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地域活性化に活用できる知的財産〜地理的表示〜第17回

2018年02月15日

 こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。

 前回まで、地理的表示(GI)の登録の効果についてお話ししました。GI登録されたということは、地域産品の品質に関する国のお墨付きが得られたということですから、地域産品にまつわるストーリーや歴史と併せてうまくアピールし、プロモーションをしていけば、GI登録効果を最大限に享受することも可能です。

 今回は、GIに関して最近気になるニュースがありましたのでご紹介します。
 農林水産省が2017年12月15日にGI登録を認めた「八丁味噌」[申請人:愛知県味噌溜醤油工業協同組合(組合員数43社)]に関し、江戸時代からの製法を守る愛知県岡崎市の老舗2社が、使用者から外れたというものです。

■八丁味噌のGI申請から見える問題点

 今回GI登録となった「八丁味噌」の申請人である愛知県味噌溜醤油工業協同組合(以下、「協同組合」)と、老舗2社はそれぞれ「八丁味噌」のGI申請をしていました。しかし、協同組合は生産地を「愛知県」としたのに対し、老舗2社は「岡崎市八帖町」に限定していました。

 農水省は「八丁味噌は愛知県内各地で造られており、生産地が『岡崎市八帖町』だけでは狭すぎる」として2社に再検討を打診しましたが、折り合いがつかなかったそうです。
 結局、老舗2社は申請を取り下げ、協同組合の申請がその後認められ、登録に至りました。

miso.jpg 「八丁味噌」に限らず、今後も同様なことが生じる可能性は十分にあると思います。地理的表示保護制度は、地域団体商標のように独占権としてではなく、地域産品の名称を「地域の共有財産」として保護する制度ですので、申請人も複数の者がかかわる生産組合になります。
 したがって、一生産者が採用する特定の製法が、ほかの生産者にとっては厳しすぎる条件となることもあります。


■申請条件を調整する際の留意点

 このような状況でGI申請をするには、生産地や製法はおのずと最大公約数的なものに調整せざるを得ません。
 つまり、一定の品質基準は満たしながらも、関係生産者が自由に参加できるような申請条件にして、最終的には地域全体の共有財産としてGIのメリットを享受できるように配慮する必要があります。
 したがって、申請条件を調整する過程で、特定の関係者の要望を満たさず物別れする可能性もあると思います。

 特に今後、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)に基づき、一定の産品についてはそれぞれの地理的表示(GI)が相互に保護されるようになります。GI登録はEUへの輸出拡大・売上拡大への大きな弾みになると思います。
 しかし、一方では、さまざまな利害も絡んでくることが予想されます。したがって、GI申請を行う際には、これらの利害関係を取りまとめるリーダーが必要になります。

 GI申請の難しさの一つに、関係者の合意を得ることがありますが、地域の共有財産を保護するという最終目的を念頭に、地域活性化に役立ててほしいと思います。

鈴木 徳子
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