パーパス経営とは何か。一橋大学ビジネススクール客員教授の名和高司さんは、その著書の中でパーパスを「志」と訳している。ニューノーマル時代に乗り出す日本企業に必要なのは、立派だけれど最大公約数的で凡庸な「大義」よりも、自社ならではの個性が光る「大志」なのだ。「パーパス経営」の本質、注目される背景、総務部門が果たす役割をうかがった。
取材・文◎武田 洋子
主観的な指標が導くパーパス経営
名和 高司さん
東京大学法学部、ハーバード・ビジネス・スクール卒業(ベーカースカラー授与)。三菱商事株式会社を経て、マッキンゼー・アンド・カンパニーで約20年間勤務。2010年より現職。株式会社ファーストリテイリング、味の素株式会社、SOMPOホールディングス株式会社などの社外取締役、アクセンチュア株式会社、株式会社インターブランドジャパンなどのシニアアドバイザーを兼任。2014年より、「CSVフォーラム」を主催。『パーパス経営』『CSV経営戦略』(東洋経済新報社)、『経営変革大全』『稲盛と永守』(日本経済新聞出版)など著書多数。
今、パーパス経営という言葉が熱い。SDGsのように、時代のキーワードとみなされ、ブームの様相を呈している。『月刊総務』の調査でも、「企業経営における『パーパス』とはどんなことを指すか知っているか」の問いに、「よく理解している」「なんとなく理解している」と回答した人が約4割。「言葉は知っている(が内容はあまり理解してない)」まで含めると、認知度は7割に上る(図表1)。
「パーパス(Purpose)」という単語は目的や存在意義と訳されることが多く、「パーパス経営」は企業の存在意義を前面に押し出した経営という印象を受ける。しかし、日本におけるブームの火付け役となった『パーパス経営』の著者、名和高司さんは、パーパスを「志」といい換えた。
「直訳である存在意義という言葉は、いかにもよそよそしく感じます。パーパス経営の本質は、『自分たちは誰にどのような価値を提供したいのか?』という問いに尽きますが、外来語に飛び付かなくてもこの精神は古来、日本人が主軸にしていたものです。『志』は士の心と書き、士とは士業に代表されるプロフェッショナルを指します。私は、道を究める求道者たちの心を表す『志』こそが、パーパスの本質を捉えていると考えました。日本の資本主義の父と呼ばれた渋沢栄一氏もまた、利益拡大を目的化しない高い倫理観と志の重要性を説いています」
パーパス(大志)は、経営理念(大義)とも違う。大義には義務感が付きまとう。世のため人のため「〜せねばならない」という、大上段に構えた使命感が先行するのだ。使命感は尊いが、創業者はともかく社員が等しく同じ気持ちにはなりづらく、結局、他人ごとになってしまう。
一方、大志は「〜したい」という気持ちが原点だ。胸を突き上げるようにわき出る想いであり、こうした情熱は共鳴者を得やすい。会社とは本来、志に共感する仲間たちの集団であるべきなのだ。掲げるのは小志ではなく、北極星のように遠くで強く光る大志が望ましい。それでこそ社員が自分ごとにしやすくなるという。
※掲載されている情報は記事公開時点のものです。最新の情報と異なる場合があります。
アクセスランキング
ダウンロード資料、アイテム
特別企画、サービス
-
総務が押さえておくべき 2023(令和5)年に施行の法令改正情報
2023年は2022年に引き続き施行される育児・介護休業法のほか、労働基準法や労働安全衛生法、国民年金法の改正法令などが施行されます。本稿では今年に施行等される法令の中で、総務業務関連のものをピックアップしました。 -
【編集部厳選】総務1年生にオススメしたいコンテンツ20本
『月刊総務』編集部が、総務1年生やこの春久々に総務業務を担当する方にオススメのコンテンツを厳選。この機会に、総務実務の基本はもちろん、ビジネススキルや総務の考え方について学んでみませんか? -
総務のマニュアル
総務・バックオフィスの実務を実践的にサポートする「総務のマニュアル」シリーズ。ビジネストレンドを押さえた内容で、いま総務が知っておきたいポイントを具体的に解説していきます。 -
多様な働き方に対応する 社内コミュニケーション術
リモートワーク、ABWなど働き方の多様化がさらに広がっています。対面のコミュニケーションが減っている中においても、コミュニケーションを活性化するために、どうしていくべきでしょうか。 -
テレワークを実現するペーパーレス化と文書管理のポイント
ハイブリッドワークの需要が高まったものの、総務・経理などの管理部門では、請求書や契約書など書類のデジタル化に対応できず、出社を余儀なくされた方も多いのではないでしょうか。 -
総務辞典
総務辞典とは、どなたでもご利用いただける、総務業務に関する一般知識、関連法令や実務ノウハウなど総務に関する用語辞典です。 -
無料オンラインセミナーのご案内
月刊総務が開く、無料オンラインセミナーの予定はこちらからご確認ください。さまざまな企業と共催し、より専門的な知識を幅広いテーマで発信。総務の皆様の情報収集にお役立てください。 -
『月刊総務』調査
『月刊総務』では、不定期にアンケート調査を実施し、その結果を公開しています。全国の総務パーソンがどのように業務に対応しているのか、何を感じているのか、総務の現状を確認してみましょう。 -
YouTube 月刊総務チャンネル
『月刊総務』公式YouTubeチャンネルです! 「働き方」「戦略総務」などのテーマについて、数分で気軽にキャッチできる情報を発信していきます。ぜひ、チャンネル登録をお願いします! -
業務効率化&コスト削減 購買プラットフォーム
オフィス用品に関する困りごとを解決し、業務効率化とコスト削減を実現いたします。Kobuyは、一貫堂が提携するパートナーサプライヤに加え、お客様ご希望のサプライヤ商品・サービスを一元管理できるオフィス用品一括購買システムです。