「マルハラ」の訴えに対応は必要? ハラスメントが起きていなくても再発防止を求められる理由
企業等における危機管理を専門とする株式会社エス・ピー・ネットワークの研究員が、「HR(ヒューマンリソース)リスクマネジメント」の観点から職場のハラスメントについて解説していく本連載。初回は、企業等に求められるハラスメント対策の意義や目的について考えます。
なぜハラスメント対策が必要なのか?
筆者はあらゆる業種・規模の企業等でハラスメント防止研修を実施していますが、経営層の「ハラスメント防止」に対する反応はさまざまで、「人がいればもっと稼げるのに、ハラスメントなんかで人が辞めるなんて、もったいないよ!」と熱量高くおっしゃる方もいれば、「ハラスメント防止はわかるけど、数字を追うためには厳しさも必要でしょう?」と、ハラスメント防止の取り組みが業績悪化につながらないかと懸念するかのような方もいらっしゃいます。
昨年あたりからでしょうか。もともとは後者のような考えだった企業が、若手の早期離職や採用の難航、頻発する労務トラブルに困り果て、ようやくハラスメント防止に本腰を入れ始めるようすが見えるようになりました。最近は「ハラスメントの説明は簡単でいいので、職場のコミュニケーションを活性化させるようなグループワークを入れてください」や、「指導方法のブラッシュアップをしたいです」というステップアップした研修の要望に加え、「基礎からお願いします」というオーダーがまた増えてきているように感じます。パワーハラスメント(パワハラ)対策が法制化されたのは大企業が2020年、中小企業でも2022年。すでに3年または5年が経ちますが、ちょうどコロナ禍が重なったことで、法施行時は資料配布だけで済ませていた企業もあり、「本格的なハラスメント防止研修は今回が初めて」という企業は少なくありません。
厚生労働省都道府県労働局雇用環境・均等部(室)による「職場におけるハラスメント対策パンフレット」の冒頭に、ハラスメント対策の重要性が次のように書かれています。
職場のパワーハラスメントやセクシュアルハラスメント等の様々なハラスメントは、働く人が能力を十分に発揮することの妨げになることはもちろん、個人としての尊厳や人格を不当に傷つける等の人権に関わる許されない行為です。また、企業にとっても、職場秩序の乱れや業務への支障が生じたり、貴重な人材の損失につながり、社会的評価にも悪影響を与えかねない大きな問題です。
働く人が能力を十分に発揮できなければ、売り上げや利益の損失につながるでしょう。グローバルで求められる「人権尊重」の観点からすれば、個人としての尊厳が守られない企業との取引は適切といえず、改善されなければ取引停止ともなり得る由々しき問題です。
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