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副業人材の市場が活況だ。副業人材活用を推進する株式会社シューマツワーカーの代表取締役CEO・松村幸弥さんは、コロナ禍以降、副業を希望する人材も、そうした人材を活用する企業も共に増えていると体感している。一方、本誌が実施したアンケート結果では、人材を活用している企業は約1割にとどまった。副業人材が注目される背景とメリット、活用におけるポイントや労務の課題を探る。
取材・文◎武田 洋子
IT需要を背景にニーズが高まる副業人材
株式会社シューマツワーカーは、副業人材と企業をマッチングする日本最大級のプラットフォームを運営している。コロナ禍以降、登録者が増加し広告獲得コストが下がるなど、市場は急成長したという。副業人材の活用を希望する受け入れ企業も増えているそうだ。副業人材に対する企業の関心が高まっている背景を、同社のCEOである松村幸弥さんは次のように分析する。
「まず、中小企業を中心にITに詳しい人材の需要が急増したことが挙げられます。コロナ禍によるテレワーク対応で、これまでかたくなに紙文化を守っていた企業もデジタル化をせざるを得なくなりました。しかしクラウドツールを導入しようにも、社内には知識を持った社員がいない。そこで副業人材に着目したと考えられます。また、緊急事態宣言が繰り返され、百貨店をはじめリアルな店舗で買い物をする客が激減しました。代わりとなったのがネットショップです。今やメーカーは、インターネットを介した小売りビジネス(EC)に踏み出さないと物が売れません。ネットショップを無料で簡単に作成できるサービスが人気を博していることからも、需要の高さがわかります。そしてここでもやはり、Webマーケティングに長けたIT人材が必要とされているのです。このように、IT人材への需要が非IT企業にも広がっているのが、ここ1、2年の顕著な傾向です。
次に、テレワークの態勢がある程度確立したことで、副業人材を受け入れやすくなっています。もともと副業人材活用を成立させるには、テレワークが外せないポイントでした。オフィスへの出社が条件だと、採用のハードルは上がります。でもコロナ禍による在宅勤務の拡大で、地方の物流や印刷業界など、これまでは出社がマストだった業界でもテレワークで働けるようになりました。結果的に全国の人材を活用することが可能になり、心理的・物理的な障壁が、一気に下がった印象です。あらゆる業界・業種で副業人材の活用が可能になったことは大きな変化でした。
最後のひと押しとなったのは、大企業や自治体が相次いで副業人材の活用を表明したことです。『正社員の終身雇用で形成する組織』からの脱却を明らかにし、業務委託人材を積極的に活用していく姿勢を示したもので、多くのニュースで取り上げられました。その影響力は多大で、人的リソースを確保する新たな選択肢として、全国津々浦々まで認識されたようです」
副業人材を活用するメリットは、中小企業の方がより大きい、と松村さんはいう。特に地方では、正社員を採用しようと考えても、そもそもの労働人口が少ない。少子高齢化で生産性を上げるためにもDX化は必須だが、そのためのIT人材は2030年までに、全国で最大79万人不足する、と経済産業省は発表している。しかもその貴重な人材は都心部に集中しているのだ。しかし、副業人材を活用すれば、かなり効率良くリソースを補うことが可能になる。
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