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コロナ禍以前から、社会構造の変化は始まっていた。雇用の流動化や個人のワークスタイルや意識の多様化により、企業と働く個人の関係は新たな局面に移りつつある。これからの「雇用」と「働く」について、株式会社リクルートHR統括編集長の藤井薫さんに取材した。
取材・文◎武田 洋子
社会構造の変化による新しい働き方が顕在化
コロナ禍以前から始まっていた社会構造の変化を、藤井薫さんは「SEPTEmber(セプテンバー)」で表す(図表1)。
「S」は社会。日本は、需要も供給も先細りの成熟社会を迎えた。企業の寿命は、人の働く年数よりもはるかに短く20年も持たないといわれ、市場の統合再編が盛んだ。社会構造の変化は、新しい働き方を引き寄せる。今の社会には明治時代の文明開化と同じような『新しい才能』が求められ、多様な人材の才能を開花させられる働き方が必須だと、藤井さんは指摘する。
「E」は経済。今や日本の産業の約8割がサービス業である。モノづくりからコトづくりへ、冷蔵庫そのものではなく、冷蔵庫やデリバリーも含めた豊かな食の体験を提供することがビジネスになる。働く個人が望むのも、体験価値を生む働き方だ。
「P」は統治。不確実な世界をサバイバルするには、1人の天才ではなく多様な人材の力がいる。何がヒットするかは誰にもわからないので、とにかく大勢でいろいろな方面にトライするのが結局は効率的なのだ。多様な人材を統治するために、組織はカジュアル&オープンであることが原則となる。
「T」は技術。コロナ禍で最も進んだのは、このTだろう。働き方において、時間・場所・関係が大胆に拡張されつつある。
最後は環境の「E」。環境への配慮と持続共生を欠いたビジネスは、もはや成立しない。サービスがクライアントに届くまでのあらゆる工程で、誰にも負担をかけない仕組みでなければ売れない時代なのだ。働く個人も、未来に貢献する働き方を望んでいる。
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