これからの「行きたくなる」オフィスは「居心地」がキーワードに 働く場づくりに重要な4要素
株式会社オカムラ ワークデザイン研究所が発行した『「行きたくなる」オフィス 集う場のデザイン』では、従業員が積極的に「行きたい」と思うオフィスが備える条件を分析している。集う場をつくるのは、総務部門の役割だ。そこには、規模や予算にかかわらず、共通して求められる要素が存在する。今回は、リサーチセンター所長の花田愛さんに、2回にわたり、オフィスの現在地点をうかがった。
コロナ以後の働き方はハイブリッドが主流になる
ワークデザイン研究所
リサーチセンター 所長
花田 愛さん
大学院修了後、株式会社岡村製作所(現株式会社オカムラ)入社。専門は芸術工学。空間デザイナーを経て、現在はコミュニケーションと空間環境をテーマに、これからの働き方と 空間の在り方について研究する。博士(学術)。大阪大学国際公共政策学部招聘教員、名古屋市立大学芸術工学部非常勤講師。近著に『「行きたくなる」オフィス 集う場のデザイン』(彰国社)。
コロナ以前のリモートワークは、限られた一部の人ができるものだった。そこから、半ば強制的にみんなが経験することになったコロナ禍の数年間を経て、今はリモートワークのメリットに気付いて維持する組織と、以前の通りの全員出社に戻した組織との二極化が進んでいる。
全員出社派が思うリモートワークがもたらすデメリットの筆頭が、コミュニケーション不全だ。オンライン会議で部下の表情が読めず、こちらの話をどれだけ理解できているのかも測りづらい。手応えがないコミュニケーションロスのままに物事が進んだ結果、仕事の手戻りが生じて生産性が落ちるなど、マイナスの影響を感じているのだという。確かに、対面から得られる表情やしぐさなどのちょっとした空気感は、自覚する以上に豊かな情報を与えてくれるものだ。
そのギャップを埋めるために、カメラや音声、チャットなどのツールは日々、進化している。しかし、同じ部署内ならチャットでコミュニケーションを補完できても、他部署の人と偶発的に交流するのは難しく、そういった場面で得られる全社の動きが感じられなくなるダメージは否めない。オンラインコミュニケーションしか経験していない新入社員が、同僚のようすがわからないために自分が満足に仕事をできているのか判断できず、不安にさいなまれるという話をよく聞く。「何か大事なことを知らされていないのではないか」という疎外感を募らせる従業員も一定数いる。対面で「集う」からこそ得られる帰属意識やモチベーションの効果は大きいのだ。
その一方で、オンラインにより仕事の選択肢が増えたことも事実だ。たとえば、出張先の海外からでも、これまでは欠席するしかなかった会議に参加するのが当たり前になっている。0が1になったわけで、これは間違いなくオンライン普及の恩恵といえる。何より、リモートワークは働き方の柔軟性を上げる。それを体験した以上、この先リモートワークを完全に排除する働き方は支持されにくいだろう。
全員出社を前提としている企業では、採用への影響が顕在化し始めているとも聞く。全員出社かリモートワークかの二択ではなく、程よいバランスでのハイブリッドワークが最適解のようだ。
株式会社オカムラのワークデザイン研究所は、40年以上にわたり「働く」に関する研究を推進してきた。ハイブリッドワークが浸透するにつれ、あらためて「集う」意味が問われているのを、リサーチセンター所長の花田愛さんは感じている。
「リモートでも仕事は進められる中、オフィスに行くからこその価値が求められるようになりました。行ったからこそ得られる、何かしらの体験や価値が重要になっています」
本誌の調査では、ハイブリッドワークを実施している企業において、「出社したくなる工夫をしている」割合は4分の1にとどまった(図表1)。しかし、オフィスは「行かねばならない場所」であるより「行きたい場所」になる方が、断然働くモチベーションは上がる。では、リモートワークの選択肢があるにもかかわらず、従業員が自発的に「行きたくなる」オフィスの条件とは何か。
オフィスに求められる特徴「居心地」が新たな要素に
花田さんは調査結果を基に、「行きたくなる」オフィスの特徴を大きく4つに分類している(図表2)。
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