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福井県の子供たちは「ホリタ」の名前に親しんでいる。小学校や中学校で、日常的にホリタ文具店の商品に触れてきたからだ。しかし、そんな老舗であっても小売業界の厳しい現状にはあらがえなかった。3代目社長を継ぎ、新たな事業展開へかじを切った堀田敏史さんに、その熱い想いをうかがった。
取材・文◎武田 洋子
証券会社で経営観を養い家業の変革に挑む
東京の大学に通う堀田敏史さんが実家の両親から「家に戻ってくれ」といわれたのは、証券会社の最終面接直前のことだった。実家は、祖父母が開業した文具店。それまで両親に「家業を継ぐように」といわれたことは一度もなく、初めて業績がそこまで傾いているのかと驚いた。地元の消費者の間では知名度の高い「ホリタ」だったが、それでも少子化やペーパーレス、ECの波にのまれかけていたのだ。しかし堀田さんは、首を縦に振らなかった。
「将来的には実家を継ぐことになるにせよ、まずは自分が選んだ道で精いっぱいがんばりたかったのです。それに、子供が家業を継ぐというと同じ業界で経験を積ませるのがいまだに一般的ですが、それではイノベーションは生まれないとも感じていました。経営観を身に付けるためにも、金融業界で成果を出したいと伝えました」
堀田さんが地元に戻ったのはその4年後。入社した証券会社で「社長賞」という成果を出しての決断だった。今から13年前のことだ。当時の店のようすを、堀田さんは今も鮮明に覚えている。社内にパソコンは2台のみ、膨大な領収書や納品書はほとんどが手書きだった。
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