コラム

リスクマネジメント / リスクマネジメント総論 / リスクマネジメント総論

第10回 実践!リスクマネジメント
STEP6:社員へのインプット

2011年07月01日

今回は、社員へのインプット(周知徹底)について説明します。


■ガイドラインの周知徹底
 STEP5までで、リスクマネジメントポリシーと個別リスクへのガイドライン作成まで説明しました。

 いよいよ、それらを社員へインプット(周知徹底)するステップです。いくら体制を整え、ポリシー、ガイドラインを策定しても、それらが社員に正しく理解され、実行されなければ「絵に描いた餅」です。

 インプットすべき対象は全社員です。正社員のみならず、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなど雇用形態を問わず全社員に周知徹底する必要があります。必要に応じて、外部の協力会社(下請け企業、業務委託先など)にも理解しておいてもらいます。

 インプットの方法としては「資料を配布して終わり」ではなくフェイス・トゥー・フェイスの説明会の方が良いでしょう。資料を配布するだけでは、多くの社員は斜め読みするだけで(または斜め読みさえせずに)、机の中に保存することになりがちです。しかも、その後に読み返すことはほとんどないでしょう。

 拠点別、部署別などで複数回説明会を開催して、きちんと出欠を確認して全社員に説明を行いたいものです。


■ガイドラインの説明会
 当連載の第4回「現場を巻き込む」で、全社横断のリスクマネジメント推進プロジェクトチームに、各部門のエース級の人材に参加してもらうことをお薦めしました。
 説明会の資料作成、開催準備などは事務局が行うにしても、説明会での社員への説明は当該部門のプロジェクトメンバーに行ってもらうと良いでしょう。
 
 総務部や経営企画部などの事務局が説明を行うと、説明を受ける社員たちは「管理部門がまた何やら面倒なことを始めた。仕事の手間が増えそうだ...」など他人事(ひとごと)として聞いてしまい、当事者意識が芽生えません。

「上(管理部門)が勝手に作って押し付けた面倒なこと」というのではなく、「現場の情報を元に作られた現場のためのルール」というトーンで説明してもらいましょう。

 そして、リスクマネジメントポリシーやガイドラインをそのまま説明するのではなく、事例やFAQ(よくある質問)などを交えながら、わかりやすく、リアリティのある説明をすることが大切です。

 たとえば、最近発生した事例を紹介するのも効果的です。自動車会社のリコール問題や、世界的電気メーカーの個人情報漏洩事故、企業不祥事などを事例に、それらが発生すると企業に膨大な損害が発生するだけでなく、問い合わせ対応、クレーム対応など現場の社員がストレスの高い仕事に忙殺されることをリアルに伝えることが有効です。そのような事例は、聞く側の危機感を高め、リスクマネジメントへの必要性を持ってもらうことに役立つからです。


■成否のカギは、継続にあり
 毎年、少なくとも1回はリスクマネジメントの説明会を全社員に行いましょう。
また、途中入社の社員へは入社時オリエンテーションで説明会と同じ内容をインプットします。そして、事あるごとに経営者トップからもメッセージを繰り返し発信してもらいましょう。
 
 社員へのインプットは、繰り返し継続して行う地道なものです。しかし、地道で愚直な取り組みを行えるか否かが、リスクマネジメント推進の成否を分けるのです。
 
 3月11日に発生した大震災発生前に、一定規模以上の企業のほとんどはリスクマネジメントポリシーやガイドライン、BCP(business continuity plan:事業継続計画)などを策定していました。

 しかし、震災の被害を最小にして、スピーディーに復旧を進められた企業もあれば、そうでない企業もありました。

 両者の違いは何だったのか? それはシンプルなことです。前者は決められたルールを周知徹底して社員がルールどおりに行動できた企業であり、後者は「絵に描いた餅」で終わった企業なのです。

 多くの人々に震災の恐ろしさが残っている現在は、リスクマネジメントの重要性を社員に持ってもらう良い機会だと言えるのではないでしょうか。

太期 健三郎
​​MENU