コラム

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第12回 実践!リスクマネジメント
STEP8:啓蒙活動
〜リスクマネジメントの意識を浸透、定着させる〜

2011年10月06日

 リスクマネジメント推進体制を整え、リスクマネジメントポリシー、各種ガイドラインを策定し、社員にインプットをする。
これでリスクマネジメントの推進を終えた、と安心してしまう企業は少なくありません。

 ここまでのプロセスはスタート地点に立っただけであり、ゴールではありません。
リスクマネジメントを浸透、定着させていくためには社員への啓蒙活動を続けることが必要です。啓蒙活動を続けないとリスクマネジメントは一過性のもので終わってしまいます。それでは「仏作って魂作らず」、「絵に描いた餅」です。


■啓蒙活動とは?
 啓蒙活動という言葉を使うと大げさに聞こえるかもしれませんが、簡単に言えば、社員にリスクマネジメントの意識を持ち続けさせるための全ての活動です。

 さまざまな機会、媒体方法を使って「愚直に」、「繰り返し」、「しつこく」伝え続けることが大切になります。
これはリスクマネジメントの推進に限らず、行動規範(クレド)や行動基準(ウェイ)などを社員に浸透、定着させる時に共通のことです。


■具体的な啓蒙活動例
 私が企業内でリスクマネジメント、コンプライアンスの推進を行っていた際の啓蒙活動例を幾つか紹介します。

(1)メール、掲示板(リスクマネジメント通信)
毎月1回、『リスクマネジメント通信』というタイトルで全社員にメールを一斉配信していました。
社内からの問い合わせで共有すべきもの、社内のヒヤリハット事例などタイムリーな内容を記載していました。堅苦しい文章や長いボリュームだと読まれないので、わかりやすい表現でコンパクトなものを心掛けます。時にはこのメールに社長や部門長が更にコメントを付けて社員に再送信して社員に注意を促すという援護射撃をしてくれました。
また、個人情報の漏洩、社員・役員の不正事件など社会的に大きな事件が発生したときなどは、臨時号を出すと良いでしょう。事件を「対岸の火事」ではなく、我が事としてタイムリーに考えさせる機会となるからです。
社内報を発行している企業であれば、その紙面で上記のような内容を定期提起連載項目として伝え続けても良いでしょう。

(2)社内ホームページ(イントラネット)
社内ホームページには、リスクマネジメントポリシー、各種ガイドラインとともに、リスクマネジメント通信のバックナンバーや、社内・社外からの問い合わせ内容などを整理して掲載、更新を続けました。

(3)各種ミーティング、イベント
多くの社員が集まるイベント、会議などでも利用できる機会があれば、リスクマネジメントについて、話をする時間を設けました。また、各部門、各拠点などで行われるミーティングでは、折に触れてリスクマネジメント推進プロジェクトチームのメンバーに話をしてもらうようにしていました。

(4)ウォーキングアラウンド・マネジメント
時間を見つけては、社内、拠点内を歩いて廻りました。
社内を歩き回ると、個人情報・機密情報に関する資料などが無造作に置かれているなどリスクを生みやすい状況を知ることができます。そのような場合は、注意、指摘をするとともに、再発防止策を考える機会にもなりました。
また、「リスクマネジメント、コンプライアンスなどで困っていることはありますか?」などこちらから声をかけて、現場の情報を積極的に集めるようにしました。

 上記はどれも特別なことではありません。しかし、様々な機会、方法を使って草の根運動のような地道な活動を「繰り返し」、「しつこく」伝え続けることが大切なのだと思います。

 インターネット広告・メディア事業を行う株式会社サイバーエージェントのミッションステートメント(社員の行動規範)の中に、「ライブドア事件を忘れるな」というものがあります。
このミッションステートメントは、同社本社のトイレの鏡にも記されています。社員はトイレで手を洗って顔を上げると、イヤでも目に入るのです。ライブドア事件発生から時間が経過しても事件が風化されること無く、同じ IT企業として社員に危機意識を持たせ続けることができます。啓蒙活動の手法として学ぶべき一例ではないでしょうか。

太期 健三郎
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