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国際ビジネス契約書のポイント【第7回】紛争解決条項(仲裁 その2)

2020年06月18日

 今回は、実際の仲裁条項の例を確認した上で、仲裁条項を定めるときの注意点を紹介します。


Arbitration

All disputes, controversies or differences arising out of or in connection with this contract shall be finally settled by arbitration in accordance with the Commercial Arbitration Rules of The Japan Commercial Arbitration Association. The place of the arbitration shall be Tokyo, Japan. The arbitration shall be conducted in Japanese language. The award of the arbitration shall be final and binding on the Parties. Judgement on such award may be entered in any court having jurisdiction thereof.


仲裁

この契約から又はこの契約に関連して生ずることがあるすべての紛争、論争又は意見の相違は、一般社団法人日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従って仲裁により最終的に解決されるものとする。仲裁地は日本国東京とする。仲裁は日本語で行われるものとする。仲裁裁定は最終的なもので当事者を拘束するものとする。仲裁裁定における判断は管轄権を有する裁判所における執行判決を得ることができる。


■仲裁機関のモデル仲裁条項を検討の出発点にする

 前回の記事で説明したように、仲裁は当事者の「合意」があって初めて実施できる手続きです。そのため、仲裁条項を定めるときに、もっとも避けるべき事態は、仲裁条項が有効な合意として認められないことです。

 実際に仲裁条項を定めるときには、仲裁地の国の代表的な仲裁機関を実施機関として定めることが多くなるでしょう。仲裁機関は一般的にモデル仲裁条項を公開していますので、それを基に必要な修正を加えるとよいでしょう。

■「仲裁地」とは

 少し難しい概念になりますが、仲裁地は、どこで仲裁の手続きを行うかではなく、「どの国の仲裁法に基づいて仲裁手続きを行うか」という概念です。

 実際には、A国を仲裁地として(A国の仲裁法に従い仲裁を行うこととして)A国にある仲裁機関が仲裁を実施する場合、手続きもA国で行うことが多くなりますが、当事者間で合意をして、手続きは異なる国で実施することも可能です。

■仲裁地・仲裁機関の取り合い

 国際的な契約では、当事者双方が、自国を仲裁地とし、自国の仲裁機関での手続きを定める仲裁条項を希望することが通常です。仲裁法の理解や仲裁機関での手続きへの慣れ、専門家の探しやすさ等、一般的には自国の仲裁機関で手続きを実施することによるメリットが多数あるためです。交渉力に差がある場合は一方当事者の希望通りの仲裁条項で合意することもありますが、双方の交渉力に大きな違いがない場合、「落とし所」をどうするかが問題になってきます。

(1)ほかのポイントを譲る代わりに仲裁条項については自社の希望を受け入れさせる
(2)どちらの国でもない第三国での仲裁を定める
(3)場合分けをして、仲裁を申し立てられた側の国にある仲裁機関で仲裁を実施することとする
(4)「仲裁地」は相手国(例:ヨーロッパ)となっても、せめて「仲裁手続きを実施する地」は日本やアジアとする

 以上のような交渉テクニックがありますが、唯一の正解といったものはなく、悩ましいポイントです。

安田 健一
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