戦略総務のためのマインドセット

ドラッカーが考える、スタッフ部門・総務の成果とは?

株式会社月刊総務 代表取締役社長/戦略総務研究所 所長/FOSC 代表理事/一般社団法人ワークDX推進機構 理事 豊田 健一
最終更新日:
2022年11月29日

今回は「スタッフ」部門に位置付けられる総務の役割、仕事について考えていきます。

スタッフとは何者?

総務は「間接部門」や「バックオフィス」といわれることがあります。さらに、レイヤーを「ライン」と「スタッフ」に分けると、総務は「スタッフ」に位置付けられます。

Wikipediaでは「ラインアンドスタッフ」を下記のように説明しています。

組織論においては、ラインアンドスタッフ型組織において、実務を担当するラインに対し補佐的な役目をスタッフと呼ぶ。これは軍隊のスタッフ(参謀)を一般化した概念である。企業では、ラインは商品を直接製作・販売・営業するのに対し(購買物流、経理事務等のサービス部門もラインに含まれる)、スタッフはその商品の企画や、購買層の調査、それによって得られた情報アドバイス、計数管理、人事、法務、総務等を行い、または直接的な制作の補佐や助言をする。会社の規模が大きくなってくるとスタッフが必要となるが、通常、スタッフ部門はライン部門から独立しており、また、両部門の関係は対等なものである。利益を生み出すプロフィット部門(ライン部門)に対してノンプロフィット部門(スタッフ部門)と呼ばれる。

端的に表現すると、効率良い組織運営のために、前線で戦う組織と、後方支援する組織とに分業するということでしょう。

さらに、企業組織においてスタッフは、経営者の後方支援としての「ブレーン」と、現場社員の後方支援としての「サービス・スタッフ」に分けることができます。企業規模が大きくなればなるほど、ブレーンとサービス・スタッフに分化していきます。一方、企業規模が小さくなると、ブレーンとサービス・スタッフは同一の組織になるでしょう。

みなさんの組織は、ブレーンを兼ねているでしょうか? どちらが良い、悪いというわけではありませんが、サービス・スタッフとしての機能のみでは、どうしても「いわれたことだけやるスタッフ」になりかねません。ブレーン(戦略立案)としての機能があって初めて、「仕掛けるスタッフ」「会社を変えるスタッフ」の役割を果たすことができます。

スタッフである総務の仕事の成果

ブレーンにせよ、サービス・スタッフにせよ、スタッフはラインに貢献してこそ、存在価値があります。自部門だけのためにがんばったとしても、それでは意味がありません。誰に対して仕事をするのか、誰が自分の顧客なのかをしっかりと認識する必要があります。ピーター・ドラッカーも、スタッフについて次のように記しています。

スタッフの成果とは、現業の人間の効率を上げ、生産性を上げることである。スタッフは、現業の人間に対する支援部隊であって、現業の人間に代わるものではない。

つまり、支援という活動を通じて現場に貢献することが、スタッフの成果であるといっているのです。

そして、静岡大学大学院の舘岡康雄教授は、支援を「相手から出発して自分を変える行動様式」と表現しています。この場合の「相手」とは、現場従業員、経営者、企業を取り巻く全てのステークホルダーであり、外部環境と内部環境の両面から捉えることが必要です。

外部環境の変化、直近ではコロナ禍による働き方の変化への対応は、まさにスタッフである総務の仕事でもありました。変化への対応の最前線に立つスタッフ自身が、変化しないままで対応できるとはとても思えません。広い意味で、「相手から出発して自分を変える行動様式」がとても重要となります。

当初は良いと思われた施策も、環境変化により、時代遅れとなったり、リスクとなったりすることもあります。現場からの問い合わせや依頼事項についても、総務の立場を振りかざすのではなく、依頼の裏に隠れている意図を読み取り、時代に即した対応をするために、総務自身が変化して対処することが必要なのです。

私がこれまで何度もお伝えしてきた「戦略総務」の定義も、このことに当てはまります。スタッフである総務には「変化」が重要である、ということをご理解いただけたらと思います。

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