総務の引き出し(ハラスメント)

どんな言動が「パワハラ」と認定されるのか……? 4つの視点で判断する「適切な指導」との境界線

株式会社エス・ピー・ネットワーク 総合研究部 主幹研究員 杉田 実
最終更新日:
2025年09月18日

企業等における危機管理を専門とする株式会社エス・ピー・ネットワークの研究員が、「HR(ヒューマンリソース)リスクマネジメント」の観点から職場のハラスメントについて解説していく本連載。今回は、上司から部下に対するパワーハラスメント(以下、パワハラ)について取り上げます。

パワハラの定義と企業に求められる措置

初めに、パワハラの定義を簡単に振り返ってみましょう。パワハラは、労働施策総合推進法第30条の2第1項において、「職場において行われる(1)優越的な関係を背景とした言動であって、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)労働者の就業環境が害されるもの」と定義されており、(1)から(3)までの3つの要素を全て満たすものとされています。

なお、「(2)業務上必要かつ相当な範囲」については、社会通念に照らして、業務上明らかに必要のない言動であるか等で判断されるため、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワハラには該当しないとされています。職種や業務内容などによっても基準が変動しますので、一概に「これをやったらパワハラ」ということができないところがパワハラの判断の難しさでもあります。

たとえば、けがや命の危険を伴う作業場で、かつ大きな声を出さないと聞こえないような場合に危険を回避するためにとっさに怒鳴ることは、業務上の必要性・相当性があると考えることもできますが、静かなオフィスで資料に1か所誤字があっただけで怒鳴ることは、業務上の必要性・相当性があるとは考えにくいでしょう。極端な例ですが、同じ「怒鳴る」という行為でも、状況により判断が変わるということです。

「(3)労働者の就業環境が害される」についても、平均的な労働者の感じ方を基準として判断されますので、当該言動を受けた労働者が「パワハラだ」と感じたからといって、それのみをもって即パワハラと認定されるわけではないことに注意が必要です。

本稿では割愛しますが、厚生労働省では、パワハラの代表的な言動を「1.身体的な攻撃」「2.精神的な攻撃」「3.人間関係からの切り離し」「4.過大な要求」「5.過小な要求」「6.個の侵害」の6つの類型に分類していますので、そちらも併せて参考にしてください(ハラスメント対策の総合情報サイト「あかるい職場応援団」)。

※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。

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プロフィール

株式会社エス・ピー・ネットワーク 総合研究部 主幹研究員
杉田 実

大学を卒業後、新卒で株式会社エス・ピー・ネットワークに入社。入社後は、総合研究部で情報漏えい事案対応などのクライシス対応支援や、内部通報にかかる調査・ヒアリングなどの企業危機管理コンサルティングを担当。セミナー・研修では、コンプライアンスセミナー、ハラスメント防止セミナー、新入社員研修などを幅広く手掛ける。

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