コラム

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「環境づくりから一歩踏み込むリアルなコミュニケーションの場づくり」
第7回:現場×現場 営業と開発の"縁結び"は総務の仕事!

2016年12月27日

 今回は、営業と開発を結びつけるリアルの場づくりについてご紹介します。
 イメージがわきにくい可能性がありますので、あるケースをご紹介しましょう。

■あるアパレル企業で生まれた「開発×営業」負のスパイラル

 従業員数400人弱のアパレル企業の例です。その会社は、服の製造そのものは外部委託をしていますが、企画・マーケティング、デザイン、販売(商業施設に店舗を出店)は行っていました。個別のブランドは3つありますが、基本コンセプトはいずれも企業ブランドに基づいています。接客・販売のアプローチも3ブランドのいずれも提案型。組織は、管理部門、企画・製造・商業施設営業、販売の3つ。ターゲット顧客はブランドごとに異なりますが、提案型が響きやすい20代後半以降でした。販売員は若い女性が多い企業でした。

 接客・販売が提案型のため、服という商品力そのものに加えて、販売員の人柄やブランドに対する共感が不可欠です。お客さまは、確かに服を買いに来てはいるものの、販売員との会話を楽しみ、ブランドへの愛着を通じて生活を楽しんでいます。販売員が"服を語る"ことが求められる形態です。このため、季節ごとに上市される服について各店舗の店長が集まる会議では、企画側が服に込めた想い、仕上がるまでのエピソードや葛藤、などを各店長に共有し、意見交換を活発にしていました。対話型といえます。

 ところが、製造から販売まで一貫する「SPA」型でスピーディーに市場に対応するアパレル企業の成長が著しく、経営層は中長期的に提案販売に加えて、商品力も際立たせていくことを計画します。このため、店長会議では、ブランドコンセプトに関わる内容ではなく、最近の流行に沿った服であることばかりを企画サイドから説明するようになりました。討議型に近い形で、一方的な説明中心になりました。

 実は、残念ながらそのアパレル企業は倒産してしまいました。上記の通り、販売の最前線では"服を語る"ことが必要です。お客さまは「雑誌に出ています」「最近のトレンドです」という情報ではなく、服そのものに共感したかったのです。売れなくなる状況が生まれ、販売側からすると服に問題があると考えがちです。一方の企画側は、売れると見込んだ服を作っており、販売の現場がおかしいと考えがち。負のスパイラルが生じてしまいました。

 ある郊外の店長は、店長会での企画側の説明では明らかに情報が足りず、お客さまとの会話が成立しないために、個別にデザイナーにアプローチし、人柄にふれ、服に込めた想い、仕上がるまでのエピソードや葛藤、などを、店長会とは別の機会で情報を集めていました。その店長のお店は、最後まで売上が低下することはなかったといいます。

 この企業の場合は、経営判断に失敗したように見えますが、むしろ「企画×販売」、アパレル企業以外でいうと「開発×営業」の情報共有、ひいては開発×営業間での認知・評価に問題があったといえます。現に、最後まで売上が維持できたお店も存在していたのですから。

 このように、本来は利害が完全に一致をしているはずなのに、開発と営業は極めて対立しやすい構図にあります。先ほどのアパレル企業でいえば、管理部門、企画・製造・商業施設営業、販売の3つの部門で構成されていますので、企画と販売の状況を俯瞰(ふかん)できるのは管理部門以外にありません。この間を取り持つことが本当に総務の仕事なのか?とお感じになる方も多いはずです。でも、管理部門が、企画と販売の葛藤状況に立ち入らなかったがために、倒産という結果を招いてしまったと考えることもできるでしょう。どこもやらない仕事を拾う、経営者の「なんか変だ」を先回りして解決する。それも戦略総務の一形態です。

 では、具体的にどのようなことをすれば良いのか。先ほどのアパレル企業の例を振り返りながら、進めていきましょう。

■総務が「営業×開発」をつなぐ

 先ほどのアパレル企業では、経営方針の転換として、提案型販売に加えて商品力も強化しようとしていました。このため、店長会での商品説明を以前のように服に込めた想いのみを提供し、意見交換していれば良いとは限りません。店長がマスに集まる場である以上、最近の流行とひも付けた情報に比重を置くことは、経営方針の転換を意識付けるためにも効率的であり、必ずしも間違ってはいません。提案型販売で必要な情報が得られなくなってしまったことが大きな問題ではありますが、経営方針を転換するかじ取りをしている最中では、この部分を公式的なコミュニケーションで流通させづらい状況にあったと考える方が現実的です。

 たとえば店長会を従来の意見交換と、企画側の商品説明の2部構成のようにする形にしていても、うまくいかなかったはずです。意見交換の方が顧客接点で必要な情報が多いですから、企画側の商品説明は、店長たちは聞くふりをして時間が過ぎるのを待つのみになることが容易に想像できます。

 このため、ある郊外の店長が独自にやっていたように、非公式のコミュニケーションの形でカバーできる場が必要だったのです。この企業を題材にするのであれば、店長会の終了後に、自由参加でも良いので総務が主催する懇親会を開催すべきだったと考えられます。懇親会といっても、単に雑談して終わりにするのではなく、従来の店長会で企画側と店長が活発に意見交換をしていたような対話式のセッションを挟んだ懇親会が良いでしょう。

 会社全体を俯瞰(ふかん)できる総務のみなさんはパンドラの箱に気がついていても、それを怖くて開けていないだけではありませんか? 次回は、上記アパレル企業のような厳しい状況に置かれていなくても重要となる、「営業×開発」のつなぎ方をご紹介します。

 営業×開発のつなぎは、経営者が求める利益創出のネタがどんどん出てきます。ぜひ総務で主導して縁結びをしていきましょう。

秋山 和久
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