場になってしまっているケースも少なくないのではないだろうか。本連載では4回にわたり、朝礼が組織にもたらし得る効果をあらためて整理し、意味ある取り組みとするための考え方や実践のヒントを探る。
コロナ禍を経て希薄になった社員の帰属意識やコミュニケーション量の不足がフォーカスされ、改善に向けた企業の取り組みが進んでいる。この流れの中で今、再評価されているのが「朝礼」だ。そもそも朝礼が担っていた役割とは何なのだろう。今回、次回は、『月刊朝礼』を刊行する株式会社コミニケ出版代表の下井謙政さんにお話をうかがった内容を紹介する。同誌には、朝礼で話すテーマが1日ずつ、365日紹介されている。
互いに人となりを知る機会 朝礼がもたらす効果に期待
代表取締役
下井 謙政さん
祖父・下井勲氏が創業した株式会社コミニケ出版の代表を、2006年より務める。同志社大学大学院で企業永続の法則・要因について研究し、実証実験として自社で道徳を重視した朝礼を20年間実践。仮説を実証し、他社にも朝礼の普及を推進している。『月刊朝礼』発行のほか、社内報・社史、Web制作など組織発展事業を展開。
株式会社コミニケ出版の『月刊朝礼』は、「感謝」「思いやり」「自立」「成長」を主なテーマにした1日1話の記事を、毎月1冊にまとめた朝礼専門の月刊誌だ。創刊は1984年。40年以上にわたり、日本企業における朝礼の変遷を見てきた。代表取締役である下井謙政さんは、現在の「朝礼」再評価の背景をどう見ているのだろうか。
「オンライン利用やフリーランスの増加など多様な働き方が当たり前になるにつれ、どこで誰が何をしているのかわかりにくい状況が生じました。社員教育の難しさや帰属意識の希薄化などが危惧される中、あらためてメールのやり取りでは代替できない、みんなで集まることの意義が再評価されています。その代表的な施策が朝礼といえるでしょう。コロナ禍で普及したオンライン技術の活用による、新たな取り組みも見られます。ある会社は拠点ごとに行っていた朝礼を、本社に大画面を新設して全拠点をつなぐ一斉朝礼に切り替えたそうです」
顔を合わせる朝礼が注目されているのは、それだけ普段のコミュニケーションが不足している証しでもある。下井さん自身が若手だった頃は、飲みニケーションが盛んであり、上司に誘われることがうれしく、声を掛けられるようにがんばったものだという。時代が変わり、昨今は上司が部下を気軽に誘えない風潮だ。毎日、それぞれ勝手に仕事が始まり終わっていく。それでは上司とも同僚とも、一歩踏み込んだ関係性を築きにくい。
この状況を大きく変えてくれるのが、毎朝10~15分の朝礼だ。つまり、朝礼は単なる業務連絡の場ではないということになる。
「業務連絡ならメールでこと足ります。社員それぞれの人となりを知る自己開示の場であってこそ、わざわざ集まって朝礼をする意味があります」
互いにコミュニケーションを取り、情報を共有することで組織の一員としての自覚も芽生える。コロナ禍で一時減った『月刊朝礼』の発行部数も、今は再び戻ってきているそうだ。一度やめてみたことで、あらためて朝礼の効果を実感した企業が多かったということだろう。
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