「ストレスコーピング」でストレスと上手に付き合う

仕事のイライラ・モヤモヤ、解消するには? 「ストレスコーピング」でストレスに強い人になる

医療法人ひつじクリニック 副院長 市村 麻衣
最終更新日:
2024年07月12日
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「令和4年労働安全衛生調査」によれば、現在の仕事に関することで強い不安やストレスとなっている要因がある労働者は82.2%に上り、前年と比べて約1.5倍も増加しています。仕事をする上でストレスは避けて通れない問題といえるでしょう。今回は、ストレスへの対処法である「ストレスコーピング」について2回にわたり解説します。

ストレスコーピングとは

よく「仕事でストレスがたまって疲れた」「趣味でストレスを発散する」などといいますが、そもそもストレスとはどのようなものでしょうか。元来「ストレス」は物理学において物体に力をかけることで生じるゆがみを意味する言葉でしたが、カナダの生理学者ハンス・セリエが「外部からのさまざまな刺激や負荷(ストレッサー)により人間の心身が影響を受けた状態」を「ストレス反応」という概念で表しました。

ストレッサーには物理的ストレッサー(温度・騒音など)、化学的ストレッサー(酸素・薬物など)、生物学的ストレッサー(炎症・感染など)、そして心理社会的ストレッサーがあり、一般的に「ストレス」と呼ばれるものの多くは心理社会的ストレッサーを指しています。

ストレッサーにさらされるとストレス反応が生じますが、同じストレスであっても感じ方や対処の仕方によって起こる反応はさまざまです。これに対しアメリカの心理学者ラザルスは、個人がどのようにストレスを捉えるかという認知的評価とどうやってストレスに対処するかというコーピングによってストレス反応が異なるという「ストレス理論」を提唱しました。

一般的な心理的ストレス反応としては抑うつ、不安、悲しみ、興奮、緊張、怒りなどが挙げられ、このような状態が続くと幸福感が失われたり、自尊心や自己効力感が低下したりして、うつ病や不安障害などのメンタルヘルス不調に至る原因ともなり得ます。

身体的にもどう ・過呼吸・発汗などが出現し、体を臨戦状態にして「Fightor Flight(戦闘もしくは逃走)」というコンディションでストレスに対応しようとします。これは短期間であれば有用な反応ですが、長期間続くと疲弊しストレスへの適応が破綻して、高血圧や胃炎、心筋梗塞などが生じたり、飲酒や喫煙量増加、ギャンブル依存、過食など、心身に悪い行動に走ってしまったりします。

私たちがストレッサーと直面したとき、まず「それが自分にとってどのくらい有害か、脅威となるか」を判断し(一次的評価)、さらに「それは自分が対処できるものでコントロールが可能か」という判断を行います(二次的評価)。これまでの経験や価値観、自分の能力などを基に、ストレッサーの種類、強さ、解決の可能性などを評価し、今の自分にとって対処が難しそうだと判断すると上記で述べたような心理・身体的ストレス反応が生じます。これに対してストレッサーの解決などによって乗り切ろうとする行動がストレスコーピングです。対処行動がうまくいけばストレス反応も過剰に起こらずに済むため、上手なコーピングがストレス対応のカギとなります(図表1)。

図表1:コーピングの効果

出所: 「Lazarus, R., and Folkman,S. (1984). Stress, Appraisal and Coping. New York, NY: Springer Publishing Company.」を参考に筆者が作成
(※画像クリックで拡大)

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著者プロフィール

m-ichikawa

医療法人ひつじクリニック 副院長
市村 麻衣

精神科専門医・指導医、精神保健指定医、日本医師会認定産業医。クリニックでうつ病などの外来診療に携わるかたわら、企業で職場のメンタルヘルス相談および対策を行う。上司や人事総務、産業保健スタッフなどさまざまな立場の人たちと協力し、働く人が良好なメンタルヘルスを維持して活躍できる組織づくりをサポートしている。

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