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コロナ禍でDX(デジタルトランスフォーメーション)は進んだのだろうか? リモートワークの環境はそれなりに整った気がするが、それがDXの本質なのだろうか? 「アメリカから周回遅れ」と揶揄される日本のDX化、その現状と2030年への展望を取材した。
取材・文◎武田 洋子
突破力の弱さは企業文化にあり
「DXは世間でいわれているほどには進んでいません」
矢崎隆弘さんは、コロナ禍を経て日本企業のDXが進んだかという問いに、こう答えた。
「たとえばZoomのような、新たな企業活動のスタイルを生むような革新的なテクノロジーが、日本では出現していません。本来、DXとは現状の延長線上ではなく、別次元へ飛び込むくらいの力となるものです」
日本におけるDXの遅れを表す独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のデータがある(図表1)。千葉友範さんが特に注目するのは、「既存製品・サービスの高付加価値化」「新規製品・サービスの創出」項目だ。
「アナログデータを単純にデジタル化する『デジタイゼーション』はともかく、技術の活用により新たな価値を創出する『デジタライゼーション』に関しては雲泥の差があります。2国にこれほど差が付いたのは、そもそもの発想が違うからです」
日本のDXはD(技術)から入る。「新技術を使って何ができるか」を考えるわけだが、これはデジタイゼーションにあたる。一方、アメリカではX(体験)がスタートになっている。広大な国土のどこからでも仕事ができる環境を整えるために、クラウドサービスが誕生したのが一例だ。これこそがデジタライゼーションであり、本来のDXなのだ。現状からのいわゆる「突破力」だが、なぜ日本はこの力が乏しいのだろうか。
「現段階で、DXへの取り組みを加速させる環境をまとめました(図表2)。社会課題と経営課題を直結させ、イノベーションと機敏性を強化し、レガシー化したシステムを刷新するには、戦略や人財、製品・サービスなどいくつものコントロールレバーをうまく連動させなければなりません。ところが、日本企業は1つの部門だけで問題を解決しようとする傾向が強い。本当は他部門も含めた全体を見直さなければ改善できないケースがほとんどであるにもかかわらずです。『いいモノさえ作っていれば売れる』という高度成長期以来の哲学も、今日では製造部門という一部に限定した突破力しか持ちません。社会のシステムが複雑化して、1部門や1社では実を結ばないビジネスが増えているのに、対応できていないのです」(矢崎さん)
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