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医療用医薬品の製造および販売を事業とする日本イーライリリー株式会社は、ユニークな部活動により、リクナビNEXTが主催する「第8回GOOD ACTIONアワード」を受賞した。業務でなく部活でありながら賛同者を増やし、社外にも活動を広げるムーブメントに成長した軌跡を追う。
取材・文◎武田 洋子
業務より自由度の高い部活動で入り口を広げる
働く個人がイキイキとした職場づくりをけん引したとして、日本イーライリリー株式会社が「GOOD ACTIONアワード」を受賞したのは、業務上の取り組みでなく有志による部活動だった。その名を「ヘンズツウ部」という。聞き慣れない名称だが、同社においても過去に例を見ない、ユニークな存在だ。部の立ち上げメンバーである山縣実句さんに、当時の想いを聞いた。
「片頭痛は日本人の約10人に1人、特に働き世代である30歳代女性では5人に1人と推計されるほど有病率が高く、さまざまな疾患の中で2番目に日常生活に及ぼす支障が大きいとされています。にもかかわらず、片頭痛で有給を取るとはいいにくい雰囲気がないでしょうか。実は、周囲に打ち明けて理解を求めることをあきらめ、ひそかに症状を我慢している人がたくさんいるのです。『世界中の人々の、より豊かな人生に貢献する』ことを使命とする当社でさえ、痛みに耐えながら仕事をしている社員がいました」
ヘルスケアカンパニーを体現するための行動が必要だと感じた7人の有志により、「ヘンズツウ部」が発足したのは2019年の夏。業務の提案ではなくカジュアルな部活動にしたのは、部署も職位も関係なく、気軽に参加できる環境を考えたからだ。話題の脱線は大歓迎、話したくない人がいてもいいという自由さで入り口のハードルを下げたところ、部員数は瞬く間に50人を超えた。
「最大のメリットは、当事者以外が『ちょっと参加してみようか』と思ってくれたことです。同僚や家族が片頭痛に悩んでいて、理解したいと思っていた人がかなりいました」
部活が目指すのは、誰にとっても働きやすい会社の実現だ。当事者同士で共感しているだけでは先に進めない。一人でも多くの非当事者が片頭痛のつらい状況に気付くことが、社内の行動変容には不可欠だった。
「コロナ禍もまた、参加者を増やすプラス要因に働きました。リモートワークになり他部署との接点が激減する中、部活が交流の貴重な機会になったのです。ちょっとした雑談ができる場であり、片頭痛以外の持病について話が広がることもありました」
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