コンプライアンスという言葉は「法令遵守」と訳されることが多く、会社は法令に則った運用をすることが求められている。会計や財務などの分野ではコンプライアンスはかなり浸透しているが、労務の分野ではまだまだコンプライアンスという視点は弱く浸透不足は否めない。
しかし、会社が守るべき労務に関する法律分野は労働基準法をはじめとし、育児・介護休業法や高年齢者雇用安定法、男女雇用機会均等法、最低賃金法など種々様々である。
また、平成20年に入り、労働契約法の施行やパートタイム労働法の改正など会社が遵守しなければならない法律は増え続けている。この状況からしても会社における労務コンプライアンスは益々その必要性に迫られている。
会社の労務コンプライアンスの取り組みとしては、やはり会社の憲法とも言える「就業規則」の内容が、労働基準法などと照らし合わせて法令遵守となっているか確認する必要がある。
確認の際には、就業規則に必ず記載しなければならない絶対的必要記載事項である「始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇、賃金の決定、計算及び支払い方法、賃金の締め切り及び支払いの時期、昇給、退職に関する事項」などは特に注意深く、次いで社員全員に適用されるような相対的必要記載事項を確認する。
また、何年も就業規則の見直しや変更をしていない場合は、近年の育児・介護休業法や高年齢者雇用安定法などの改正内容をしっかり把握し、すぐに検討・修正作業に入る。就業規則の他、賃金規程や育児・介護休業規程、退職金規程などの諸規定も含め、定期的に確認(監査)するような社内スケジューリングと体制を整えることも、コンプライアンスへの取り組みの一環として検討する必要がある。
コンプライアンスの観点から労働基準監督署から是正勧告が多い事項について重点的に確認することも重要である。労働基準監督署による是正勧告で多い事項として残業代の不払いがあるが、会社として適正な労働時間を把握し、適正な割増率で残業代を計算しているか、また基本給に数時間分の残業代相当分が含まれている場合、明確な計算方法と金額が分かるようになっているかなど、合法的な体制になっているか検討してみる必要がある。
また、近年問題の多い管理監督者(時間外・休日労働をしても残業代を支払わなくてもよい者)の取り扱いについても本当に経営計画に参画するような決裁権をもった者だけを対象範囲としているかなど再確認が必要である。
(協力: 有限会社 人事・労務)