コラム

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「環境づくりから一歩踏み込むリアルなコミュニケーションの場づくり」
第6回:現場×現場 交流が生まれる前提に認知・評価がある

2016年12月14日


 前回までは、経営と現場をつなぐコミュニケーションを実践するリアルな場づくりについてご紹介しました。表に出ることを嫌う経営者の場合は、総務が代行すれば良いとのご案内をしました。

 ただ、それでも「ハードルが高い」と感じる方もいらっしゃるでしょう。経営にかかわる意見を変に現場社員からピックアップして良いのか、現場が混乱しないか、今までそうした企画をやったこともなくイメージが湧かない......。いろいろな理由はあると思います。

 そこで、もし、「経営-現場」間から始めることにためらいがある場合は、「現場-現場」間で実施をしましょう。小さく始めて、経験を積み上げていくことも良いです。「現場-現場」間での情報流通が増すことも、新たな課題発見や会社全体の改善の風土醸成には効果的ですし、いずれも経営者の関心事である「利益創出」「人材」につながるものです。

 「現場-現場」間でのコミュニケーション促進は、総務ではオフィスレイアウトの革新などを通じて働きかけをします。あるいは福利厚生の制度を充実させたり、企業によってはレクリエーション活動に助成金を出したりすることもあるでしょう。ところが、オフィスレイアウトを見直した企業でも、レクリエーションを取り入れた企業でも、思っていた以上に交流が発生しないという場合もあります。これは、そもそもコミュニケーションが発生する基盤がないためです。

 ここでいうコミュニケーションが発生する基盤とは、関係の質の前提となる「認知」と「評価」です。図表のダニエル・キム教授の組織の成功循環モデルは有名ですが、これを基に考えてみましょう。

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 この組織の成功循環モデルは、総務・人事業務で参照されることが多いでしょう。自分自身の経験と照らし合わせてみても、この循環モデルは本当に腹落ちしやすいものです。組織にかかわらず、プライベートでも思い当たる節があります。
ただし、私は、「関係の質」の前提として「認知・評価」が存在していると考えています。少なくともお互いの顔と名前が一致しないと豊かな関係は生まれないですし、お互いの部署なりお互いのことをなんらか「評価」するまでに関係が熟していなければ、コミュニケーションは発生しません。つまり、コミュニケーションの促進が環境作りだけで思っていた以上の成果がでていないのであれば、関係の質の前提部分にアプローチする必要があるのです。

 会社の中では思っている以上にお互いのこと、お互いの仕事、お互いの考えを知りません。認知や評価が、関係の質の向上につながっていく。関係の質が思考の質を良くし、思考の質が行動の質を良くし、行動の質が結果の質を上げる。この成功循環を拡げるために、結果の質をプロモーションして認知・評価を拡げ、次の関係の質向上のきっかけを生み出す。小さな成功循環モデルを一つずつ起動させ、増やしていく考え方が必要です。


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 少し概念的な説明が多くなってしまいましたが、「現場-現場」間でのリアルなコミュニケーションの場づくりがテーマです。小さく始めて大きく育てるためには、結果の質のプロモーションを考えておく必要があります。この場合、できるだけ"訴求力"のある「現場-現場」間の関係構築が良い。ここでいう"訴求力"とは、実績として非常にわかりやすいことであり、本来は利害が一致するはずなのに対立しやすい部署が良いでしょう。

 では、みなさんは「利害が一致するはずなのに対立しやすい部署」として浮かぶのはどこでしょうか?

 「法務×営業」は、お客さまとの契約で対立しやすいですね。できるだけ有利な契約にして会社を守る法務と、お客さまにあまり無理を言いにくい営業。営業担当者も法務担当者も板挟みになりやすいです。法務担当者は"うるさい人"と思われがちでつらいですね。

 「広報・宣伝×お客さま相談」も対立しやすいです。本来はお客さまの目に多くつくことは大事なのですが、お客さまのご連絡の受け皿になる相談室が、十分に外部での露出状況を把握できずにあたふたすることも多くあります。

 もっとシンプルでわかりやすく、経営に寄与する戦略総務として訴求しやすいのは、「営業×開発」ではないでしょうか。お客さまの声を直接拾うことができる営業ですが、なかなか売れないときにはそもそも製品・商品・サービスが売れるようなものではないと考えがちです。一方の開発側は、売れると見込んで製品・消費・サービスを開発しているわけですから、営業活動に工夫が足りないと考えがちです。

 次回は、「営業×開発」のコミュニケーションの場づくりを深掘りしていきます。

秋山 和久
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