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国際ビジネス契約書のポイント【第3回】前文の構成と意義

2019年11月29日

 英文契約書に慣れていないと、出だしから記載の意図がわからず戸惑ってしまうこともあるかと思います。今回は英文契約書前文の構成とその内容を説明するとともに、英文契約書に共通の作法である「定義付け」と「here/there」についても解説します。


BASIC SALES AGREEMENT

This Basic Sales Agreement (this "Agreement") is made as of XXXX (the "Effective Date") between [A], a company organized and existing under the laws of Japan having its head office at [XXXX] ("Seller") and [B], a company organized and existing under the laws of the state of New York having its head office at [XXXX] ("Buyer").

RECITALS:

Buyer desires to purchase certain products hereinafter set forth from Seller based on Individual Contracts (as defined below), and Seller desires to sell such products to Buyer in such manner;

NOW, THEREFORE, in consideration of the mutual covenants and agreements herein contained, the parties hereto execute this Agreement.

売買基本契約書

本売買基本契約書(以下「本契約書」という。)は、日本法に基づいて設立され存続し、XXXXに主たる事務所を有するA社(以下「売主」という。)とニューヨーク州法に基づいて設立され存続し、XXXXに主たる事務所を有するB社(以下「買主」という。)との間でXXXX日(以下「効力発生日という。)に締結される。

前文

買主は本契約で以下に定めるある商品を個別契約(以下に定義する)に従い売主から買うことを希望し、売主は当該商品を当該方法で買主に売ることを希望する。
よって、本契約の当事者は、本契約に含まれる相互の約定及び合意を約因として、本契約を締結する。


■頭書と前文

 頭書きでは当事者の特定と契約書そのものの定義付け(定義付けについては以下で詳しく述べます)を行うことが通常です。国際的な契約では、各当事者がそもそもどの国で設立された法人なのかも明記します。また、契約書の作成日付も頭書で記載することが多いですが、契約締結日と効力発生日が異なる場合もあるため注意が必要です。

■約因

 英米法独自の概念として「約因(consideration)」があります。例外もありますが、契約では両当事者間に何らかの対価関係(約因)が必要で、これを欠く合意には強制力がないとされます。英米法の契約書では、冒頭において双方にとっての約因があることを明記することが通常ですが、契約書上明記がなくても実際に備わっていればよいので、通常の取引契約で約因が問題になることはありません。問題になりやすいのは、すでにある契約書を一方にのみ有利に修正する場合等です。

■定義

 英文契約では、いったん定義付けられた単語は頭文字や単語全体を大文字にします。文中で頭文字が大文字の単語が出てくれば、それは固有名詞か、(ミスでない限り)どこかで定義付けられた単語のはずです。長い契約書では、第1条や第2条を定義のための条文として、契約書内で用いる各単語の定義を記載することもあります。

■here there

 これも初めて英文契約書を見ると混乱するポイントですが、hereは「この契約書」または「この条項」、thereは「この契約書ではない当該別のもの(その前に登場した単語や文)」を指します。さらに、in、 to、 ofといった前置詞と組み合わさって1つの単語を形成します。

(例)
hereof = in this Agreement = この契約書の
from the Effective Date and thereafter = from the Effective Date and after the Effective Date
= 発行日およびそれ以降

 慣れてくればほとんどの場合は戸惑わずに意味をつかめるのですが、特にthereが何を指しているのかわかりにくい文章もあります。また、自分で条項を作成する際には、これらの単語を使わなくても作成は可能なので、「the parties hereto(本契約の当事者)」のような定型的な場面以外は使わない方が無難です。

 実際の英文契約書の中身として、まずは今回前文をご紹介しました。最初は戸惑うかもしれませんが、英文契約書は(むしろ日本語の契約書よりも)定型的なパターンがあり、回数をこなすごとに対応は必ず楽になっていきます。1件1件誠実に取り組んで、スキルアップしていきましょう。

安田 健一
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