コラム

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「環境づくりから一歩踏み込むリアルなコミュニケーションの場づくり」
第8回:現場×現場 リアルなコミュニケーションの場のつくり方

2017年01月13日

 前回は、あるアパレル企業のケースを題材に、営業と開発を結び付けるリアルの場作りについて考えました。前回のアパレル企業のような"きっかけ"がない場合に、どうやって部門間の関係構築の場を設けていくのかをご紹介します。

■ 部門間の関係構築に求められる"変化球"

 前々回のコラムで、ダニエル・キム教授の組織の成功循環モデルをご紹介した際に、「関係の質向上の前提として認知・評価が存在し、その底上げが必要になる」「小さな成功循環モデルを一つずつ起動させ、増やしていく考え方が重要」とお伝えしました。

 特に後段の小さな成功循環モデルの積み上げが非常に大事です。管理部門はどうしても「マス」で平等に、一気に進めていこうとしがちです。ところが、マスに進めようとするとどうしても抽象度も高くなり、かつ、効率的な情報伝達を志向しがちです。コラムの第4回で、経営と現場の直接コミュニケーションを"やっているつもり"の企業事例をご紹介しましたが、単なる情報伝達はコミュニケーションとはいえません。

 情報流通を促進するリアルな場づくりですので、社員に集まってもらい、何らかの問題を考えてもらう必要があります。運動会、懇親会などの社内イベントとの違いはそこにあります。

 一番大事なのは「テーマ」です。関係の質向上の前提になる、まずはお互いの認知・評価が得られればいいので、できるだけポジティブに、対立構図をそのまま反映させるのではなく、"変化球"が有効です。たとえば、「なぜ営業部門と開発部門は対立しがちなのか」という否定的かつ直球の問いでは、お前たちが悪いという話で堂々巡りになってしまいます。関係の質を向上させるどころか、双方の評価は下がるばかりです。

 ここで求められる"変化球"とは、「営業―開発」間の問題を、会社全体の問題に広げることです。「どうしたらもっと会社の中で有益な情報が交換されるようになるか」「社員がお互いに協力し合う会社にするために必要なことは何か」「社員同士の交流が自然と生まれる会社をどうやって作っていけるか」というポジティブな問いかけをします。未来志向になり、原因を追及するものではなくなるため、自分たちが抱えている問題や自分の「非」も認めやすくなります。

■ 対話には"助走"が必要

 具体的にどのような構成・流れにするのか。大きな枠組みとしては、最初は以下で十分です。
(1)趣旨説明
(2)テーマに基づく対話
(3)振り返り

 最初に企画者側がどのような意図なのか、何に協力をしてほしいのか、どこまでできれば十分なのか、対話の中での共通ルールなどを提示します。

 テーマに基づく対話の進め方は、いろいろな技法がありますが、以下の基本形を覚えておくと楽でしょう。

身近な経験 → そのときの感情 → 良かった理由 → いま抱えている問題 → どうしたらよくできるか
 
 これは、体験したことやその解釈を分かち合い(身近な経験→感情)、その経験を一般化(良かった理由)、対処すべき問題への応用(いま抱えている問題→どうしたらもっとよくできるか)を設計したものです。これを数人でやることで、自分の経験も他人の経験も一般化や応用が進みやすくなり、関係構築の前提となる認知・評価を上げやすくできます。

 人はどうしても最初から「重い」話はしにくく、思考が止まりがちです。重い話をするにも"助走"が必要です。できるだけ考えやすい答えやすい投げかけから進めていくとうまくいきます。たとえば、「社員がお互いに協力しあう会社にするために必要なことはなにか」というテーマだったとしましょう。この場合、まずは身近な経験として「公私問わず、部活や学校生活、会社、友人関係、恋愛・夫婦、仕事、お客さまとの関係など、協力し合ってうまくいった経験はありますか?」と尋ねます。

 私の場合は、お客さまから本当に多くの情報・課題・お悩みをご提供いただけた時は必ずお客さまとの協力関係ができて、ご支援の成果が上がります。お客さまというよりパートナーに近い関係ができ、とても心地良くなります。私は、プロといっても、お客さまの情報は基本的にお客さまの方が多く持っていると考えています。お客さまが持っている情報量と私が持っているお客さまの情報量には、圧倒的に非対称性があり、お客さまとできるだけ同じ目線で考えられるまでにならないと、本当に解決が必要な問題までたどり着くことができません。本当に解決が必要な問題が見えなければ、解決手段も定まりません。情報の非対称を極力なくすために、ワークショップをすることもあれば、できるだけ具体的に「○○に関する情報をください」「○○の情報は手元になければ集めてください」「△△の情報はなければひとまず結構です」と要望をお伝えするようにしています。

 ここまでが「良かった理由」となります。
 ここから主題に踏み込んでいきます。準備体操が済んでいますので、たとえば営業と開発でお互いに協力しあえると良いことは何か、といった少し踏み込んだ投げかけをしても、自分や他人の経験談を基に一般化・応用した形で、対立構図ではなく同じ問題を協力し合って解決するスタンスで話し合うことができます。

 先ほどの私の例を題材にしましょう。営業と開発がお互いに協力しあうためにどうしたら良いのか、先ほどの良かった理由に続けて聞かれたとします。

 私なりの答えは営業と開発の情報の非対称性をなくすことが重要であり、自分から聞きに行く、情報を取りに行くことがすべての出発点になろうかと思います。相手の側は、どのような情報を提供すればよいのかイメージがわかないこともあり、必要な情報の提示を求めて行動することがもっとも大事です。つまり、営業側も開発側も、双方に必要な情報を要求するようにしていけると良いといえます。
 上記は私の意見をまとめた形になりましたが、参加者同士の対話の中では、もっといろいろな要素が出てくるはずです。

 一通り対話の区切りがよく時間が来たら、最後には必ず、短時間でも良いので話し合った内容を振り返り、ポジティブな観点で「良かったこと」を一言ずつでも話してもらうようにしましょう。
リアルな場の構成は以上の通りです。

■ 対象者は「挙手制」に

 テーマが決まると、対象者を誰にするかが次の悩みとなります。最初は、ごく限られた少人数でかまいません。ポイントは、対立構図になりやすい「営業」と「開発」そして、少なくとももう一つ別の部門の方に参加してもらうこと。人事でも良いですし、サポート部門でも良いでしょう。

 非公式な取り組みでも良いので、協力を得られやすい人に声をかけて始めましょう。新しい取り組みの場合は、どうしても意図が伝わりにくいですし、自分でも経験したことがないと、やろうとしていることもうまく言語化できません。総務部門のスタッフで仲の良い営業および開発の人を集める形でかまいません。ある企業では、このようにお伝えしたところ、「あまり仲の良い人はいないんです」と寂しい答えが返ってきましたが、その場合は「同期」「サークル」「比較的家が近い」「過去になんらか接点があった」など理由は何でもかまいません。「ちょっとこんなこと考えていて、協力してもらえる?」といえる人から始めましょう。

 ある程度、協力を得られやすい人で「実験」が済んだら、広げていくフェーズに入ります。すでに参加してもらった人から紹介をしてもらったり、公募形式にしたりして進めていきましょう。時間は掛かりますが、基本的には「挙手制」で積み上げていく方が良いです。「指命型」で無理に広げようとすると、嫌々参加する人が多くなってしまい、ポジティブな問いかけも機能しづらくなります。

 ポジティブな問いかけをしていると、場づくりに参加した人の中から、必ず、自分たちの職場、あるいは異なるテーマで、同じような場づくりをしようとする動きが生まれます。あるいは、そこで出会った人同士は、自分の過去の経験やどうしたら良くなるのかというポジティブな思考を交換していますのでお互いの関心事や問題意識を共通認識にできます。なにか困ったことがあったときに、その人たちを媒介にして、部門間での相談が生まれやすくなります。

 営業×開発が交流するリアルなコミュニケーションの場づくりについてご紹介してきましたが、この部門間に限らず、同じ枠組みで応用していくことができます。
 
 次回は最終回です。本コラムでは、「経営―現場」間、「現場―現場」間のリアルなコミュニケーションの場づくりについてご案内をしてきましたが、こうしたリアルなコミュニケーションの場を設定すること自体が難しい!という場合の最終手段をご紹介します。総務のみなさまが「できません!」といえないように外堀を埋めて(?)、本コラムを締めくくります。

秋山 和久
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