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国際ビジネス契約書のポイント【第2回】国際ビジネス契約における契約書の重要性(その2)

2019年11月08日

 前回に引き続き、国際ビジネスにおける契約書の重要性について解説していきます。

■適用法と紛争解決機関・場所

 国際ビジネスでは、「そもそもこの契約にはどの国の法律が適用されるのか」という点から問題になってきます。この点について契約書で合意しないままトラブルになると、適用法をどの国の法律にするのか、というところから争いになる可能性があります。

 そして、適用法に劣らず重要なのが紛争解決機関についての定めです。「どこで紛争を解決するか」について合意しておらず、結果として相手の国で裁判をする場合、手続きのコストや裁判の予測可能性等、さまざまなデメリットが生じる可能性があります。また、仮に日本で裁判をして勝訴判決を得ても、日本の裁判所が出した判決に基づく強制執行を認めていない国も相当数あり、取引相手の財産がそのような国にしかない場合、判決は画餅にすぎません。

 ですから、これらのデメリットを回避しやすい商事仲裁(詳しくは別の回で解説します)が有力な選択肢になりますが、仲裁手続きは契約当事者が仲裁を利用すると合意したときのみ選択できる手続きです。そのため、契約の時点で紛争解決方法をどのようにするか判断し、契約書に記載しておく事が必要になります。

■詐欺防止法・完全合意条項の存在

 英米法の国では「詐欺防止法(statute of frauds)」という法律があり、一定の種類の契約は書面で締結しなければそもそも無効になってしまいます。

 また、国際ビジネスにおける契約書ではしばしば「完全合意条項(Entire Agreement Clause)」、すなわち、契約書に明記されていない交渉内容や口約束はすべて無効であるという条項が定められています。このような条項がある場合、契約書に記載のない合意は全て排除されてしまいます。前回の内容にも関連しますが、このような条項がある場合、自社の権利や取引相手に守らせたい内容は必ず契約書内で明記する必要があります。

■まとめ

 連載の最初のテーマとして、まずは2回にわたり契約書の重要性についてご説明しました。まだまだ語り尽くせていませんが、海外企業との取り引きに「何か起きてから話し合えばよい」というスタンスで臨むと、実際にトラブルが生じたときには莫大なコストとリスクが生じてしまいます。国際ビジネスの世界では、国内取引にも増して契約書が重要だということを意識しましょう。

 契約交渉が「戦い」の側面を持つことは確かですが、同時にお互いがこの取り引きを通じて実現したいものは何か、お互いの重視しているポイントは何かを理解するチャンスでもあります。契約交渉のプロセスを、相手や相手の姿勢を理解するための絶好の機会だと捉えていただければと思います。

 次回からは、国際ビジネス契約書で一般的に定められる条項等について、具体的な文例を見ながら解説していきます。

安田 健一
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