月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

総務パーソンが押さえておきたい1月のトピックス

2016-12-09 10:30

2017.January

■法務

執筆/小沢・秋山法律事務所 弁護士 香月裕爾

●定年後再雇用における賃金減額の逆転判決

 2016年5月13日、東京地裁から定年後の有期契約労働者に対する賃金の減額は違法との判決が出されました。本件は定年退職した原告3人が、退職後被告会社と有期労働契約をした際に、年収が3割程度減少したことに不服を持ち、労働契約法20条に反していることから、差額の支払いなどを求めたものです。ところが被告会社が控訴したところ、控訴審である東京高裁は、2016年11月2日に地裁判決を取り消し、原告らの請求を棄却する逆転判決をいい渡しました。労働契約法20条とは、有期労働契約労働者の労働条件が、期間の定めのない労働契約者の労働条件と相違する場合、業務内容および業務に伴う責任の程度、職務の内容および配置の範囲、その他の事情を考慮して不合理であってはならないと規定しています。
 東京地裁の判決は、原告らの職務内容などに変化がないにもかかわらず、賃金が減額されたことに対して、業務内容や責任が同じであるのに、会社がコスト削減のために賃金に差異を設けたことは不合理としました。
 他方、東京高裁は、企業がコストの増大を避け、若年層を含めた安定的な雇用実現のため、定年後の再雇用における賃金減額の正当性を認めた上で、定年前と同一の職務内容であっても、賃金の一定程度の減額は、社会的にも認容されていると相当性を認めたのです。
 
 

■労務

執筆/斉藤社労士事務所 特定社労士 斉藤貴久

●特別条項のボーダーライン

 2016年10月14日、厚生労働省の「仕事と生活の調和のための時間外労働規則に関する検討会」において、36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)の実態調査結果に関する資料が配布されました。これによると、1か月の特別延長時間について、延長可能な時間を「70時間超」とする企業の割合は65.8%で3分の2、「80時間超」とする割合は17.0%のため、この間に一定の境界線があると思われます。月の時間外労働80時間超が疑われる場合、すべての事業所が労働基準監督署の臨検対象となるため、36協定の特別条項でも「80時間」を目安とする企業が多いと推測されます。
 

●定年を60歳としない企業が約2割 

 厚生労働省は、「高年齢者の雇用状況」の集計結果を毎年公表しています。これによると、今回の結果は、厚生労働省に雇用状況を報告した従業員31人以上の企業15万3,023社の状況を集計したものです。65歳までの雇用確保措置として「定年制」を廃止する企業は2.7%、「定年の引き上げ」は16.1%となっており、合わせて約2割の企業が、60歳定年制とはなっていません。依然として、継続雇用制度を選ぶケースが多くありますが、60歳定年制から少しずつ変化してきていることをうかがわせます。
 
 

■税務

執筆/税理士法人AKJパートナーズ

●少額減価償却資産に関する特例の改正

 中小企業者などが、取得価額が30万円未満である減価償却資産(少額減価償却資産)を取得して事業用に供した場合、一定の要件の下に、取得価額に相当する金額を損金の額に算入できる制度があります。2016年度税制改正において、2016年4月1日以後に取得する少額減価償却資産については、常時使用する従業員の数が1,000人以下(従業員数基準)という要件が追加されました。したがって、資本金が一億円以下でも常時使用する従業員が1,000人を超える場合には適用できなくなりました。
 

●共通報告基準に基づく自動的情報交換

 外国金融機関などを利用した国際的な脱税や租税回避に対処するため、2014年に、OECDは非居住者にかかわる金融口座情報を税務当局間で自動的に交換するための国際基準「共通報告基準(CRS)」を公表しました。
 各国の税務当局は、自国に所在する金融機関などから、非居住者が保有する金融口座情報の報告を受け、その非居住者の居住地国の税務当局に対し情報を提供。国内に所在する金融機関などは、2018年以後、毎年4月30日までに特定の非居住者の金融口座情報を所轄税務署長に報告。報告された金融口座情報は、租税条約などの情報交換規定に基づき、各国税務当局と自動的に交換されます。
 
 
『月刊総務』2017年1月号P7より転載