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大手総合重工業メーカーで勤務していた山下公彦さんは、故郷の石川県で金属部品加工会社の事業を承継した。創業のために準備した期間は1年。後継者人材バンクに登録してからはわずか10か月というスピード承継だった。大企業を早期退社し、個人で事業を引き取るという選択肢について、山下さんにうかがった。
取材・文◎武田 洋子
公的支援をフル活用したスピード承継
山下公彦さんは大手総合重工業メーカーで30年以上、ものづくりに従事してきた。東京で暮らしていたが、早期退職制度を利用して故郷の石川県で創業することを考え始めたのは2018年の夏。そこから1年間は準備期間として経営や法務を学び、同じように事業承継を志す人向けのオンラインサロンで情報収集したり、中小企業の経営者になった会社のOBに話を聞いたりしていた。
石川県の事業承継・引継ぎ支援センターの後継者人材バンクに登録したのは、翌年の9月。ちょうどその直前に、同センターに第三者承継支援を相談していた会社があった。同県で金属部品加工業を営む、創業60年の株式会社新家製作所だ。
新家製作所は経営者が後継者を決めないままに亡くなり、危機に直面していた。銀行から破綻懸念先とみなされ、月々の借入金返済が厳しくなっていたところに、コロナ禍が重なったのだ。業績は悪化し、廃業という選択肢も現実味を帯びてきた同社は、経営アドバイザーの助言に従い、第三者へ事業承継する道を模索する。条件を見て興味を示したのが山下さんだ。
「当初、新家製作所は法人への譲渡を希望していましたが候補先が現れず、個人でも、ということになったようです。それで、前職で生産部門を一通り経験している私に白羽の矢が立ちました。12月末から計6回、週末ごとに帰省して先方のトップと面談。譲渡条件でもかなりこちらの希望に沿って調整していただき、翌年3月に基本合意契約を結んでいます」
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