総務パーソンにとって、コロナ禍のこの2年はどのような日々だったろうか。テレワークの推進、オフィスの見直しなど、「守りの総務」の出番が多かったといえる。戦略総務の実現は後退したのか、今後の総務はどうあるべきか、戦略総務研究所所長の豊田健一に問う。
文◎宮本 優子
聞き手◎『月刊総務』編集長・薄井 浩子
コロナ禍で増した総務の重要性
薄井 今年1月に『月刊総務』が行った調査では、「新型コロナウイルス感染症拡大に対応するため、2020年2月以降に新たに策定・改定した対策」として、回答者の約半数が「テレワーク制度の整備」を挙げていました。また、約2割の人が「情報の電子化(ペーパーレス化等)」に取り組んだと回答するなど、政府の方針に従って、在宅勤務(テレワーク)の推進に奔走したことがうかがえます。
コロナ禍で、総務の重要性は増していると思いますが、主にどの領域で総務の存在意義は高まっているのでしょうか。
戦略総務研究所 所長
豊田 健一
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシア(FOSC)の代表理事として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。
豊田 1つは、「働く場の多様性の構築」です。それまでは、育児・介護中の社員を中心とした人事制度としてのテレワークであったものが、全社員を対象とした「働く場」の環境整備に変わったことで、まさに総務の出番となりました。
また、テレワークが長引くにつれ、コワーキングスペースの契約など、サードプレイスの制度設計も総務の仕事に加わりました。これはどこに設置するのか、見極めが必要になります。さらに、並行して出社率の設定やオフィス面積の縮小の検討。いずれも「やらざるを得ない」業務であり、未体験ゾーンの業務であった総務も多いでしょう。そういう意味では、今の総務はなかなかしんどい状況にあるといえますね。でもそれは同時に、主体性を持って活躍できる場が増えたと、ポジティブに捉えることもできます。
2つ目は「BCPとしてのパンデミック対策」です。これは1月の調査でも、道半ばという状況でした。BCPは事業とともに構築するものですので、総務は全社の調整役として動くことになります。特にオミクロン株に移行してきてからは、出勤率より欠勤率が問題となっています。どの程度の欠勤率であれば事業運営に支障が出ないかに、着目していかなければなりません。
そして、3つ目は「脱炭素」です。これも、特に中小企業は総務が中心となって取り組むべきテーマでしょう。脱炭素、SDGsは人類共通の課題としての取り組みです。事業所ごとの施策は現場で遂行するわけですが、本社周りの、たとえば再生化エネルギーといったことは総務主導のテーマです。他方、脱炭素、SDGsが企業活動のみならず市民活動として盛り上がりを見せるために、総務は社員を媒介として家庭までにも影響を与えられるのではないかと考えています。
VUCA時代にあって、こうした広範で事業活動に影響を与えるリスクや課題について、総務パーソンは自覚しているのか、問題提起したいと思っています。
薄井 今年2月に実施した「総務の仕事について」の調査で「新型コロナによって総務の仕事内容に変化はあったか」を聞いたところ、「変化はない」と回答した人は1割未満となり、回答者の約8割が「これまでにない対応が発生した」と答えています(図表1)。また、約4割の人が「創意工夫が必要な仕事が増えた」とも。この2年、総務は「やらざるを得ない」「守り」が増えているという印象でしょうか。
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