総務のマニュアルバックオフィススタッフが知っておきたい M&Aの実務

各部署から見たM&A(人事編)

弁護士法人菰田総合法律事務所 代表弁護士・社労士 菰田 泰隆
最終更新日:
2021年10月04日
279507208_800

情報やサービスが多様化される今、さまざまな事業領域とのシナジーを生むために企業間でのM&Aが多用され、その件数は急増しています。このような時代において、総務をはじめとする会社のバックオフィススタッフが、自社のM&Aにかかわる機会はますます増えてくるでしょう。本稿では、M&Aの各スキームに関する一般的な知識だけではなく、総務・経理・人事担当者がM&Aにかかわる際、どんなことを考え、どんな作業を行わなくてはならないかという、普段はあまり焦点を当てられることのない裏側について解説します。各部署における具体的な実務のうち、最終回となる今回は、人事部署について詳しく解説していきます。

人事とM&A

M&Aを行う際に人事として必要な手続きは、主に雇用契約、就業規則、社会保険、給与支給についての事柄になります。なお、これらの手続きを行うかどうか、また手順についてもM&Aの各スキームによって異なりますので、注意してください。

(1)雇用契約(図表8)

雇用契約は、M&Aのスキームによって、雇用契約自体が承継されるかどうか変わってきます。合併の場合、雇用契約は合併先(新設会社または吸収会社)に承継されますので、労働条件もそのまま引き継がれることになります。つまり、合併に伴って雇用契約が承継される以上、その承継について個別の同意は必要ありませんし、雇用契約書の締結し直しも不要です。しかし、合併し所属する法人が変更になるという意味で一つの区切りをつけるためにも、労働条件等の変更が行われなくても雇用契約書を締結し直すケースも多いものです。

図表8

次に、株式譲渡の場合、経営権が買い手に移るだけで従業員が在籍している会社自体は変わりません。よって、労働条件が買い手の会社に合わせて変更されることなどはありませんので、新たな雇用契約の締結し直しは不要となります。

最後に、事業譲渡の場合、従業員は譲渡会社を退職して譲受会社へ入社することになりますので、譲受会社においてあらためて雇用契約の締結が必要となります。そのため、譲受会社へ入社するかどうかも従業員の任意ですし、新たな労働条件についても個別の合意が必要となります。なお、有給休暇や退職金の取り扱いについてもM&Aにおける合意で決定しますが、従業員の不利益とならないよう有給休暇の残日数や勤続年数などは引き継いでカウントするケースが多く見受けられます。

(2)就業規則統合

続きは「月刊総務プレミアム」をご契約の会員様のみお読みいただけます。

  • ・付加価値の高い有料記事が読み放題
  • ・当メディア主催の総務実務の勉強会や交流会などのイベントにご優待
  • ・「月刊総務デジタルマガジン」で本誌「月刊総務」も読み放題
  • ・本誌「月刊総務」も毎月1冊、ご登録いただいたご住所にお届け
  • ・ノウハウ習得・スキルアップが可能なeラーニングコンテンツも割引価格でご利用可能に

※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。

著者プロフィール

画像なし

弁護士法人菰田総合法律事務所 代表弁護士・社労士
菰田 泰隆

2012年弁護士登録、2013年1月菰田法律事務所開業(現:弁護士法人菰田総合法律事務所)。2016年社労士登録、税理士登録。複数の士業が融合したワンストップサービスを特徴とし、顧問先の法務・労務・税務面を総合的にサポートしている。

関連記事

  • 災害への備えは平時から。企業の防災担当者を強力にサポートする東京都のサービスとは PR
  • 事例:社用車管理のペーパーレス、コスト削減、ドライバーの働き方改革を実現するBqeyとは PR
  • 何気なく選んでいる複合機、それでいいの? ビジネスプリンターの新潮流「インクジェット」の魅力 PR

特別企画、サービス