「人材流出企業」にならないためのオンボーディング 組織になじませる力は中途採用者にこそ必要
少子化で新卒採用が厳しくなる時代の人材確保は、中途採用が頼りだ。すでに転職は当たり前になり、複数の会社でキャリアを重ねることが一般的になりつつある。しかし、「どうせすぐ転職するのだから」と手をこまぬいていては、人材流出企業になってしまうだろう。甲南大学の尾形真実哉教授に、中途採用者を定着させるためのオンボーディングについてうかがった。
取材・文◎武田 洋子
転職がキャリア形成の前提となる時代
2019年に企業に就職した人材の中で、転職者は全体の6割強を占める(図表1)。転職はもはや当たり前の時代だ。尾形真実哉さんが教授を務める甲南大学の教室でも、就職活動を控えた学生の意識は変化を見せ、今や転職をキャリア形成の前提とし、企業には教育制度やサポートの充実を求める傾向が高いという。
教授
尾形 真実哉さん
2007年神戸大学大学院にて博士(経営学)取得。同年4月より甲南大学経営学部経営学科専任講師。准教授を経て2015年より現職。専門分野は組織行動論、経営組織論。主な著書に『組織になじませる力』(アルク)、『若年就業者の組織適応―リアリティ・ショックからの成長―』(白桃書房)、『中途採用人材を活かすマネジメント―転職者の組織再適応を促進するために―』(生産性出版)がある。
「人材流出企業」にならないためには、万全のサポートが不可欠なのだ。尾形さんは、オンボーディングを「入社者を組織になじませる力」と定義する。これは、入社する側にも必要な力(組織になじむ力)だ。
オンボーディングのスタート地点は研修だが、新卒採用と中途採用では、必要な内容が異なる。ここでは中途採用に焦点を当て、さらには飲み会などインフォーマルなコミュニケーションも含む広義のオンボーディングのうち、フォーマルで組織的な施策に絞って語っていただいた。
図表1:わが国における入職者の状況
(※画像クリックで拡大)
新卒とは違う立ち位置 中途入社者の苦しい環境
オンボーディングのゴールが「組織になじむこと」であることは、新卒入社者も中途入社者も同じだ。組織はせっかく採用できた人材に長く働いてほしいし、入社者の方も最初から転職を考える人はまれであり、できれば長く働きたいのが本音だ。会社への愛着なしに長く働き続けるのは難しく、研修では、高いパフォーマンスを発揮してもらうだけでなく、愛社精神を醸成することも目指したい。
そのためのアプローチは、実は新卒入社者と中途入社者とでは異なる方法が適している。なぜなら、彼らは最初の立ち位置が大きく違うからだ。新卒入社者は基本的に就業経験がないので、企業としてもゆっくり育てる気構えができている。ミスも許され、結果が求められるまではかなりの猶予がある。一方、中途入社者は即戦力だと思われているので、既存従業員からすればライバルでもあり、最初からハードルがかなり高い。
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