株式総会における総会事務局とは、当日議長の後ろに弁護士と共に臨席し、議長の議事進行の手助けをする担当で、総務、人事、経理、財務、経営企画の管理部門や事業企画、営業、生産、技術の課長クラスで、最も該当業務に精通している者を選出。
事前に株主分析をしておき、各担当は株主からの質問に対するために必要な資料を持ち込む。また、想定問答集を各担当者に割り振り、その質問が発せられた場合は、その回答シートを管轄の担当者から素早く出せるようにしておく。
総務部の担当者の当日運営は議事進行を助ける役割に徹し、動議対応、株主の発言や言動に対して、議長にしかるべき発言をしてもらうように「発言カード」を弁護士との瞬時の判断により議長に差し入れることと、その他の各担当者より出される質問の回答内容を議長に伝達する業務を行う。
但し、議長へ指示する場合は、当然、弁護士の確認をした上で行う。総会終了後、総務の担当者は総会議事録を作成する。
総務の株主総会担当であれば、株主総会に関する商法の規定についてある程度の理解が必要である。議長への指示出しは全て商法の規定に基づき行われる。
3月決算で6月末に株主総会を開催する場合であれば、4月20日以降に実質株主を含めた株主が確定する。
証券代行より、株主名簿を受け取り、安定株主を推定する作業が株主分析である。創業一族やその親族関係、社員株主や持株会、取引先や金融機関などを安定株主、つまり、委任状や議決権行使書での賛成票として返送または出席が予想されるものである。
招集通知を発送して、翌3日後くらいから返送されてくる。返送状況の最新情報を常に把握しておき、安定株主と想定される株主より返送されてこない場合は、返送を依頼するか当日出席を依頼する。当日までに過半数を固められるように事務局としては努力する。
毎年の返送状況や当日の出席状況は記録として残しておき、次回以降の対策データとする。
当日、事務局の席に必要な書類や書籍は以下の通り。
株主総会当日、事務局としては、それぞれの役割を明確にしておき、やるべきこと、対応すべきことに抜けの無いように体制を整える。役割については、全て書面に落としておき、その場で判断すべきことは極力少なくしておくこと。
事務局当日対応要領は、総会当日に事務局として実際に行う確認事項について整理したものである。議事の各段階において必要とされる対応について記してあり、チェックしながら実務を処理できるようにしてある。
事務局当日メモは、事務局当日対応要領と共に使用するシートであり、議事の各段階で行うべき確認事項の結果を記入するシートである。
手続的動議には、延会を求めるもの、議長不信任案、検査役の選任を求めるもの、会計監査人の出席を要求するもの、それと休憩を要求するものがある。また、場合により監査役候補者ごとの個別採決を要求するものもある。
修正動議は、議案の内容を修正して決議にかけるよう要求するものである。事務局としては、動議なのか意見を述べているだけなのかを明確にし、動議と判断したならば、その対応を議長に伝達しなければなない。
そのためのシートとして、手続的動議対応シートと修正動議対応シートがある。
株主総会議事録には、開催日、開催場所、出席株主数、株式数、報告事項の概要、決議議案の内容、審議内容、採決結果、その他動議の内容とその採決結果を記載する。
実務上は、株主総会開催前にあらかじめ全部の議案が可決されることを前提に、シナリオに沿って議事録を作成しておき、当日の出席株主数や審議内容を追加できるようにしておく。
著名義務は、議長及び出席取締役にあり、監査役には著名義務はない。実務上は記名捺印となる。株主総会の決議をもって登記申請をする場合は、代表取締役社長は代表取締役印、実印での捺印となる。
議事録の作成期限は、登記申請がある場合、申請自体が、総会終了後2週間以内となっているので、それまでには作成しておく必要がある。そうでない場合も、出来る限り速やかに作成する。作成された議事録は、本店に10年間、謄本を支店に5年間備置しておかなければならない。
株主の権利である、法定書類の閲覧等の申し出に対する実務処理をまとめたものが、この法定備置書類閲覧等対応マニュアルである。ケースバイケースで対応するのではなく、統一ルールの下、誰に対しても同一の対応がとれるように会社として決めておく必要がある。
(執筆:『月刊総務』)