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環境づくりから一歩踏み込むリアルなコミュニケーションの場づくり
第3回:経営×現場 経営は現場の情報を求めている

2016年10月13日

経営者の思いを先回りする戦略総務として、経営と現場、現場と現場の「つなぎ役」になるにはどうするか。
本コラムの初回で、「オフィスレイアウト革新など膨大な設備投資をできない場合」あるいは「オフィスレイアウトの革新をしても交流が生まれない場合」と示した通り、社内のがんばりで実現できる方法をご紹介していきます。
今回からは、総務が戦略的に「経営―現場」のつなぎ役になる方法について話します。


■ 経営者と現場社員の間にはなぜ乖離が生まれるか
経営者と社員は、決定的に立場が違います。立場が違うので、どうしても物事の捉え方・考え方には違いが生まれてしまいます。

それでも経営者は、ひとりでも多くの社員に自分の考えを理解して欲しいものです。そして、攻め・守りの両方の意識を強く持ち続けてほしい。社内で経営計画を説明したり、社内報で取り上げたりしても、本当に社員に伝わっているのか、もしかしたらもっと埋もれた課題があるのではないか、逆にもっと利益創出の源泉が埋もれているのではないか、不安や期待は尽きません。


ところが、会社が一定の規模になってくると、会社全体を俯瞰する立場にいる経営者は、どうしても個別具体的な情報を入手しにくくなります。

組織のラインに沿った報告は、責任の所在があいまいになり、本来向き合うべき課題も丸くなって経営者のところに届きがちです。経営者は、「現場にあまり伝わっていない」「なんとなくうまく行っていない」「もっとうまくできそうだ」という感覚はあったとしても、執行金額にかかわらずすべての稟議に目を通して決裁するぐらいでないと、ムリ・ムダ・ムラを具体的に言語化するまでのことはできません。経営者はどうしても「なにか変だ」という感覚しか持ち得ないようになるのです。


私は、これまでに企業規模の大小やお付き合いのテーマを問わず、非常に多くの企業と接点を持ってきました。

会社の基盤がしっかりしていると感じる企業は、いずれも「管理職や経営者が、"悪い情報"(事業活動上の課題)を明確に語ることができる」状態にあります。

そして「"悪い情報"こそ上位者が社内に周知し、"悪い情報"を経営強化のためにうまく使っている」。逆に、"良い情報"(良い報告)しか上がってこない組織は、失敗に対する許容範囲が狭い場合が多いです。失敗情報が歓迎されないため、事業活動上の課題が社内で流通しなくなり、"良い情報"だけが経営層に届くようになってしまうのです。


戦略総務で従来以上に経営に寄与しようとする総務のみなさまは、まずは、「経営者は思っている以上に現場の課題に気が付いていない」(まして、自分たち総務も、現場の課題を理解できていない)と認識する必要があるでしょう。


■ 会社の規模を問わず、総務が中心になって経営と現場をつなぐ
経営者の関心事である「利益創出」に資する経営と現場の情報流通。ここに総務はどうやってアプローチできるでしょうか。

もちろん、本来的には「ライン」に沿った情報の流通が豊かになるべきです。ただ、経営と現場の情報流通を豊かにすることを目的とした場合、手段はラインの情報流通を豊かにするだけではなく、ライン以外での情報流通を豊かにすることでも良いはずです。

ライン以外の情報流通を豊かにする仕事は、果たしてどの部署が音頭をとるべきか。どこかのラインに乗せるものではありませんし、会社全体を俯瞰できる「生みの親」である総務の役割として最適です。


経営者と現場の直接コミュニケーションの場づくりを実施している企業は、実は多くあります。
こうしたインターナル・コミュニケーションの事例を丁寧に調べた、日本広報学会の「新しいCCを考える会」の第2次ヒアリング調査の結果の一部が、経済広報センター『経済広報』2016年9月号で掲載されています。

・旭硝子
前社長は本社を中心に年200回に及ぶ「昼食会」を開いて若手と対話。国内10箇所の主要拠点および海外の70拠点以上で社員との対話を実施。現社長も社員5000人以上と対面でコミュニケーションをとる。

・オムロン
会長・社長・役員は、国内外の拠点で部課長10-20人と「車座」を開く。

・西武ホールディングス
社長が、毎週のように現場に足を運んで中堅若手との対話を実施。社長はグループ社員2万2000人のうち5000人程度の顔と名前が一致するという。

同調査では、上記のほかに4社の事例を調査しています。結果の概要は上記媒体に掲載されていますので、ご参照ください。


このように、日本でも有数の大手企業であっても、経営層は現場とのコミュニケーションを徹底し、経営方針や理念について社員に理解してもらおうとし、現場の課題を直接把握しようとしているのです。会社の規模を問わず、経営と現場の距離は常に短く保たれている必要があります


こうした経営と現場のつなぎが弱い状態にある場合は、まさに総務部門が中心になって経営と現場をつないでいくチャンスです。

そうはいっても、どうやって企画を詰めていけば良いのか。
いままでやっていなかったことの実施承認を得るのか。
まして、経営者によっては、あまり「表に出ること」が好きではない方もいます。

次回は、経営と現場をつなぐ場を作りたい!と感じていただいた方向けに、実施承認を得やすくする方法をご紹介します。

秋山 和久
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