総務のマニュアルポストコロナ時代のBCP対策

新型ウイルス感染者発生時の対応と感染者情報の公表の在り方

BCP策定・気候リスク管理アドバイザー、文筆家 昆 正和
最終更新日:
2022年10月13日
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感染症の発生や拡大は危機対応のトリガーが明確でなく、判断や対応に戸惑うことも少なくありません。ここでは初動にかかわる典型的なケースと感染者情報の公表について、望ましい行動指針とポイントを提案します。

感染症発生時における初動対応

感染症発生を機に初めて各種の対策や対応の準備を始めては意味がありません。発熱症状のある従業員や濃厚接触者が休業することをあらかじめ想定し、図表1のような緊急対応フローを用意しておくことをお勧めします。また、事前に「従業員からの報告ルール」「休業規則」「業務のフォロー体制」などを整えておきましょう。

図表1:緊急対応と業務継続フロー

図表1:緊急対応と業務継続フロー
(※画像クリックで拡大)

本人が症状を自覚していない場合の対応

微熱や多少の咳が出ても、仕事が忙しいときはいつも通り出社する従業員は少なくありません。このような場合、会社は社内での感染を未然に防ぐため、一定期間の休業と健康観察を勧めます。本人としては仕事ができる状態にあるにもかかわらず、会社の判断によって自宅待機させることになるので、休業手当を支払う義務が発生します。

濃厚接触者への対応

家族・同僚・取引先担当者などに感染者が出た場合、病院や保健所を通じて濃厚接触者と見なされる可能性が高くなりますから、たとえ健康状態に問題がなくても5日間の自宅待機を求められます(新型コロナの場合。2022年8月現在)。濃厚接触者となった当人から会社に通知があった場合は、社内への注意喚起および感染予防対策とセルフチェックの徹底をはかります。なお、自宅待機中にリモートワークが行える場合には、その間の賃金を支払わなくてはなりません。

発熱症状のある人への対応

目安として37.5度以上の発熱症状と倦怠けんたい感、咳などが見られ、普段通りに仕事をできる健康状態にない場合には、従業員自ら有給休暇や病気休暇を取得するケースが一般的と考えられますし、安全配慮の観点から会社としても自宅待機を命じる必要があります。本人がどうしても会社を休めないと主張する場合には未処理の業務がたまっている、納期が迫っているなどの業務上の問題の可能性が高いので、直ちに代替スタッフによる業務のフォローを行ってください。

感染者が特定された場合の対応

社内に感染者(陽性者)が出ると隔離のため休業せざるを得ません。保健所からの濃厚接触者の有無の調査依頼があれば速やかに協力し、感染拡大防止策を講じます。状況によってはほかの従業員に対しても、会社から自主的な休業の要請を行うことが必要でしょう。周辺の濃厚接触者の人数によっては会社そのものを一時閉鎖する可能性も視野に入れておきたいものです。

賃金の支払い義務について

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著者プロフィール

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BCP策定・気候リスク管理アドバイザー、文筆家
昆 正和

企業のBCP策定/気候変動リスク対策・適応策に関するアドバイス・講演・執筆活動に従事。一般社団法人日本リスクコミュニケーション協会理事。著書に『今のままでは命と会社を守れない! あなたが作る等身大のBCP 』(日刊工業新聞社)、『山のリスクセンスを磨く本 遭難の最大の原因はアナタ自身にあった(ヤマケイ新書)』(山と渓谷社)など全14冊。雑誌やWebへの寄稿・連載など多数。趣味は登山と読書。著者のnoteはこちら

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